第6話 -小さなことなど気にしない-
今日は新年度最初の休日。
下校中にすれ違った謎の少女のことが気になりながらも、
アイドル活動への期待で胸がいっぱいのあやめ。
「そういえば今日は友達と約束があるんだったっけ」
父の祐二が問いかける。
「部活動始めたから、その作戦会議も兼ねて、ね」
「ほう、どんな部活?」
「アイドル部、ってのを立ち上げてみたの。」
「アイドル!?」
祐二は驚く。
「まぁ、軽音部みたいなノリなんだけどねー。
目標はステラ・クレッシェンドみたいになること、だから高くしてあるけど」
「そっか・・・頑張ってな」
今日の待ち合わせはコトネたちの行きつけのゲームセンター。
ゲーセンと言うが、ボウリング場がメインでカラオケなども入った複合アミューズメント施設だ。
「お待たせー」
「遅いぞあやめちゃーん」
本日のメンバーはcerisierの三人に加えコトネ、達義。
みちるは家族の付き合いで来れなかったとのこと。
「よーし、早速“ボルテ”やるか、タツ?」
「コトネっちとやったら絶対負けるからなー・・・」
人気音楽ゲーム“GALAXTICA VOLTEX”、通称ボルテ。
コトネはこのゲームの超上級者で、トップランカーにも負けないほどの実力を持っているとのこと。
早速コトネと達義はボルテの筐体に向かう。
そしてコトネは迷うことなく楽曲を選曲。
選んだ楽曲は昨年の全国大会の決勝でお披露目になった楽曲「Everlasting Gift」。
決勝戦を彩る華やかな楽曲で、難易度は最高の“16”。
「早速エバラやるの!?」
「これくらいやらないとねーっ♪」
「ごりらがいるんだ・・・」
そして3曲の対戦が終了、コトネの全戦全勝で幕を閉じた。
「流石コトネっち・・・全曲鳥とかパネェっす・・・」
cerisierの三人は唖然として見ていた。
「何やっているのか全くわからないな・・・でも楽しそう」
「私もやってみたくなった!美穂ちゃん、やってみよ?」
「いきなりは怖い怖い・・・」
「美穂ちゃん、大丈夫だよ!初心者救済措置もあるし、何より初回プレーはタダだからな!
はじめるのが怖い・・・俺がついてるだろ?」
「・・・まぁ、タツがそう言うなら。」
そうしてcerisierの三人でマッチングすることに。
まりりんはある程度プレーしている中級者クラスということで、あやめと美穂は選曲などを任せた。
まりりんが選んだ曲はインターネット上で人気のヒューマロイド曲「放課後アトリエ」。
難易度はあやめと美穂は三段階のうちのいちばん下の4、まりりんはいちばん上の14を選択。
・・・曲が終わった。
まりりんの成績はAランク。レベル14をAランクでクリアすることが解禁条件の楽曲への道が一歩進んだ。
あやめと美穂もAランクを取りクリア。
「はじめてにしては結構いい感じにできてるね♪」
「楽しい・・・こういうゲームって触れてみると面白いものだね」
「私もすごく気持ち良かった!もう少し難しいのやってみようかなー。まりりん任せるね。」
次にまりりんが選んだ曲は、人気クリエイター「8*Princess」の「120 SECONDS FIGHTERS」。
最下位の譜面でもレベルが6の譜面である。まりりんは二番目の難易度のレベル12を選択。
・・・2曲目の成績はまりりんがAA、あやめと美穂もAを獲得。
美穂はノーミスでクリアしFULL CHAINを獲得していた。
「美穂ちゃんFULL CHAIN取った・・・すごい・・・」
「楽しくなってきたよー!」
「私もFULL CHAIN取りたいなー」
そして3曲目は先ほどコトネと達義が選んだ「Everlasting Gift」。
あやめと美穂は最下位譜面のレベル7、まりりんは二番目のレベル12に挑戦。
・・・そして曲が終わる。
「やったー!またFULL CHAIN取れた!」
「美穂ちゃん成長早すぎ・・・」
あやめとまりりんは驚いている。
成績はまりりんがAA、あやめと美穂はAを獲得していた。
「たまにはこういうのもいいよね。楽しくなる!」
「美穂ちゃんが喜んでくれて、まりりん嬉しいな♪」
こうして、またcerisierのメンバーは新たな一歩を踏み出すことができた。
メンバー同士の絆を深めることも、アイドルには欠かせないことである。
「コトネっちー、開始1クレでレベル7繋ぐ美穂ちゃんすごいよー」
「美穂ちゃんもボルテの才能あるわね・・・チェックしておかないと」
コトネ&達義も美穂の腕前を認めている。
・・・音楽ゲームなどで一通り楽しんだ一行は、カラオケルームに入り作戦会議をはじめた。
「まずはみんながどんな曲を歌ったりするのか、ってのが気になったんだよね♪」
「美穂ちゃん歌手志望だから上手いし、いろんな曲聴いてみたい・・・」
今回はボーカルに関した特訓を行うようだ。
音楽に関しては何でもおまかせ、な美穂らしく、知っている曲は数知れず。
ミュージシャンに関する知識なら誰にも負けない彼女ならではの選曲も知りたいところだ。
まず彼女が選曲したのはアニメ「甘木ブリリアントパレス」のオープニング曲。
激しくもどこかファンタジックな雰囲気のあるアッパーな楽曲だ。
「定番の曲だねー。俺も甘ブリ好きだったなー。あやめも見たよな?」
「アニメはあまり見ないけど、これは好きで見た見た♪」
というわけで達義とあやめもハモってます。
「まりりんも何か歌いたいねー♪」
次はまりりんが歌う番だ。
選曲したのはアニメ「KAMABOKO」の主題歌のひとつ「悲しみをほほえみに」。
ハイトーンなボーカルとロックサウンドが特徴的な曲だ。
「アニソンの定番だけど、歌ってる人今何してるんだろ?美穂ちゃんわかる?」
「ギターの人は広島でアイドルのプロデューサーとかやってるけど、ボーカルは知らない・・・」
美穂でも知らないことはあるようだ。
そして次はあやめの番。
あやめが選んだのはアイドルグループ「はいぱー☆がーるず」の「女子力♪パラダイム」。
盛り上がるパーティサウンドのハイテンションな正統派アイドルソングだ。
「二人がアニソンだから敢えて路線を変えてアイドルと来たか。」
「すごくオタッキーなカラオケだなー。あたしもアニソン歌おうかなー」
「タツ、コトネっち、実はこの3曲・・・共通点があるんだよな・・・」
美穂がニヤニヤしながら達義とコトネに迫り来る。
「出た!美穂ちゃんのデータベース開放モード・・・」
「3曲とも、ダンノベのアイドルソングコラボの曲の作曲者が手掛けてるんだよ・・・」
「偶然って恐ろしいね・・・」
データベース開放モードの美穂に恐れおののくコトネと達義だった。
こうして三人で数曲歌ったところで作戦会議。
「やっぱり美穂ちゃんがメインボーカルやったほうがいいかも♪」
「まりりんもそう思う♪」
「そうだなー・・・私がメインでやるか。
ダンスはまりりんで・・・あやめは何をするの?」
「ボーカルもダンスも両方得意そうだし・・・もちろんセンターかな♪」
「やっぱり・・・部長だからセンターになるんだね」
「よし、決まりだ!」
あやめがセンターを担当し、ボーカルを美穂、ダンスをまりりんがフォローするような体勢で
それぞれの得意分野を活かすステージをしたいと決まった。
「今日は一日アイドルになるために歌いまくるぞー!」
「「「おーっ!!!」」」
・・・夜まで歌いつくしたcerisierご一行でしたとさ。