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楽園の誓い  作者: 凡 徹也
13/20

第7日 その3

 僕たちは海から揚がってきた。

 「どうだった?」とユウイチが聞くので、僕は

 「凄く気持ち良かったあ」と答えた。

 「知り合いの中にはセックスよりも気持ちいいと言っている輩も居るくらいだしな。」とユウイチが言うので僕は軽く溜め息をついて、

 「ユウイチさんは全部エッチに結びつけちゃうんですね。」と答えた。

 車の所へと戻り、スーツを脱いで上半身裸になったまま

 「それより、サトル初めてで波によく乗れたなあ。」とユウイチが言うので、

 「ちょっと待ってよ。それってどお言う事?誰でも直ぐに乗れるって言ってたじゃん。」

 「本当の事言うとな、殆どの奴は初めての日は乗れないもんさ。やっぱりサトルは運動センス良いんだなあ。」

 「じゃあさ、もし、一回も乗れなかったらどうしてたのさ?」

 「それを肴にして、散々バカにしてやるつもりだったんだがな。」

 「それってヒデ~!。」

僕は憤慨していた。ふと考えてみるとこの1週間の間で感情の起伏が激しくなった気がする。今まではこんな自分じゃ無かった筈だ。これもユウイチの所為だ。

 「まあきょうは乗れた祝いだ。コーチ代はただにしておいてやる。」

 「ヒド!。バカにするだけでなくて金も取るつもりだったんだ!」

 「当たり前だろ?俺はインストラクターで飯食ってるんだからな。まあ、今日はサービスだな。ついでに晩飯も奢ってやるよ。」

僕は呆れて、複雑な気持ちでユウイチを見つめた。

 「もう、僕はユウイチと知り合ってから人間として少し壊れてきた様な気がする!。」そう僕が言うと、

 「ハハハ!それは良い傾向だな。サトルみたいな堅物は少しぶっ壊れた方が、人間に魅力が増すってもんだ。」と返ってきた。僕はもう開いた口が塞がらなかった。

 ボードを仕舞い終わってボンネットを閉めて僕たちは車に乗り込んだ。僕は助手席で少し口を尖らせたままでいた。

 「サトルも大分気取れが取れてきたなあ。うん、いい顔してる。その膨れっ面は子供みたいだ。」

 「全部、ユウイチさんの所為ですよ~だ。」と言ってあかんべーをした。

 「本当に子供みたいだ」とユウイチは言って大笑いした。

 「そうだ!サトル。明後日、日本に帰るんだよな。仕事はもう無いのか?」

 「もう無いよ。」と僕はぶっきらぼうに言った。

 「じゃあさ、時間あるよな?これから連れていきたい所が有るんだ。

その前にうちのオフィスに寄ってくれる?。そこでシャワー浴びて身体洗うと良いよ。」そう言って車はダウンタウンへと向かった。

 車は10分程でオフィスへと到着した。建物の裏側に車を停めて、ボードを降ろすのをまず手伝った。

 「後は俺が片付けておくから、その間にシャワー浴びて着替えてくれ。」そう言われたので、ユウイチの後に附いて裏口からオフィスの中へと入った。

 「お帰りなさい!」会社の同僚達が声を掛ける。ユウイチが入っていった瞬間からオフィスは、笑顔と会話に包まれていた。ユウイチは会社でも人気者らしい。僕は、スタッフの皆さんに簡単に会釈をした。

 「そこがシャワールームだからな。パウダールームに有るシャンプーやボディーソープ好きに使ってくれ。あと、バスタオルこれな!」と言い、僕に投げてきたので慌ててキャッチした。

 パウダールームの鏡で自分を見てみると、顔には塩の結晶が白く粉を吹いて、髪の毛はジェルで固めたようにたなびいてゴワゴワだった。僕は、服を脱いで、ボディーソープとシャンプーを取り、シャワールームへと入った。

 シャワーのお湯をよく浴びて、身体から塩分をよく落とす。それからボディーソープて念入りに洗い、タオルで身体を良く拭いてからシャワールームから出た。パウダールームで髪を整え、着替えを終えて出てくると、目の前には女性のスタッフがいたので、僕は「サンキューベリーマッチ!」と言って軽い会釈をした。その女性は、流暢な日本語で話しかけてきた。

 「あら、ユウイチが男のゲスト連れてくるなんて珍しい!。私はエイミーです。宜しくね!」

 「僕は、サトルと言います。初めまして。」と挨拶すると、

 「あら、貴方がサトルなのね。ユウイチが最近、珍しく女性以外の名前を良く口にするので、どんな人かと思っていたのよ。少年みたいで爽やかで素敵な人ね!。良かったらコーヒーでも淹れるわ。この椅子に座ってちょっと待っててね!」と言いオフィスのかたすみにあるテーブル席に通された。直ぐにテーブルにコーヒーが運ばれてきて、僕は「どうもありがとうございます。」と言って答えた。丁度その時にユウイチがサーフボードの片付けを終えてオフィスの中に入って来て、

 「サトル、俺もシャワー浴びて来るからコーヒーでも飲んで待っててくれ。」「それと、エイミー。余分なこと言うなよ。」と、そう言ってから指を左右に振り、パウタールームへ入っていった。

 「仕事のイベントは大成功したみたいね。TVのニュースであなたの顔を見たわ。インタビューされてたでしょう?。」

 「あ、はい。そのようで。でも、僕はそのニュースを見ていないんですよ。」

 「夕方のニュースでバッチリ映っていたわよ。それから私の友人達も。ある意味、サトルはハワイでは有名人よ。」そう言われた僕は、少し照れて「はあ。どうも。」と言うしかなかった。

 それから10分程でユウイチはシャワーを済ませて上がってきた。

 「エイミー、俺にもコーヒー淹れてよ!」ユウイチがそう言うと、

 「はいはい。」とエイミーは言いながら、気だるそうにサーバーのところへ行き、カップにコーヒーを淹れてきた。

 「エイミー、何か余分なこと吹き込んでたりしてねーだろーな?」

 「あら、コーヒー淹れてあげたのにお言葉ですこと!」と、言うので、僕は、

 「散々、今までの悪態を聴いてました。」と、嘘をついた。

 「一体何を聴いたんだ?」と、ユウイチが真顔で聞くので、僕は少しだけふざけて「ウソですよーん」と言い返した。ユウイチは、僕の頭を軽く拳骨で小突いた。僕は小声で「いてー!」と言うとそれを見て、エイミーは、「楽しい人ね!サトルは。」と言いながら笑った。他のスタッフ達もクスクスと笑っている様だった。

 「サトル、そろそろ行こうか。」とユウイチは、コーヒーを一気に飲み干しながら言った。

 「叉、改めてゆっくり遊びに来てくださいね。」とエイミーは、優しい言葉をかけてくれた。僕は、

 「美味しいコーヒーをありがとう。御馳走様。」と告げてオフィスの

裏口から外へと出た。僅かな時間の訪問だったが、ユウイチが会社のメンバー達ととても上手く仕事をやれている雰囲気が充分に伝わって来て、僕は何故かとても嬉しい気分に充たされていた。

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