Festival is not over yet.
沢木先生のお題に基づいて書いてみました。
「はあ、はあ、はあ……」
俺は暗闇の中を息を切らせて走り続けている。
夢か現実かもわからないまま、逃げ回っていた。
「くそ!」
奴の雄叫びと時々聞こえる水溜りに足を突っ込む時のビシャッという音。
「もう来たのか」
俺は一息吐こうと思ってしゃがみかけたが、また走り出す。
「うおお!」
間近で奴が叫ぶのを聞いた。息遣いさえ聞こえるほどすぐそばに来ている。俺は逃げ切れないかも知れないと思った。しかし、諦めるのはまだ早い。気力を振り絞って再び走り出す。
「がああ!」
奴が大きな鉈を振り上げ、追いかけて来る。とうとう見つかってしまったのだ。
「く!」
俺は恐怖で足をもつれさせながら、何とか走る。だが奴は思いの外速く、次第に距離を詰められてしまった。もうダメだと思った時、前方に崩れる寸前のような吊り橋が見えて来た。チャンスだ。奴は大柄だから、この橋を渡る事はできない。そう判断し、大揺れする吊り橋を決死の覚悟で渡った。
「ぐうお!」
案の定、奴は橋の手前で地団駄を踏んで悔しがっている。ざまあ見ろ。俺はその様子の見てニヤリとし、橋を進んだ。しかし、その喜びも束の間だった。橋の向こうに奴の仲間が現れたのだ。
「がああ!」
そいつは大きな出刃包丁を振り上げていた。あれで吊り橋を切られたらおしまいだ。俺は揺れをものともせずにそいつが橋に辿り着く前に渡り切ろうと急いだ。しかし、悲しい事にそいつの方が先に橋の向こうに着いてしまった。俺は逃げ場を失った。
「Festival is not over yet.」
そいつは流暢な英語でそう言った。
お粗末さまでした。