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楽園の誓い  作者: 凡 徹也
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エピローグ

 僕の乗った飛行機は、滑走路に向かって動き出していた。そして、一旦停止した後、エンジン音を大きく発し、急加速したかと思うと瞬く間にホノルルの陸を離れた。

 僕はビジネスクラスのゆったりとした席に座っていた。来るときのエコノミークラスの座席とは大違いである。周りは静かであり、賑やかにはしゃぐ乗客達は居ない。スペースは広々としていて、足を思いきり伸ばしてくつろいだ。本社の粋な計らいに、このときばかりは感謝した。

 暫くは、帰国間際にまた会えたユウイチとの事が頭から離れなかった。飛行が安定した後、僕は会社に提出する為に殴り書きした報告書の下書きに、もう一度目を通しておこうとバンケージからバッグを取り出してファスナーを開けた。すると、包装されリボンを纏ってあるクリスからのプレゼントの小箱が出てきた。(そうだ。これを忘れていた。)そう思いながらリボンを紐解き、包みを開けてみた。包みの中からは、貝殻をあしらった写真立てと、手紙が入っていた。

その手紙にはたどたどしい日本語の文面でこう書かれていた。…

 サトルへ

私達と一緒に遊んでくれてありがとう。あの一日は最高に楽しかったわ。そして、サトルと出逢えて私はテレビに写って近所ではすっかり有名人になってしまいました。その事にとても感謝しています。

 出逢えた記念に写真を贈ります。私たちの事、日本に帰っても忘れないでいて下さいね。私たちも忘れないでいます。あなたと出逢えて良かった。いつまでも友達でいてください。

     クリス&アン ♥

 ~P.S~

 写真は2枚有りますが、一枚の写真の方はくれぐれも奥様に誤解を受けないようにお気をつけ下さいませ。ご幸運をお祈りします。


 手紙の下には自分と両脇で腕を組むクリスとアンとの3人で写っている写真が入っていた。あの、「タンタラスの丘」で撮った写真だ。そして、写真立てにはユウイチと僕が二人肩を組んだ写真がセットされていた。

 僕の目から自然に涙が溢れ出していた。写真に写るユウイチの笑顔が眩しくて堪らなかった。

 僕にとって、ユウイチは、永遠の存在なんだと確信していた。僕は絶対にユウイチの事は忘れない。いや、忘れる事は出来ない。それは…きっと僕にとって本当の初恋の相手だから…。

 長い時間、写真に見入った後、僕は優しく箱の中に納めた。そして再び包み直して鞄に入れた。

 その後、暫くして僕の高揚した気持ちは落ち着いていた。上着を脱いだ後、リクライニングを倒して僕は束の間の深い眠りに就いた。飛行機は遥まで続く雲海の上を滑るように東京へ向かって進んでいく。

 僕のYシャツの袖からはユウイチから貰ったブレスレットが見えていた。そのストーンに飛行機の窓から射し込む陽射しがあたり、一瞬キラリと輝いた。このストーンに、言い伝えの様に本当にハワイの神が宿っているかは誰にも判らない。しかし、このブレスレットは、確かに数年後、この二人を再び引き合わせる事になるのである。

      (完)


僕には、後から思えばこのハワイでの出来事は本当の恋だと気が付いたんだ。でも、僕には妻もいて、家庭があって、それに飛び込んで行くことは出来なかった。そう…ユウイチとの日々は、遠くの世界の出来事で、現実では無いとそう思い込むようにして、心の奥底に蓋をしてしまった。その筈だった。

 ……それが、12年後にあるきっかけから再会する事に。

 その再会編は、「続、楽園の誓い」として書き上げました。どうなるかは、綺麗事だけでは済まない事情が複雑に絡んで行きます。男同士の純愛物語の行く末はどうなるのか期待して下さい。

  ☆  ☆  ☆  ☆ 

 尚、続編は、その描写の内容から2020年11月になりオリジナル編は成人指定を受けました。なので「真実の楽園の誓い」と言う別のタイトルで、R18指定で投稿仕直しました。ですので、成人の方はその作品へとお進みください。宜しくお願い致します。

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