04 小さな約束と永遠の契約
『生涯、一人になりたくないか?』
「…ん?」
『愛されたいか。』
「…うん。」
『ならば、契約を。』
「?…契約って、なに?」
『ふむ…、簡単に言えば、約束だ。』
「なんの約束?」
『生涯、互いを一人にしない約束。共に歩むという、誓い。』
「…。」
『契りを結ぶか?』
「………うん。」
ぺたんと、草に座っていたけど立ち上がり、3メートルぐらいの相手に向き直る。竜も身体を起こし、その瞳を正面から私に向け、見つめあう。とっても綺麗な、ガラス玉みたいな瞳が私をじっと見つめる。
『差し出すものは?』
「ん?」
『我は瞳をそなたに与える。貴様も我に一部を与えよ。』
「目をくれるの?」
『ああ。』
「でも私、目を抉るの痛そうだからいやだ…。」
『では代えの物で良い。ただ、身体の一部になるが…。』
「どんなもの?」
『瞳のほかには、指、腕、脚……』
「む、無理、無理だよ…!」
『そうか?ああ、人間は再生しないのだったな。後は…、そうだな、効力は強すぎるが、髪。』
「髪?髪でいいの?」
『ああ。』
「こんな髪でよければ、いくらでも。」
もともと、髪を切ってくれる人もなくて伸ばしっぱなしだった髪だ。傷んでいる様子は今のところないけれど、勿体ぶるようなものでもない。それを聞いた竜は『分かった。』と言った後、その鋭い牙を携えた口を薄く開き、私に顔を近づける。食べられちゃうかも、とは思ったけれど別に怖くはなかった。逆に、こんな綺麗な瞳を見ながら死ねるなら、幸せとすら思った。