第4話 -Determination-
アイドル部の活動がスタートしたあやめたち。
作戦会議ということで、まりりんの働く喫茶店へと向かうことになった。
綾城市の閑静な住宅街にある、ベーカリーカフェ「アリス・エトワール」。
ここがまりりんが働く店で、あやめの行き着けの店でもある。
「いらっしゃいませー♪
・・・あっ、まりりん!今日はお友達も一緒ねっ♪」
非常に明るく可愛らしい声で接客する彼女は、看板娘の神野ありす。
コトネよりも明るい色の金髪でふわふわなロングヘアを、毛先にリボンをつけてまとめている。
制服はありす自身が制作したもので、レースがどっさりとついていてお姫様のようだ。
ちなみにありすも綺月学園の生徒で、あやめやコトネとは違う2-Aクラスに所属している。
「ありすちゃーん、お友達連れてきたよー♪」
「あやめちゃんもいるー♪おすすめのパンいっぱい持ってくるから座っててー」
そう言ってありすは店内に並べてある菓子パンから数種類を取り、
抱きかかえたバスケットに詰めていった。
店内は木目調の什器と「不思議の国のアリス」をモチーフにした飾りつけで、
暖かみのある中にメルヘンさを足した空間となっている。
中心部にある円柱型のショーケースには、その日ごとのおすすめが並べられてある。
自動で回転しているため、トングで掴むのが苦手なお客様にはありすが取ってあげているとか。
「お待たせー♪今日のおすすめ、生クリームたっぷりクロワッサンケーキと、
たっぷりバターのデニッシュトーストだよ♪」
「ありすちゃん、いつもありがとね♪」
「いえいえ~」
クロワッサンケーキはアリス・エトワールの看板メニューだ。
焼きたてのクロワッサンの中に生クリームやチョコレートなどを挟み込んだスイーツで、
クリームが溶け出すのがおいしいと評判である。
夏はアイスクリームを挟んだものが登場する。
「ところで、作戦会議って何するの?」
あやめたちがスイーツを堪能する中、美穂が疑問を投げる。
「えっとね、アイドルとして活動するならね・・・ユニット名とか決めたいでしょ?」
生クリームをほおばりながら応える。
「ユニット名か・・・まりりん考えてなかったなー。美穂はどう思う?」
「そうだねー・・・ちょっと考えさせて」
「あとは、曲も作らなきゃねー。みちるちゃんの曲聴きたいし」
「あたしたちまだみちるちゃんの曲聴いてなかったねー。今度聞かせて?」
「は、はい・・・!」
やはりまだ緊張気味のみちる。しかし曲のアイデアは浮かんでいるとのこと。
「・・・決まった!」
美穂が叫ぶ。
「ユニット名決まったの?」
「うん。私達の苗字って、みんな“さくら”って読んだり“桜”の文字があるでしょ?」
「まりりんは桜咲だし、私は櫻井。そして美穂ちゃんは“さくら”って読むね・・・」
「だから、フランス語で“桜”という意味がある・・・
“cerisier”ってどう?」
「素敵!それにしよう!ねっ、まりりん?」
「まりりんもそれがいいなー。なんかかわいいし♪」
「あたしも、素敵だと思うよ。」
「私も・・・」
「満場一致だね。それでは、cerisier活動スタート!」
「「「はい!!!」」」
こうしてユニット名も決定したことで、綺月学園アイドル部によるユニット、cerisierの活動が
ここから始まることになった。
「あやめちゃん、昔はいろいろあったけど、
今はこうして仲間がいっぱいできて、私も嬉しいなーっ」
その様子を遠くから見つめるありす。
果たしてあやめたちはトップアイドルになれるのだろうか・・・
「さて、私も頑張らなくちゃ♪」
ふわふわと髪を揺らしながら、ありすは厨房へと去っていった。
何かを思い立ったような表情で・・・