書いてみたいシーン
サブタイトル通り、書いてみたいシーンです。人名は適当。前提知識として、『甘い言葉で女の子を誘惑して何かを盗ませた少年が、ご褒美と称したペンダントでもって彼女を始末する』というものです (まどろっこしい)
残酷描写注意 (年の瀬になんつーもの載せてんだ)
「つけてあげるよ。おいで」
少女は率先してリドリーに向き、飛びつく。まさに目の前でつけろということらしい。積極的な態度にリドリーは薄ら笑う。
仰せに従い彼女の首に手を回す。掌に柔らかな温度が滑り込んだ。指先の首飾りの鎖が涼しげに鳴く。
なだらかな細さ。月明かりを流す首筋が浮き出る。
硬く冷たい感触が彼女の喉元をさらった。驚いた彼女をなだめるのと、留め具を繋げる手元の確認のため、自分からも彼女を抱き寄せる。
頬を染め、瞼を伏し、彼女の顔が胸元にうずまる。留め具の取りつけに手間取っているふりを装いつつ、彼女の耳へ低く囁く。
「とても似合うよ」
パッと彼女が顔を上げた。その瞳は潤み、零れそうなほど。
「リ……」
出会った、首飾りの両端を摘まむ手。リドリーは思い切り交差させた。
「!!」
強張る瞳。苦悶で見開く眼球に映る、リドリーの美貌。冷めた無表情。娘が喘ぐ。
「ガ…………ッ、は……」
娘の右手がさまよい、首をひっかく。しかし鎖の力は増していき、ビクともしない。むしろギチギチと、ちぎれんばかりに絞めつける。
信じられないと眼差しが訴えていた。少女の左手がリドリーを掠む。目元にかすかな刺激を感じながらも、リドリーは腕に力を込めた。筋肉が緊張し、鎖の極限まで引っ張られ痙攣する。
「ぐぁ……」
ついに少女は息を吐き尽くした。両腕はだらりと垂れ、膝が屈する。リドリーが首飾りから手を離せば、頼りなく崩れた。ガラスの飾りが派手な悲鳴を上げ割れ、地面の粉雪を飛び散らす。
リドリーは跪き、生気の削げた肌に触れた。
点々と充血した白目。噛みつく勢いを保った口がせっかくの美人を台無しにしている。
膨れた顔面、紫の鬱血。彼女はいったい誰なのか、特定に時間がかかるかもしれない。
立ち上がったリドリーの拳には何かが握られていた。筒状に巻かれた羊皮紙を広げ、ざっと目視する。
紙面と少女の亡骸をゆっくり見比べるうち、リドリーの口角がおのずと緩んだ。ほのかにつり上がり、だんだんと深まってゆく。
成功だ。最後の使命は場を去ること。
リドリーはフードをかけ直し、踵を返した。月も入れない闇夜の路地裏へ潜り込む。
光に見捨てられた小道はどの場所よりも闇が濃い。罪を犯すにはもってこいだ。そして死だけがそこに遺る。
たなびくローブの裾を、虚しい瞳孔が追い駆けていた。




