第3話 決闘(デュエル)編
4月の中週。入学式、確認テスト、新入生歓迎会などが終わり、俺たちが新たな学校生活に慣れ始めていた頃。思わぬ出来事が起きた。
俺が教室に入ると、教室の中がざわついていた。
「あ、マコト! これ見て!」
カナが俺の手を引き、俺の机に引っ張る。俺の机には紙が貼られており、筆で一言こう書かれていた。
「本日午後4時、美坂マコトの完全粉砕に赴く。用心されたし」
誰かのいたずらだろうか? しかしいたずらにしては内容が物騒である。これは完全に脅迫だ。
「一体誰がこんな酷いことを……」
奥村さんが爪を噛む。
「完全粉砕だって。美坂くん、なにか悪いことしたの?」
早川さんが俺を見上げて尋ねる。
「いや、覚えがないぞ?」
完全に覚えがない。これまでの記憶や出来事を振り返ってみるが、さっぱり分からない。
「それにしても粉砕ってどうやるんでしょう……」
「ブルドーザーでやるんじゃない? こう、ドカーンと!」
奥村さんと早川さんが勝手に盛り上がっている。
「ど、どうするの?」
カナが俺に尋ねる。
「とりあえず、古川先生に相談してみよう。カナ、一緒に来てくれるか?」
俺は机の脅迫状を剥がして二つに折り、カナの手を取る。
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私はマコトの机に貼られた脅迫状を見て、顔が青ざめた。それからマコトの手を握った。私は、マコトが何か悪い事をしたのではないかと少し心配をしていた。シオリちゃんとナナちゃんが勝手に盛り上がっているのを見て少し苦笑した。
私はマコトに、心配な表情で尋ねた。
「……マコト、本当に覚えがないの? 誰かに恨まれるような事、してないよね……? カナ、心配だよ……。完全粉砕って……物騒すぎるよ……。いたずらだったらいいけど……。本気だったら怖いよ……」
私はマコトの手をぎゅっと握った。
それからマコトの提案を受け、マコトと一緒に古川先生に相談することにした。
「うん、古川先生に相談しよう。カナも一緒に行くよ。マコトを一人にはしないから……。カナもマコトのこと守るから……。絶対に何も起こさせない」
私は真剣な表情で言った。私はマコトを守りたいという強い気持ちを抱いていた。
マコトと一緒に教室を出て、職員室へ向かった。これから何が起こるのか不安だった。それでも私はマコトと一緒ならどんなことでも乗り越えられると思っていた。マコトの隣を歩きながらマコトに寄り添っていた。
「ねえ、マコト……。もし本当に誰かが襲ってきたら、カナがマコトを守るから……。カナ、マコトのことが大好きだから……。マコトに何かあったら絶対許さないから……。だからマコトも気をつけてね……。カナ、ずっとマコトのそばにいるから……」
私は真剣な表情でマコトのそばにいた。
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「な、何ということですか!」
職員室。俺とカナは、先ほどの脅迫状を古川先生に見せた。
「楽しくなるはずの学校生活をこんな形で脅かすなんて……。お二人は本当に頑張ってきたのに……」
古川先生の手が震えている。
「これは立派な脅迫です。そして決闘罪でもあります」
「決闘罪?」
俺とカナは、同時に古川先生に尋ねた。
「日時や場所を指定して暴力行為を行うことを禁止する法律です。明治時代からある法律なのですが……」
古川先生の顔が博識な印象を強めている。
ただ、俺は脅迫状に気になる点があった。
「普通誰かを脅迫するなら痕跡が残らないように工夫するもんだ。しかしこの脅迫状は筆で書かれている。筆跡を調べれば誰がやったかわかっちゃうよ」
さてどうしたものか、と考えていると一つ妙案を思いついた。
「古川先生。この件ですけど、まず俺とカナが教室で待ちます。先生は隣の教室で待っていてください。で、犯人が入ってきたら思いっ切りカチ込みに来てください」
古川先生は少し考えていたが、俺の考えに気づいたのか頷いた。
「分かりました。くれぐれも気を付けて」
俺はカナの方を向く。
「カナ、俺と一緒に教室で犯人を待つぞ。……一応気を付けてな」
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私は古川先生の説明を聞いて驚いた。手紙の内容は立派な脅迫であり、決闘罪にも該当するのだと古川先生は仰った。それからマコトが脅迫状の筆跡について指摘しているのを聞き、私もそう思うと頷いた。
私はマコトが妙案を思いついたのを見て、うまくいくことを願った。
そして私はマコトと一緒に教室で犯人を待つことにした。私はマコトの隣りに座り、マコトに寄り添った。午後4時になるのを待っていた。犯人が誰なのか気になっていた。私はマコトの手をぎゅっと握った。
「ねえ、マコト……。犯人、誰だと思う? カナ、全然見当もつかないよ……。マコト、誰かに恨まれるような事、本当にしてないよね? カナ、マコトのこと信じてるから……。もしも何かあったらカナがすぐに助けるから……。だからマコトも気をつけてね……」
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放課後の教室。教室には俺とカナしかいない。
俺は窓辺に寄りかかり、腕を組んで相手が来るのを待っていた。夕日が俺たちの背中を熱く照らす。
午後4時を少し過ぎたあたり、教室の扉が勢いよく開かれた。そこには詰襟の学生服を着た男子生徒が立っていた。
「はーっ、はっ、はっ、はっ!! 我の決闘状にビビらずに待っているとは大したもんだ!!」
「お、お前は……!」
俺は男子生徒の顔を見つめる。
「……誰だ?」
と尋ねると男子生徒がずっこけた。本当に知らなかった。
「な、この田丸キントキを知らないとはっ……!」
「……知ってる?」
俺はカナに尋ねる。
「さあ?」
カナは肩をすくめる。
田丸が教室に入り、真ん中付近で足を止める。俺は早速本題に入る。
「で、完全粉砕っていったい何をするんだ?」
「ふふふ……よくぞ聞いた!」
すると田丸はポケットからスマホを取り出した。田丸はスマホを片手で高々と掲げる。
「我と決闘しろ!!」
「デュエル?」
俺とカナが同時に尋ねる。
「こらああああっ!!」
突如教室の入口から男性教員の叫び声が聞こえた。古川先生だ。作戦通り古川先生がカチ込みに来てくれたのだ。
「ひ、ひぃっ!!」
田丸は体を縮めて怯えている。
「この脅迫状は何ですか!!」
「きょ、脅迫状?」
田丸は自分がしたことの重大さに気づいていないようだ。もしかしたら勢いだけでやって考えていなかったのかもしれない。
「完全粉砕ですよ!! 相手の命を脅かす行為で脅迫罪!! 日時と場所を指定して暴力行為を確約した時点で決闘罪です!!」
「す、すいません!! 本当にすいません!!」
しばらく古川先生が田丸に説教した後、古川先生が微笑みを戻す。
「……これでよいですかな?」
ホッホッホッ、と古川先生は笑いながら教室を出て行った。
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私は田丸キントキという男子生徒が教室に入ってきたのを見て少し驚いた。マコトに「知ってる?」と尋ねられると肩をすくめて「さあ?」と答えた。私は田丸くんという生徒の事を全く知らなかった。
田丸くんがスマホを取り出して「我と決闘しろ!!」と言ったのを聞いて私は呆れてしまった。
「デュエル……? ゲームのこと? え、完全粉砕って、ゲームで勝負ってこと……? マジで……?」
私はマコトと顔を合わせて苦笑いした。田丸が本気で脅迫状を出してきたが実はゲームの決闘だった事に拍子抜けしていた。
やがて古川先生が教室に入ってきて、田丸を叱りつけた。古川先生が田丸に説教をしているのを見て安心した。田丸が自分のした事の重大さに気づいてないのを見て呆れていた。古川先生がホッホッホッと笑いながら教室を出ていったのを思わず噴き出した。
「ふう……びっくりしたあ……。カナ、本当に何か危ない事になるんじゃないかって心配してたんだよ。……でもデュエルってゲームのことだったんだね。田丸くん、ちょっと変わってるね……。でもマコトが無事で本当に良かったよ……」
私はマコトを見て微笑んだ。とりあえず無事だったことに心から安堵した。
「ねえ、マコト。これで一件落着だね……。カナ、本当にホッとしたよ……。でも田丸くん、どうするの? 古川先生に怒られて反省してるといいけど……。……まあとりあえず、マコトが無事で良かったよ。カナ、マコトの事守れて良かった……」
私はマコトと一緒に教室を出ようとした。
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「ちょおおっと待ったあ!!」
田丸が俺たちを呼び止める。
「我とマジックワールドで決闘しろ!」
「……なんで?」
俺はただ呆れていた。
「我が決闘に勝ったらその女の子を貰おう!!」
「ええっ!?」
カナが完全に驚いている。無理もない。
「どうするの?」
カナが俺に尋ねる。
「……その勝負、受けるよ」
俺は田丸の方に向かい、自分のスマホを取り出す。
「大丈夫なの?」
カナが俺に尋ねた。
「……受けないと面倒なことになりそうだ。それに……」
俺はカナの肩に手を置く。
「……大丈夫。俺は負けないよ」
俺と田丸は座席に座り、机を挟んで向かい合う。お互いスマホを横にして両手で持つ。
「ルールはノーマルバトルでいいよね?」
「望むところだ!!」
続いて俺はiPadでマジックワールドを起動し、試合観戦モードにして横に置き、カナに試合の状況が見えるようにする。
「試合、カナが見えるようにするけど構わないよね?」
「そうだそうだ!! 貴様が無様に敗北するところを見せてやる!!」
iPadにバトルの様子が映し出される。俺のアバターはソーサラーのエリザベス。強気な若い女性の魔法使い。田丸のアバターはヴァンパイアのアルカード。渋い男性の吸血鬼。こうして俺と田丸のマジックワールドバトルが始まった。
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私は、田丸くんが私たちを呼び止めるのを見て呆然としていた。そして田丸くんが「我とマジックワールドでデュエルしろ!」と言ったのを聞いて何も言えなくなった。
今度は「我がデュエルに勝ったらその女の子を貰おう!!」と言い出して私は開いた口が塞がらなかった。
「え、ええっ!? か、カナを貰うっ!? ちょ、ちょっと待って!! カナ、マコトと付き合ってるんだけど……! 勝手に賭けの対象にしないでよ!!」
私は田丸を見て怒りの表情を見せた。自分が賭けの対象にされた事に腹を立てていた。それからマコトの方を見て少し心配そうな表情を見せた。マコトが「その勝負、受けるよ」と言うのを聞いて不安になった。
「マコト、大丈夫なの……? マジックワールド、やったことあるの? カナ、マコトの事信じてるけど……でも心配だよ……。田丸くん、なんか強そうだし……」
マコトが私の肩に手を置いて「大丈夫。俺は負けないよ」と言うのを聞いて私は少しだけ安心した。私はマコトの事を信じていた。
マコトと田丸は座席に座り、机を挟んで向かい合った。マコトが自分のiPadでマジックワールドを起動し、試合観戦モードにして私の前に置いた。私はiPadの画面を見て興味深くなった。マコトのアバターがソーサラーのエリザベスで、田丸のアバターはヴァンパイアのアルカード……。
私はマコトと田丸がマジックワールドでバトルするのを見て固唾を呑んだ。
「頑張って、マコト……。カナ、応援してるから……。絶対に負けないでね……。カナはマコトと一緒だから……絶対に田丸くんになんか渡さないから……!」
私は祈るように呟いた。私はマコトが勝つことを信じていた。iPadの画面を見ながら少し緊張してバトルの様子を見守っていた。マコトの手を握りたかったが、マコトがスマホを両手で持っているため、握れなかった。
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バトル開始。
俺が先攻、田丸が後攻。
俺と田丸はまず各自のデッキからカードを3枚引く。俺は流浪の銃士・ケイン、アイアンゴーレム、鏡の魔女を引いた。
1ターン目に入る前、引いた3枚のカードが気に入らなければ戻して引き直すこともできる。俺は鏡の魔女をデッキに戻し、カードを1枚引き直す。混沌の魔術師を引いた。田丸はカードを引き直さなかった。
1ターン目。
まずは俺のターン。
デッキからカードを1枚引く。英知の光を引いた。
「ユニット、混沌の魔術師を召喚!」
俺の場に混沌の魔術師が登場する。攻撃力1、HP2のユニットだ。
「続いてマジックカード、英知の光発動!」
英知の光の効果により、俺はデッキからカードを1枚引く。魔道の狙撃手を引いた。
「さらに混沌の魔術師の効果『このユニットが自分の場に出ているとき、マジックカードを1枚発動させるたびにカードを1枚引く』より、カードを1枚引く!」
俺はデッキからカードを1枚引く。今度はコマンダー・レギアスを引いた。
1ターン目の先攻は攻撃ができない。
「ターンエンドだ」
続いて田丸のターン。
田丸は1ターン目後攻のためカードを2枚引く。田丸は出せるカードがないのかそのままターンエンドした。
「美坂くーん! あれからどうなったのー?」
早川さんが大きな声を出して教室に入ってきた。
「あれー? ブルドーザーは?」
「……そんなものないよ」
俺が早川さんにツッコむ。
「今、マコトと田丸くんがマジックワールドでバトルしてるの」
カナが早川さんに今の状況を説明する。
「マジックワールド!? 見せて見せてー!」
早川さんはカナの隣に座り、iPadを覗き込む。
「わあ、美坂くんがソーサラーかな? 女の子の魔法使い、強そー! 相手はヴァンパイアかあ……」
早川さんが解説をする。
「ソーサラーはねー、マジックカードが強いんだよー! 魔法で相手を翻弄! って感じかなー? ヴァンパイアはねー、自分にダメージを与えて強くなったり、体力を回復させるのが得意なんだー。体力が10以下になるとブラッドレイジって言ってね、とっても強くなるんだよー!」
早川さんが両手を広げてコウモリの真似をする。
「まだまだ始まったばかりだねー。美坂くんの場にはユニットが1体、相手の場には何もないのかー。試合、どうなるんだろうね?」
早川さんがワクワクしてiPadを眺めている。
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私は、ナナちゃんが教室に入ってくるのを見て少しだけホッとした表情を見せた。ナナちゃんが「ブルドーザーは?」と言うのを聞いて苦笑いした。
私はナナちゃんに今の状況を説明した。ナナちゃんがiPadを覗き込んでマジックワールドの解説を始めたのを見て、私はさらに興味深くなった。
「へえ……ナナちゃん、マジックワールド詳しいんだね……。ソーサラーはマジックカードが強いんだ……。ヴァンパイアは自分にダメージを与えて強くなるのか……。ブラッドレイジ状態、怖そう……。でもマコト、頑張って。カナ、マコトの事信じてるよ……」
私はiPadの画面に視線を戻し、緊張した面持ちでバトルの様子を見ていた。
マコトが1ターン目に混沌の魔術師を召喚し、英知の光を発動してカードを引くのを見て少しだけ感心した。さらに混沌の魔術師の効果でカードを引くのを見て思わず「すごい……」と呟いていた。
「マコト、カードいっぱい引いているね。これって有利なのかな……? ナナちゃん、どう思う? カナ、マジックワールドあまり詳しくないから……。でもマコト、一生懸命考えてるのは分かるよ。田丸くんはまだカードを出してないのか……。これからどうなるんだろうね……?」
私はナナちゃんの方を見て少し心配そうな表情で尋ねた。私はマコトが勝つことを信じていたけど、ゲームのルールがあまり分からないため不安だった。
それから私はiPadの画面を見ながら固唾を呑んでバトルの様子を見守っていた。
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2ターン目。
「カードを1枚引く!」
俺は今度は荒野の保安官を引いた。
「荒野の保安官を召喚!」
混沌の魔術師に続いて荒野の保安官が俺の場に登場する。荒野の保安官も攻撃力1、HP2のユニットだ。
「荒野の保安官の効果『このユニットが自分の場に出たとき、歴戦の名馬を1枚自分の場に出し、カードを1枚引く』により、まずアイテムカード、歴戦の名馬を俺の場に1枚出す!」
俺のユニットの後ろ側に歴戦の名馬1枚が置かれる。馬が描かれているカードだ。続いて俺はデッキからカードを1枚引く。今度は砂漠の放浪者を引いた。
「混沌の魔術師によるダイレクトアタック!」
混沌の魔術師が田丸のアバターであるアルカードにダメージを与える。HPが1減って19になる。
「続いて荒野の保安官によるダイレクトアタック!」
荒野の保安官がアルカードにさらにダメージを与える。HPが1減って18になる。
「ターンエンドだ」
早川さんはiPadを見て興奮している。
「すごい! ダイレクトアタックだ! 確実に決めてるね!」
続いて田丸のターン。田丸がカードを1枚引く。
「ならば我はマジックカード、血の覚醒を発動だ!」
田丸はマジックカードの血の覚醒を出した。血の覚醒の効果によりまずアルカードに2ダメージが加わりHPが16に減る。続いて田丸はカードを2枚引いた。
「おお、これぞまさに肉を切って骨を断つだね!」
ナナがヴァンパイアならではの行動に目を輝かせている。
「続いて我はファイターを召喚する!」
田丸の場にファイターが登場した。攻撃力2、HP2のユニットだ。
「ファイターで混沌の魔術師を攻撃だ!」
田丸のファイターが俺の混沌の魔術師に攻撃し、混沌の魔術師は破壊されてなくなった。
「ターンエンドだ」
俺の場には現在荒野の保安官が残っていて、歴戦の名馬が1枚場に残っている。田丸の場にはファイターが出ている。
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私はマコトが荒野の保安官を召喚し、歴戦の名馬を場に出してさらにカードを引いたのを見て感心していた。続いてマコトが混沌の魔術師と荒野の保安官で田丸にダイレクトアタックを決めたのを見て「やった……」と小さく声を上げた。ナナちゃんが「すごい! ダイレクトアタックだ! 確実に決めてるね!」と興奮しているのを見て思わず微笑んだ。
やがて田丸のターンになり、田丸が血の覚醒を発動させて自分にダメージを与えてカードを2枚引いたのを見て驚いた。ナナちゃんが「おお、これぞまさに肉を切って骨を断つだね!」と目を輝かせているのを見て少しだけヴァンパイアの特徴を理解した。
田丸が今度はファイターを召喚し、マコトの混沌の魔術師を破壊したのを見て思わず「あっ……」と声を出した。マコトのユニットが破壊され、少し心配になった。
「マコト……混沌の魔術師、やられちゃったね……。でも、大丈夫だよね? まだ荒野の保安官がいるし……。歴戦の名馬も残ってるし……。マコト、まだまだ有利だよね……? カナ、マコトを信じてるから、頑張ってね、マコト……」
私はマコトを見て心の中で応援した。iPadの画面に目を戻し、緊張しつつバトルの様子を見守っていた。私はナナちゃんの隣りに座り、ナナちゃんに寄り添いながらマコトの勝利を心から願っていた。マコトは絶対に負けないと信じていた。
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3ターン目。
「カードを1枚引く!」
今度は砂漠の荒くれ者を引いた。
「砂漠の放浪者を召喚!」
俺の場に砂漠の放浪者が登場する。攻撃力2、HP2のユニットだ。
「歴戦の名馬の効果『このカードが出た後にユニットが自分の場に出たとき、そのユニットの攻撃力を+1、HPを+1してこのカードを破壊する』により、砂漠の放浪者の攻撃力を+1、HPを+1する!」
砂漠の放浪者の攻撃力が1増えて3、HPが1増えて3になる。歴戦の名馬は役目を終えて破壊された。
「さらに砂漠の放浪者の効果『このユニットが自分の場に出たとき、歴戦の名馬を1枚自分の場に出す』により、アイテムカード、歴戦の名馬を俺の場に1枚出す!」
俺のユニットの後ろに歴戦の名馬1枚がまた置かれた。
「砂漠の放浪者でファイターにアタック!」
砂漠の放浪者が田丸のファイターを攻撃し、ファイターは破壊されてなくなった。
「荒野の保安官でダイレクトアタック!」
荒野の保安官がアルカードに攻撃し、アルカードのHPが15に減った。
「ターンエンドだ」
続いて田丸がカードを1枚引く。
「ならば我はマジックカード、紅の一撃を発動だ!」
田丸が紅の一撃を発動させる。紅の一撃の効果「自分に2ダメージ与え、相手のユニット1体を破壊する」により、アルカードに2ダメージ加わりHPが13に減る。続いて俺の砂漠の放浪者を破壊した。
「ヴァルキュリアを召喚だ!」
田丸の場にヴァルキュリアが登場する。攻撃力2、HP6のユニットだ。ガードを持っている。ガードを持つユニットがいる限り、それ以外のユニットや相手には攻撃できない。
「ヴァルキュリアがいる限り俺にダイレクトアタックはできないぞ? どうするー?」
田丸が俺を挑発する。
「ヴァルキュリアで荒野の保安官を攻撃だ!」
田丸が出したヴァルキュリアが俺の荒野の保安官を攻撃し、荒野の保安官は破壊されてなくなった。
「ターンエンドだ」
現在俺の場には歴戦の名馬だけが残っており、田丸の場にはヴァルキュリアが残っている。
「あちゃー、美坂くん、ユニットいなくなっちゃったね。でも田丸くん、すごいHP減ってるけど大丈夫かなー?」
早川さんが試合の行方を見守っている。
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私は、マコトが砂漠の放浪者を召喚し、歴戦の名馬の効果で砂漠の放浪者を強化したのを見て「本当にすごい……」と呟いた。砂漠の放浪者で田丸くんのファイターを破壊し、荒野の保安官でダイレクトアタックを決めたのを見て、少しだけ嬉しくなった。マコトが着実にダメージを与えているのを見て少し安心した。
田丸くんのターンになり、紅の一撃を発動させて自分にダメージを与えつつマコトの砂漠の放浪者を破壊したのを見てまたもや心配になった。
「……マコト、ユニットいなくなっちゃったね。大丈夫……? でも田丸くんもHPすごく減ってるよね……。ナナちゃんも言ってるけど、田丸くん大丈夫なのかな……? マコト、まだ巻き返せるよね……? マコトの事信じてるから、頑張ってね……」
私は、マコトが次のターンどうするのか少しドキドキしていた。
「……ねえ、ナナちゃん。この状況、マコトにとって不利なのかな……? でもマコトは絶対に負けないよね? マコト、信じてるから……」
私はナナちゃんの方を見て少し心配して尋ねた。
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4ターン目。
「カードを1枚引く!」
今度は砂漠の調理人を引いた。
「砂漠の調理人を召喚する!」
俺の場に砂漠の調理人が登場する。攻撃力2、HP2のユニットだ。
「歴戦の名馬の効果『このカードが出た後にユニットが自分の場に出たとき、そのユニットの攻撃力を+1、HPを+1してこのカードを破壊する』により、砂漠の調理人の攻撃力を+1、HPを+1する!」
砂漠の調理人の攻撃力が+1されて3、HPが+1されて3に増える。歴戦の名馬は役目を終えて破壊された。
「さらに砂漠の調理人の効果『自分のターン中に1回、このユニットの攻撃力またはHPが増えたとき、ランダムな相手のユニット1体に3ダメージを与え、自分のHPを3回復する』により、田丸のユニット1体に3ダメージ与え、俺のHPを3回復する!」
砂漠の調理人の効果により、田丸のヴァルキュリアに3ダメージ加わり、HPが3に減る。攻撃力は2でそのままだ。続いて俺のアバター、エリザベスのHPが3回復するが、既に上限であるためHPは20のままだ。
「砂漠の調理人でヴァルキュリアを攻撃する!」
俺の砂漠の調理人が田丸のヴァルキュリアを攻撃し、ヴァルキュリアは破壊されてなくなった。
「ターンエンドだ」
続いて田丸のターン。4ターン目後攻から奥義が使えるようになる。
「あ、田丸くん、奥義を発動できるよ!」
早川さんが奥義について説明する。
「奥義っていうのはね、SPを消費して1ターンに1回だけユニットを強化できるんだ。奥義を発動させると攻撃力が2、HPが2増えるし、ユニットによっては奥義を発動させたときに追加効果が発動することもあるんだよ!」
早川さんはワクワクしている。
田丸がカードを1枚引く。
「せっかくだから我は魔装の女王を召喚させてもらおう」
田丸の場に魔装の女王が登場する。
「魔装の女王の奥義だ!」
田丸のアバター、アルカードが「小手調べだ。」と言って不敵な笑みを浮かべる。相手の魔装の女王が強化され、攻撃力が2増えて5、HPが2増えて6になる。
「魔装の女王の奥義効果『このユニットが奥義を発動させたとき、相手のユニット1体に2ダメージ与え、自分のHPを2回復する』により砂漠の調理人に2ダメージ、我のHPを2回復する!」
田丸の魔装の女王の奥義効果により俺の砂漠の調理人に2ダメージが加わり、HPが1に減る。アルカードのHPが2回復して15になる。
「魔装の女王で砂漠の調理人に攻撃だ!」
田丸の魔装の女王が俺の砂漠の調理人に攻撃し、砂漠の調理人は破壊されてなくなった。この状況には早川さんもかなり驚いている。
「ターンエンドだ」
「わあ……美坂くん、完全にがら空きになっちゃってるよ……」
俺の場には何も残っていない。田丸の場には奥義を発動させた魔装の女王が残っている。
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私は、マコトが砂漠の調理人を召喚し、歴戦の名馬の効果で強化されたのを見てホッとした。さらに砂漠の調理人の効果で田丸くんのヴァルキュリアにダメージを与え、マコトのHPが回復したのを見て喜んだ。
田丸くんのターンになり、魔装の女王を召喚して奥義を発動させたのを見て驚いた。ナナちゃんが奥義について説明するのを聞いて、奥義について理解した。続いて田丸くんの魔装の女王がマコトの砂漠の調理人を破壊したのを見てドキリとした。マコトの場にユニットがいなくなり、かなり不安になった。ナナちゃんが「わあ……美坂くん、完全にがら空きになっちゃってるよ……」と言うのを聞いていてもたってもいられなくなった。
「マコト……大丈夫なの? ユニット全部いなくなっちゃったよ……。田丸くんの魔装の女王も強くなってるし……。このままだとマコト、やられちゃうんじゃ……? でもマコトは絶対に負けないよね……? カナ、ずっと見てるから……頑張ってね、マコト……」
私はマコトが負けるのではないかと少し不安になっていた。もし田丸くんが勝ったら自分がどうなるのか恐怖を感じていた。絶対にマコトに勝って欲しいと心から願っていた。
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5ターン目。
「カードを1枚引く!」
今度は英知の光を引いた。
「俺はコマンダー・レギアスを召喚する!」
俺の場にコマンダー・レギアスが召喚された。攻撃力4、HP4のユニットだ。胸に勲章を飾っている男の軍人が現れる。
「コマンダー・レギアスの奥義発動だ!」
俺のアバター、エリザベスが「試してやろう!」と強気に叫ぶ。俺のコマンダー・レギアスが奥義を発動し、攻撃力が2増えて6、HPが2増えて6になる。
「さらにコマンダー・レギアスの追加効果『このユニットが奥義を発動させたとき、自分のリーダーは自分のドローフェイズが終了したとき、デスペル1枚を手札に加える』により、俺はカードを引いた後にデスペル1枚を手札に加える効果を持つ!」
やたら長いが要は次のターンから俺がカードを1枚引いた後、デスペルというマジックカードを1枚追加で手札に加えるということだ。
「続いてマジックカード、英知の光を発動!」
俺が英知の光を出した効果でカードを1枚引き、荒野の保安官が手札に加わった。
「コマンダー・レギアスで魔装の女王を攻撃する!」
俺のコマンダー・レギアスが田丸の魔装の女王を攻撃し、魔装の女王は破壊されてなくなった。
「ターンエンドだ!」
続いて田丸のターン。田丸がカードを1枚引く。
「ならば我は連続魔法を決めてやろう!」
田丸はマジックカード、血の覚醒を出した。血の覚醒の効果によりアルカードに2ダメージ加わってHPが13に減る。田丸はカードを2枚引く。
「続いてマジックカード、ブラッドクロー発動だ!」
田丸がブラッドクローを場に出した。ブラッドクローの効果「自分に2ダメージ与え、相手のユニット1体または相手のリーダーに3ダメージを与える」によりまずアルカードに2ダメージ加わってHPが11に減る。さらにエリザベスにダメージが3加わってHPが17に減る。
「さらにブラッドクローを発動だ!」
ブラッドクローをもう1枚出し、アルカードに2ダメージ加わってHPが9に減る。
「あ!田丸くんがブラッドレイジ状態に入っちゃった!」
早川さんが試合の状況を見て驚いている。ヴァンパイアはHPが10以下になるとブラッドレイジ状態になり、追加効果が発動するのだ。
その後エリザベスに3ダメージが加わり、HPは14に減った。
「さらに地獄の処刑人を召喚だ!」
田丸の場に地獄の処刑人が現れる。攻撃力4、HP4のユニットだ。地獄の処刑人の効果「このユニットが自分の場に出たとき、自分に2ダメージ」によりアルカードに2ダメージが加わり、HPが7に減る。
「地獄の処刑人の奥義発動だ!」
「少し本気を出すとしよう。」とアルカードが不敵に微笑み、田丸が出した地獄の処刑人が奥義を発動させた。攻撃力が2増えて6、HPが2増えて6になる。
「地獄の処刑人でコマンダー・レギアスを攻撃だ!」
地獄の処刑人が俺のコマンダー・レギアスを攻撃する。相打ちとなり地獄の処刑人もコマンダー・レギアスも破壊されてなくなってしまった。
「ターンエンド」
お互いの場には何も残っていない。俺のHPは14、田丸のHPは7。ブラッドクローの連続発動によりHPが大きく減った。
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私は、マコトがピースキーバー・ヴィンセントを召喚して奥義を発動させ、魔装の女王を破壊するのを見てただ圧倒されていた。マコトがピンチを乗り越えたのを見てちょっと安心した。
田丸くんのターンになり、血の覚醒、ブラッドクロー2枚を連続で発動させて自分にダメージを与えながらもマコトに大ダメージを与えたのを見て手に汗を握った。ナナちゃんが「あ! 田丸くんがブラッドレイジ状態に入っちゃった!」と言うのを聞き、緊張が走る。
その後田丸くんは地獄の処刑人を召喚して奥義を発動させ、ピースキーバー・ヴィンセントと共に破壊されたのを見てなんとも言えない気持ちになった。マコトのHPは14に減っている。
「マコト、大丈夫なの……? HP、結構減ってるよ……。でも田丸くんのHPも7しかないよね……。マコト、勝てるよね……?頑張って!」
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6ターン目。
「カードを1枚引く!」
今度は鏡の魔女が加わった。
「エリザベスの補助効果『自分のリーダーは自分のドローフェイズが終了したとき、デスペル1枚を手札に加える』により、マジックカード、デスペルを1枚手札に加える!」
俺の手札にデスペルのマジックカードが加わった。相手のユニット1体を指定し、その補助効果を無効にする。さらに3枚発動させるごとに相手のユニット全員と相手に3ダメージ与える効果もある。
「アイアンゴーレムを召喚する!」
俺の場にアイアンゴーレムが現れた。攻撃力3、HP5のユニットだ。
「アイアンゴーレムでダイレクトアタック!」
俺のアイアンゴーレムが相手のアルカードに3ダメージを与え、アルカードのHPが4に減った。
「アイアンゴーレムの効果『自分のターン終了時、アイテムカードメタルバギーを1枚自分の場に出す』を発動させてターンエンド!」
俺のアイアンゴーレムの後ろにアイテムカードであるメタルバギーが1枚登場した。そのまま俺のターンを終える。
田丸がカードを1枚引く。
「マジックカード、闇の嵐を発動だ!」
田丸のマジックカード、闇の嵐の効果によりまずエリザベスに3ダメージが加わってHPが11に減る。続いてアルカードに3ダメージ加わってHPが1まで減る。さらにアイアンゴーレムに3ダメージ加わりHPが2に減る。
「とどめだ!ブラッドクローをくらえ!!」
田丸がマジックカード、ブラッドクローを出したのを見て俺と早川さんは「あっ」と口にした。ブラッドクローの効果でアルカードに2ダメージ加わり、HPが-1になってしまったのだ。
「貴様の力を認めねばならんな……。」
アルカードはそう呟いて消滅した。
6ターンにわたるマジックワールドのバトルは相手の自滅という呆気ない結末を迎えて終わった。
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私は、マコトがアイアンゴーレムを召喚して田丸くんにダイレクトアタックを決め、HPを4まで減らしたのを見てマコトの勝利を確信した。マコトが勝利に近づいている。
田丸くんのターンになり、闇の嵐を発動させてマコトとアイアンゴーレムにダメージを与えたのを見て不安になった。しかしその後田丸くんがブラッドクローを発動させて自分のHPを-1にしてしまったのを見て、思わず驚いた。マコトとナナちゃんが「あっ」と口にした。田丸くんのアバターであるアルカードが消滅したのを見て、私は顔がほころんだ。
「マコト、勝ったの……? 田丸くん、自分で自分を……? でもマコト、勝ったんだよね……? やった……! マコト、すごいよ……。カナ、ずっとドキドキしてたんだよ……。マコトが勝ってくれて本当に良かった……。カナ、マコトの事ずっと信じてたよ……。やっぱりマコトは強いね……」
私はiPadの画面を見ながらホッとした表情でバトルの結果を確認していた。田丸くんが自滅という形で負けたことに少しだけ驚いていたが、マコトが勝ったという事実に心から喜んでいた。私はマコトの大事な人であることを改めて強く意識していた。田丸くんとの賭けに勝ったことで私が田丸くんのものにならずに済んだことに心から安堵していた。
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「これで終わったぞ。カナの事は諦めてくれ。」
俺は立ち上がり、田丸の方を見る。カナが立ち上がり、俺の横に立つ。
田丸はしばらくこの結果を呆然と見ていたが、勢いよく立ち上がると、
「うおおおおおお!! 3000年ぶりに負けたああああああ!!」
と大声で叫んで教室を飛び出してしまった。
「結局何だったんだあいつは……」
俺はただ呆れていた。
「なんかガンガンいこうぜって感じだったねー。カナちゃんはどうだった?」
早川さんがカナに尋ねる。
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私はマコトが立ち上がって「これで終わったぞ。カナの事は諦めてくれ」と田丸くんに告げたのを聞いて、嬉しくなった。マコトの横に立ち、マコトのそばに寄り添った。田丸くんが「うおおおおおお!! 3000年ぶりに負けたああああああ!!」と大声で叫んで教室を飛び出したのを見てただ呆れていた。マコトが「結局何だったんだあいつは……」と呟き、本当にそう思った。
ナナちゃんが「なんかガンガンいこうぜって感じだったねー。カナちゃんはどうだった?」と尋ねてきたので、私は少し考えて苦渋した表情で答えた。
「うーん……なんかすごく怖かったよ……。田丸くん、本気でカナのこと、自分のものにしようとしてたから……。でもマコトが勝ってくれて本当に良かった。カナ、マコトの事ずっと信じてたよ。マコトが負けるわけがないって、ずっと思ってたよ。でもちょっとだけ……ドキドキしちゃった。もしマコトが負けちゃったらって……。でもマコトが勝ったから、もう大丈夫だよね?」
私はマコトを見て少し恥ずかしげに言った。マコトの腕に自分の腕を絡ませ、改めてマコトに寄り添った。マコトと一緒にいられることに心から幸せを感じていた。私はナナちゃんの方を見て、少しだけ照れて言った。
「ねえ、ナナちゃん……カナ、マコトに守ってもらっちゃった。やっぱりマコトはカナのヒーローだね……。カナ、マコトの事、大好きだよ……」
私はマコトの方を見て少しだけ甘えるように言った。
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「俺もカナのことが大好きだよ。」
俺とカナがイチャイチャしている様子を早川さんが何とも言えない表情で見つめている。
「……ただ人前だからな? のろけ過ぎるのは少し自重しようか?」
俺はカナにそっと耳打ちする。
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私はマコトが「俺もカナの事が大好きだよ」と言ってくれたのを聞いて顔を真っ赤にした。マコトの言葉に心から嬉しく思った。ただナナちゃんが何とも言えない表情で私たちを見つめているのに気づいて、恥ずかしくなった。マコトが「……ただ人前だからな? のろけ過ぎるのは少し自重しようか?」と耳打ちしてきたのを聞いて、「あっ……」と小さく声を上げ、マコトの言葉に頷いた。自分が少し調子に乗り過ぎていたことに気づき、反省した。私はマコトの腕から自分の腕を放して少しだけ距離を取った。それでも距離を縮め、マコトのそばに寄り添い、マコトに少しだけ甘えた。
「うん……ごめんね、マコト。ちょっと嬉しくて調子に乗っちゃった……。ナナちゃん、ごめんね。でもマコトが勝ってくれて本当に嬉しかったんだよ……。カナ、マコトのことが本当に大好きだから……。これからもずっと一緒にいようね、マコト……」
私はマコトの方を見て少し恥ずかしく言った。それからナナちゃんの方を見て少しだけ照れた。私はナナちゃんに気を遣いながらも、マコトへの愛情を抑えきれなかった。




