第2話 -夢のStairs-
かつて地下アイドル界で伝説と言われた「ステラ・クレッシェンド」。
そのメンバーの一人が行方不明の姉だと確信したあやめ。
「どうしたらお姉ちゃんに会えるんだろう・・・」
ベッドの中に潜り、悩み続けていた。
そして翌日───
「ふにゃ・・・ふにゃぁぁ・・・お姉ちゃん・・・」
寝言で“お姉ちゃん”を連呼するあやめ。
「あやめー、朝ごはんだぞー」
父の祐二が起こしに来る。
「はぁ~い・・・」
パジャマから制服に着替え、祐二とともに親子で朝食を摂っているときのことだった。
祐二は毎朝欠かさずテレビのニュースを見ているのだが、
そこにあやめの視線が移る。
「“学校”で“アイドル”?今学生たちの間で、アイドルとしての活動がブームになりつつあります。」
今話題の“スクールアイドル”の特集だった。
これを見てあやめは思い立った。
「・・・私、アイドルやります!」
「おいあやめ、いきなり何言うんだ?」
「行ってきまーす!!!」
朝食を残したまま飛び出して行った。
「あやめは・・・思い立ったらすぐ行動するからなぁ・・・」
娘の性格を心配する祐二。
しかしこうなったあやめは、もう止まらない。
───教室。
ホームルームが始まる前に、あやめは美穂と真鈴に話題を振ってみた。
「私、スクールアイドルやりたいの!
美穂ちゃんは歌上手いし、まりりんはダンス得意でしょ?どう?」
「あやめちゃんがアイドルって・・・いきなりどうしたの?」
「お姉ちゃんがアイドルやってると知って・・・私もやりたくなった!」
「楽しそうじゃない?まりりんやってみたい!」
「まぁ私も・・・歌うのは好きだし、やってみようかな?」
「やったー!」
ふたりとも乗り気のようで、大喜びのあやめ。
「だけど、どうやって活動したらいいの?」
「部活作るとかどう?アイドル部、って」
「それいい!まりりんも入部する!」
「アイドル部か・・・決定だね!美穂ちゃん、まりりん、よろしくね!」
「はい!!」
こうして、“アイドル部”の結成を決定したところで、ホームルームの始まるチャイムが鳴る。
「みなさーん、今日は2年生最初の授業だよー?
今年も楽しく高校生活過ごしましょうねー♪」
教壇に立ち、ふわふわとした口調で話すのは、C組の担任の新本先生。
142cmと背が低いうえに顔つきも子供っぽく、生徒たちよりも幼く見える。
「ここで、2年生から綾城に転入してきた子を紹介するよー♪
みちるちゃん、入ってきてー♪」
教室に一人の少女が入ってくる。
黒髪のセミロングをツインテールにした、やや背の低い少女だ。
「紹介するわね。水沢みちるちゃん!」
みちるは、顔を真っ赤にして身体を震わせており、かなり緊張している様子。
「あ、あの・・・私・・・水沢、みちるです・・・
よろしく・・・おねがいします・・・ふぇぇ」
目がうるうるしている。
直後、みちるの口から衝撃的な発言が放たれる。
「あ、あの・・・私・・・こんな格好してますが・・・
私・・・お・・・男の子なんです・・・!」
その言葉が放たれた瞬間、教室が一瞬静まり返る。
「ふぇ・・・私・・・気持ち悪い・・・でしょうか・・・?ふぇぇぇぇん」
みちるは泣き出した。
しかし、そこに女子生徒がフォローする。
「こんなにかわいいのに、男の子なの?」
「は、はい・・・」
直後、女子生徒の黄色い歓声が教室に響き渡る。
「こんなかわいい男の子が現実にいるとか・・・素敵!」
「女の子の私より女の子!」
「女装ショタ・・・薄い本のネタになるな・・・デュフフフ・・・」
黄色い歓声とは別に腐女子?の妄想も聞こえてくる。
「よ、よろしく・・・お願いしますっ!」
かわいい転校生がクラスに加わり、新年度早々賑やかになったCクラス。
新本先生も、
「ボクたちのクラスは元気がいっちばーん♪
楽しくいきまっしょーい!」
歓迎ムードなCクラス。今年も良いスタートダッシュが切れたようだ。
───昼休み。
売店で昼食を購入し、教室へ戻るみちる。
まだ緊張が解けないのか、ぷるぷる震えながら歩いている。
どんっ。
男子生徒とぶつかった。みちるは転んでしまった。
「ふぇぇ・・・ご、ごめんなさい・・・」
すると男子生徒は・・・
「ククク・・・貴様がうわさの2-Cの転校生だな・・・
聞いたぞ・・・お前、男だってなァ?」
「ふぇ、ふぇぇ・・・」
威圧的な態度を取る男子生徒。
直後、男子生徒の仲間が集まってくる。
「男のクセに女子の制服着て、そんな髪して・・・
気持ち悪いにも程があるぜ?なァ?」
そう言ってみちるの髪を引っ張る男子生徒。
みちるは顔面が涙で覆われ、声も出なくなる。
「おい、校舎裏行くぞ」
「お、おう」
男子生徒らはみちるを連れて校舎裏へと向かった。
時同じく。
「コトネっち、今日もまた放課後ゲーン?」
「そうだなー。ボルテやりたいしー・・・
・・・んっ、何か嫌な予感がしてきた。タツ、ちょっと出てくる!」
「お、おい!コトネっち!」
教室を抜け出し、廊下を疾走するコトネ。
「生徒会が廊下走るってどういうことですかー?」
達義が心配なのはそこだった。