表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海底楽土  作者: 輝血鬼灯
1/10

1.海賊の少年

 深く蒼い海の底に、その楽園はあると言う。

 果て無い水、果て無い紺碧、果て無い闇の中、そこに棲む女神が両手を広げて待っている。その長い髪は水の揺らめきに合わせてたゆたい、月光の輝きにも似た黄金の瞳が、妖しく光を放つ。

 海の女神は気まぐれな美女であり、時折、気に入った人間を見つけては海に引きずり込んでしまうと言われる。穏やかな海に予兆もなく嵐が訪れて船が難破した場合、「女神に魅入られたのだ」と航海をする男達の間で畏怖の囁きが交わされる。

 けれど、こうも言われる。海で死んだ者達の魂は、海底(かいてい)楽土(らくど)へと飲み込まれて永遠の安息を得るのだと。

 魚も棲まない深海の底に、蒼い楽園がある。

 いつからか、それは船乗り達の伝説となり語り継がれていくようになった……。


 ◆◆◆◆◆


 今日も、海鳥達が気持ち良さそうに風と雲をその翼で撫でて飛び交う。金にも白にも似た陽光が降り注ぎ、街々の壁を輝かせ港に停泊した船のあちこちに落ちては灰色の影を作っていた。

 汗を流して木材や積荷を運び込む体格のいい男達の歩く隙間を縫うようにして、小柄な少年が駆けていく。十を幾つか過ぎたところであろう彼の髪は華やかな金色をしていて、右目を隠すように長く伸ばされていた。その下には、紺色の眼帯がつけられている。左目はその眼帯と同じく紺色の瞳だ。

 細いが日に焼けた手足を伸ばして走る彼の姿を見かけて、時折窓から顔を出した人々が手を振る。それに笑顔で応えながら、彼は馴染みの酒場へと足を踏み入れた。

「いらっしゃい。おや、ヘズじゃないか。また船のお使い?」

 戸口に取り付けられた鈴がカランと音を立てるのを聞いて、店の女主人がカウンターからこちらへと顔を向けてきた。ヘズと呼ばれた少年は懐から銀貨の詰まった袋を取り出して、女主人に指を突き出してみせる。

「うん。そろそろこの街を出発するから、酒樽をこれだけ……ええっと、いつまでに用意できる?」

「新しい酒の仕入れが明日なんだ。それ以降でいいかい?」

「うん、じゃあ明後日にうちの人達が引き取りにくるから、よろしくお願いします。代金は?」

 言い渡された金額を手渡す。女主人はそれを金庫に仕舞いながら、ヘズに話しかけてきた。

「それにしても、本当にもう行っちまうのかい? あの海賊さん達はうちの上得意だったって言うのに」

「うん、リーグ親方達も、ここはいい街だなって言ってた。けど、最近港町の警備が厳しくなってきたからって」

「そうかい。いや、ホント惜しいよ。『海賊』って一口に言っても、あんた達みたいないい海賊もいるってのにさ。船にジョリーロジャー掲げてるわけじゃないんだろ? 知らん顔して、もう少し留まることはできないの?」

 女主人の遠慮のない、けれど嫌味にもならない物言いにヘズは苦笑する。

「そうしたいのはヤマヤマだけど、船に海で会った他の船から奪ったお宝とか積み込んでるから。バレたら没収されちゃうからさ」

「あまつさえ、強盗の犯人として処刑されたりとか」

「そうそう。自分達が盗んだ財宝ならともかく、他の海賊からぶんどった獲物のせいで捕まるのはイヤだからね」

「よく言うよ。海賊以外から盗みなんかしたことないくせに」

 へへっと笑ってヘズは鼻をこする。

「だから、俺もあの船にいるんだけど」

「そうだね。ああ、ごめんよ引き止めて。他に行くところがあるんじゃなかったのかい?」

「うわっそうだ! あと保存食の注文して、ヴィーザルさんが預けてた剣を取りに行かなきゃ! じゃあね、おばさん、また明後日!」

 元気よく手を振って、銀貨の入った袋をしっかり握りなおしてヘズは店を出る。カランカランと涼しい音を立てるドアベルの余韻を聞きながら、女主人は一人ごちた。

「海賊、か……」


 ◆◆◆◆◆


 海賊。特定の島や沿岸を根拠地とし、武装した船でもって海を行くもの。暴力によって、海で出会った他の船舶や沿岸の街から富を奪うもの。それが一般的な印象だろう。

 だが一口に海賊と言っても色々な姿と事情を持っている者達がいる。例えば、領地を支配する王侯貴族が敵対国を対象に組織的に行う海賊もいれば、交易国との商売決裂によって、商人が海賊に転向するなんて話も珍しくはない。また、盗賊行為を取り締まる人々の方まで海賊と呼んだりするのだから、もう何が何だかわからない。海賊と海軍の差は、実は非常に曖昧で、その国ごとに違ったりもする。

 この頃の船はどれもこれも、多少の武装をしているものである。それは大砲や銃火器であったり、傭兵崩れの剣士等であったりと様々だが、その重要度は同じである。

 海を渡るのに必要なものは強さ。

 武力だけでなく、航海に必要な測量の技術、操舵の技術はもちろん、金庫破りの鍵開けまでが海では立派に力となる。

 それを持たない者は、ただ海底楽土の女神に抱かれて眠るがいい。

 海の男達はそう歌う。粗末な楽器を片手に宴を繰り広げ、いざ海上での戦闘となれば羽が生えたように身軽に船の上を飛びまわる。

 そうして、ヘズもその海の男達、海賊の一員であった。けれど、彼の力は、一応扱える程度の剣でもなければ、船を操り舵を取る技術でもない。

「ヘズ!」

 船員の一人が鍛冶屋に預けていた剣を抱え、食料品を扱う幾つかの店と酒屋から受け取った伝票を懐に入れて港へ停泊中の船へと戻ってきたヘズは、甲板から顔を出した男に声をかけられた。荷物を積み込むために港を行き来する仲間達のために下ろされた梯子を上って、船上に上がり、男に剣を差し出す。

「はい、ヴィーザルさん」

 ヴィーザルは、この船『グネーヴァル号』の副船長だ。暗い褐色の髪と瞳に、すらりと高い背、まだ二十代で女性に好かれそうなきりりと引き締まった凛々しい顔立ちをしているが、冷静沈着を絵に描いたような男で、彼が笑うところを幼い頃からこの海賊一家に育てられているヘズでさえ滅多に見たことはない。

 だが、今はその濃い褐色の瞳が差し出された包みを見て和む。長い旅と幾度にも渡る戦闘で疲弊し始めた彼の愛剣を、この街の鍛冶屋でやっと鍛えなおしてもらったところだ。

「ああ、いい出来だ。助かった、ヘズ」

「どういたしまして」

 最初に、ヴィーザルの剣の様子に気づいたのはヘズだった。彼の武器は『目』。よく見える目こそが、ヘズの持つ力だ。

「おーいヘズー、帰ったなら船長のところ行け。リーグさんが何か呼んでたぞ」

「あ、はーい!じゃあね、ヴィーザルさん」

「ああ、行って来い」

 ヘズに声をかけてきたのは髭を生やした中年の男で、船長室に向かって駆けていくヘズと入れ違いにヴィーザルの元へと歩いてきた。手にはこれからの航海に必要な地図や海図を幾つも抱えている。

 今でこそ大所帯の海賊メイナード一家の乗るグネーヴァル号は、もともとは大海原を航行して新たな島の発見、海の測量による海図の製作に努める小さな測量船だった。それが、敵対する海賊達を退け、その財宝をこれ幸いとばかりに略奪していたものだから、いつの間にか自分達自身が海賊などと呼ばれるようになってしまったのだ。

 一応、一般の客船や貨物船などから盗みを働いたことはないのだが、売られた喧嘩は買う主義の血の気の多い男達が揃っているので、メイナード一家はやたらと強い。こちらを単なる貨物船と見て戦闘を仕掛けてきた海賊達は、皆例外なく痛い目を見ている。

「ああ、剣戻ってきたんですか」

 ヴィーザルの手元に目を留めて、髭の男はにやりと笑う。グネーヴァル号が測量船だった頃からの乗組員である彼の名はエーギル。見た目はへらへらとした中年の親父だが、海図を描くことに関しては、彼の右にでるものはいない。そして、船長リーグ、副船長ヴィーザルとは長い付き合いである。

 長い間の友人であり副船長でもある男がいつも腰に佩いていた剣を見ながら、いつも通りのにやけ面でエーギルは言う。

「しっかしヘズの奴は本当にたいしたもんだな」

「ああ」

 一月ほど前、彼らは測量のために出かけていった先の土地で、その街を牛耳る荒くれ者達と揉め事を起こした。海で出会う他の海賊達に比べたらたいしたことのない連中で戦闘も楽勝だったのだが、その後にヘズがヴィーザルの剣に目を留めて言ったのだ。

『ヴィーザルさん、その剣危ないです。もうすぐ折れちゃうよ』

 刃の表面を舐めるように見つめても、今までについた細かな疵があるだけで、そんな大きな破損は見つからない。けれど念のためにとヴィーザルがそれを地面に打ちつけた途端、彼の剣は実に澄んだ音をたててぽっくりならぬぽっきりと御臨終してしまったのだ。

 ヴィーザルやエーギルだけでなく一同それを見て、場が一瞬無音の世界と化してしまったほどだ。

 最終的には剣を作り直すということで話が収まった。だからこの剣は、本当はヴィーザルが今まで使っていた愛剣そのものではない。同じ装飾で新しくこしらえた物だった。

「年々凄くなっていきますね。あの『海の女神の贈り物』は」

「……ああ」

 ヴィーザルは戻ってきた剣をさっそく帯で腰に佩く。三日後にこのグネーヴァル号は出航するのだ。そのための準備はまだまだ残っている。こんなところで立ち話をしているわけにもいかない。

 エーギルが渡してくる地図を半分腕に抱えながら、船室へ向う前にふっと視線を海へと投げる。青く遥かな水平線が空と混じり、境界をわからなくしていた。


 ◆◆◆◆◆


「親方、入りますよー」

 ノックをしておきながら、返事を待たずにヘズは船長室の扉を開けた。入り口の真正面にある机で何やら書きものをしていたグネーヴァル号船長リーグは、羽ペンを持つ手を止めてヘズの方を振り返る。

「おぅ、ヘズか。話はついたか?」

「はい。これです親方」

 店で受け取ってきた伝票や領収書と、残った銀貨の詰まった袋をリーグに差し出す。彼はそれらにさっと目を通すと、引き出しの一つに収めた。

「御苦労。わかった。酒屋に明後日、他のところは明日回ろう。これで、当初の計画通り三日後には出航できるな」

「はい」

 頷いたヘズの頭を、リーグは撫でた。まるで父親が子どもにするような仕草だが、実際に二人の関係は限りなくそれに近いものと言える。と言っても、リーグはまだようやく三十に届いた程度の歳で、十二歳のヘズの父親としてはいささか若いような気がするが。

「ヘズ。街は楽しかったか?」

「うん。いつも通りに。ここの人はみんないい人だね。俺みたいな変わり者にも、親切にしてくれる」

 この地方に、ヘズのような金髪碧眼は珍しい。大抵はここにいるリーグや、副船長ヴィーザルのような濃い褐色の髪と瞳を持つ。海賊の中には拠点を決めて一定の地域を荒らしまわるだけでなく、リーグ達メイナード一家のように様々な海を巡るもの達もいるので外見の特徴は人それぞれだが、その中でさえ陽光の輝きを映す金の髪は貴重だ。

 金髪とすれば、普通は貴族に多い髪の色だ。髪も目も黒や茶に近い海の男達に比べて、陸の王侯貴族は日に焼けたことのないような白い肌と、淡い金の髪を誇るのだと言う。

「でも、そろそろ他の土地にも行ってみたいな。そう……海底楽土みたいな」

「無茶言うな。海底楽土なんて、誰も見たことがねぇんだ。俺達みたいな無骨な野郎共には、海の女神様は見向きもしねぇんだよ」

「そこを頑張って口説き落としてよ」

「だーっ! お前俺がモテねぇの知っててそういうこと言うか? そんなに言うなら自分で口説いて来い」

「えー、俺お子様だし」

「海の女神はショタコンかも知れねぇだろうが」

「うわー、凄い言い方。親方はそれだから女の人にモテな……あ、嘘ですごめんなさい」

 怒ったフリで殴るマネをするリーグの腕が伸ばされるのを、ひょいと身をかわしてヘズは避ける。豪快に笑うその顔に笑い返して、船長室を後にする。次の指示を仰ぎに、副船長であるヴィーザルを探そうとした。

 グネーヴァル号は広い。もともとは乗組員十人にも満たない測量船だったものを、船員が増えるたびに船を大きくしていったのだ。それでなくとも航海には嵐や海賊に襲われる危険が常に付きまとうし、船体にぶつかる波の衝撃や海水の腐食で、例え穏やかな航海を続けていたとしても船は疲弊していく。

 特に、成り行き上とはいえ海賊として目されるようになったグネーヴァル号は他の海賊との戦場になることも多く、そういう意味では、他の船より消耗が早い。その度に相手の海賊から奪った財宝で大きな船に買い換えてお釣りが来るのだから、十二分にもとは取っているが。

「ヘズ」

「あ、エーギルさん」

 オーク材の板目を見ながら甲板へと続く廊下を歩いていたヘズは、前から来た人物に声をかけられた。赤毛のエーギルはこちらの姿に目を留めて、よっと手を挙げながら口を開く。

「ヴィーザルがお前に用があるってよ。見張り台まで来てくれってさ」

「わかった。行ってみます。伝言ありがとう」

 狭い廊下で体を横にして、すれ違う。そのまま突き当たりの階段から甲板に出て、頭上を仰いだ。マストを登り、見張り台へと足を運ぶ。

「ヴィーザルさん」

「ヘズか」

 双眼鏡で海の向こうを見ていたヴィーザルが、レンズから目を離した。手に持っていた双眼鏡をヘズに渡すと、東の方角を指差す。

「少し雲の様子が違うように見えるんだ。念のために『視て』ほしい。出航は三日後だ」

 受け取った双眼鏡を手に、ヘズはそれを目に当てようとした。だが右目を覆う眼帯に寸前で気づき、手の中のものを返した。紺色の眼帯を外すと今度はそれをヴィーゼルに預けて、自分は双眼鏡を受け取る。

 そうして、顔を上げたヘズの瞳は異相と呼ぶにふさわしいものだった。左目は何の変哲もない、ありふれた紺色の瞳。けれど右目は。

 その瞳は、髪と同じように陽光に煌めく金色をしている。

 露になった目に双眼鏡を当て、東の方を向いた。意識を集中すると、目に映る白い雲に別の光景が重なって見える。

「ヴィーザル副船長」

「ああ」

「あれはこれから嵐になる雲ですね。でも、大丈夫。俺達が行く方向からはこの三日の内にそれます」

「……わかった。この街にも雨が降ることはないんだな」

「ないです」

 双眼鏡を返して、眼帯を受け取る。元通りに金色の右目を隠して、ヘズはにこりと笑う。

「俺の力は、お役に立ちますか?」


 ◆◆◆◆◆


 深く蒼い海の底に、その楽園はあると言う。

 海底楽土。海の女神が住まう場所。気まぐれな女神は、時折気に入った人間を海に引きずりこむと言われている。そして女神に魅入られた者は、二度と地上に帰っては来られない。女神の住む楽園で永遠に暮らすのだ。

 だが、その楽園は海で死んだ者が行き着く最後の安息の地とも呼ばれている。ならば、海に引きずりこまれた者達は皆女神に殺されているのか。蒼い闇の底の楽園は、死者の住まう常若の国か。このように残酷な者が何故神と呼ばれるのか。

 残酷な女神が神と呼ばれる由縁は、その加護が船乗り達を護るという言い伝えに寄るもの。

 美しき女神は気に入りの人間を引きずりこむこともあれば、自らの加護を与えて、生かすこともある。女神から与えられた力を、『海の贈り物』と呼ぶ。

 そしてヘズはその『海の贈り物』を持つ人間だ。金色の右目は、海の女神と同じ色。その瞳に宿る力は、『先』を見通す。その意味は近い未来であったり、常人の眼光が届かない海や森の奥であったりする。どちらにしろ、その右目は見えないはずのものを見通すのだ。

 だが、その贈り物は不幸を呼ぶこともある。

「ヴィーザルさん、ヴィーザルさんの剣を直してくれた鍛冶屋のおじさんがね、新しい剣を買いに来るならぜひうちに来いって。業物用意しとくからって言ってました」

「そうか」

 他にすることが見つからず、ふと街で聞いたそんなことを副船長に伝える。

「ここはいい街だな」

「船長も言ってた」

「ああ。気のいい連中が揃ってる。俺達がメイナード一家だと知れただけで渋い顔をする奴らも今までの街には多かったのに、そんな素振りも見せないで付き合ってくれる」

 海賊。その言葉が持つ意味。あくまでも彼らは海賊だ。略奪者だ。リーグやヴィーザルにとってあくまでもグネーヴァル号は海や土地の測量が目的の船であり、黒い布地に髑髏と交差した大腿骨の海賊旗ジョリーロジャーを掲げているわけではないが、人の話はどう広まるかわからない。沿岸の街を襲ったことは一度たりとてないが、倒した相手の海賊から金品を奪ったのは事実。

 その話が紆余曲折を経て街々に広まり、彼らメイナード一家を弱者から財産を略奪する悪党だとみる人々も多い。

 そして自分の身を守るために、彼らはその手を相手の血に染めることもある。寄る港で恐れられ、恐怖の視線を向けられることも多々あった。

「俺も、この眼のことあんまりいろいろ言われなかった。昔の怪我だって言ったら、すんなり信じてくれて」

 ヘズはまだ子どもだが、右目を眼帯で隠しているのは民衆の目から見て異様だった。また、リーグのように屈強な男達には手が出せなくとも、子どもでもせめて海賊相手に一矢報いようとこちらを襲ってくる輩もいる。自分とさして違わないような歳の子どもから石を投げられたこともあった。海賊に滅ぼされた街や村は幾つもあるから無理からぬことではあるが、辛いことに変わりはない。

 だが、ここ数ヶ月世話になったこの港町ではそんな思いをすることはなかったのだ。

「いい奴らだよなぁ……」

「うん」

 しみじみと言うヴィーザルに頷いて、ヘズは見張り台の柵にもたれた。腕を組んで顎を乗せ、水平線を眺める。

 ここがどんなに良い街でも、長く留まることはできない。まだ見ぬ海を、誰も存在を知らない島を、見つけて地図に記すための旅が終わらないということもあるが、それ以上にそもそも海賊と言うものは、地上にはいられない人間達の集まりだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ