表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

02 小さな約束と永遠の契約



持たされていたものは、今着ている物と同じぼろぼろのワンピースが一着。感謝しなさい、と恩着せがましく渡された、小さな革袋に入れられた水と、布に包んである3切れの硬いパン。夕暮れになり、空が茜色に染まってきたころに適当な切り株に腰を下ろしてパンを一切れ食べて、水で流しこむ。もっと奥にいったらなにがあるのだろう。別に狼や野良犬に殺されようと私は別にいい気がしていた。だから、躊躇いなく進んで行った。

暗くなり始めて、森に差し込む光も少なくなってきた。寒くなってきたな…。そんな事を想いながら歩いていたら、―――とても綺麗な、湖を見つけた。目を瞬かせた。こんな綺麗な物は見た事がなかった。死んでも別にいやと思っていた私は、こんな綺麗なものを見れて、初めて生きていてよかったって思えた。

近寄って湖の水を掬って一口口に含めば、何だか甘みのあるとっても美味しい水だった。嬉しくて、一杯飲んでた。

でも、ふと見たら水面が揺らいでいて。どうしたのだろうと思って顔をあげたら、どんどんと小さな揺れを感じ、湖の真ん中のあたりから――――――其処に、伝説の生き物がいた。


白銀の毛並み。この湖よりも更に深い蒼の瞳は宝石の様で。

――――――――――――本も読んだことのなかった私は、それが伝説の「竜」だとは欠片も思わず、ただただこの世界には綺麗なものが沢山あるんだな、と感動していた。


見とれていたら、ふと竜の身体に鮮血が流れている事に気づく。でも、竜はそんな事気にした様子もなく堂々とした足取りで湖の中心から此方へと向かってくる。どうしたらいいのだろうとおどおどしていた。そんな私が視界に入っていないというように横を通り過ぎ、草のシーツの上でその身を横たわらせた。

しばらく、その姿を視界に入れていた。すると、湖に入っていて気付かなかったが、竜の身体からはところどころ鮮血が流れていた。とっても痛そうだったから、もう一着持っていたワンピースを引き裂いて、縛って止血しようとした。

それまで私の事など気にもかけていなかった竜が、視線だけをこちらに寄こした。その瞳があまりにも綺麗で、私は見惚れていた。


『幼子。何故我に構う?』


頭に、直接響いてくる様なその声。吃驚して、何処からの、誰の声なのかきょろきょろしてしまった。


『…目の前に、我が居るであろう。』


呆れたような声と、じっとこちらを見て来る瞳。

それでようやく、この竜が私に話しかけているんだって分かった。


「え…、っと、痛そうだったから…。」

『から?』

「え、え、?」

『痛そうだったから、なんだというんだ。』

「だって…、痛そうだったら、助けてあげたいと、思うものじゃない、の…?」


私は、逆の立場だったら、助けてほしいと思う。それに、痛そうにしている人が居たら、和らげてあげたいと思う。私に出来る事なんて少ししかないけど、少しの救いにもならないかもしれないけど。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ