スライムだけど勇者狩りを続けて数百年。しかし今回の勇者は何かが違う。
俺はスライムだ。しかし人間よなめるなよ。俺はただのスライムじゃない。レベル100のスライムだ。俺は何百年もの間、ここ旅立ちの草原で新たに旅立つ勇者を狩り続けている。俺がいる限り勇者が魔王様の元へたどり着くことはおろか、ここを抜け最初の街へと向かうこともできない。
今日も旅立ちの村から新たな勇者が旅立つとの情報を得た。そして今、勇者を狩るために村のすぐ外で待ち構えている。
今回も盛大な見送りだな。すぐに俺に狩られて終わるというのに。学習しないやつらだ。だが、何故だろうか今回は今までに感じたことのない胸騒ぎがする。まぁ、俺はレベル100だそんなこと気にする必要はない。
ほれ、そう思ってれば早速勇者が村を出たぞ。やはり胸騒ぎは正しかったのか?奴は今までの勇者と雰囲気が違う。馬に乗り、悠々と村を後にする。何故だ?今までの勇者はどこか自信なさげな雰囲気を漂わせていたのに奴からはどこか余裕を感じる。だが大丈夫だ。何度でもいうが俺のレベルは100だ。そう言い聞かせると俺は勇者の前へと立ちはだかった。
「よぉ新たな勇者。突然だがお前の旅はここで終わりだ」
「君かい?旅立ちの草原に居座るめちゃくちゃ強いスライムって」
勇者は俺の正体を察していながら臆することなく言った。
なんて奴だ。やはり今までのやつと違う。
「よく分かってるな。分かっていながら恐怖で慄くことのないその胆力は認めよう」
「君になんか認められる筋合いはないよ。君はこれから僕に狩られるんだからね」
こいつ本当に何も分かってないな。今に見てろよ。
「俺がスライムだからってなめんなよ!」
「なめてなんかないよ。勇者がスライムに負けるなんておかしいだろ。君こそ勇者を舐めてるだろ」
「そうか、じゃあ見せてやる俺の本気をなぁ」
俺は渾身の体当たりを披露する。
どうだ、見切れないだろう?
俺はこの体当たりで数多の勇者の頭を砕いてきた。
「やっぱり、皆が言ったとおりだ」
そう言うと勇者は自らの顔の前に剣を構えた。
なに!?
勢いを殺そうとするももう遅かった。
俺の視界は2つに割れた。
この俺がこんなあっさり?
いや、そんなことはない。これは夢だ。夢のはずだ。
しかし、そんな俺の思いも虚しく激しい痛みが俺を襲った。
これは現実だ。
体が動かない。抗う術がない。
「君は確かに強いのかもしれないけれど僕ら人間も馬鹿じゃない。多大な犠牲を出しながらも君がどんな動きをするかを何百年もの間研究し続けていたんだよ。その集大成が僕だ。ただ、何百年も僕たちの旅立ちを妨げてきた君の実力には感服するよ」
勇者は以外にも敬意のこもった視線をこちらに向けてきた。
「俺は所詮スライムだったってわけか......」
「そうだね。恐らくレベルは100だったんだろうけど賢さがレベル1のままだったんだろうね。やることが毎回同じだなんて」
「ふっ。むかつく新米勇者だ。俺を倒したくらいで調子に乗るなよ。俺は所詮スライムだ。レベル100といえども魔王軍には俺よりも強い奴がいくらでもいる。お前はここで終わらなかっただけだ」
俺は薄れゆく意識の中で最後に脅しをかけてやった。
「君より強い敵か...どの程度のもんだろうね。スライムとはいえレベル100だ。大分経験値はいただいたから僕もこの一戦で大分強くなったからなぁ。苦戦するかな?」
ーーーーーー
1週間後、新米勇者は旅立ちの村へと帰ってきた。魔王を討伐して。
あまりに早い帰還に村人は驚いていた。
しかし、その早さは当然のものかもしれない。
何故なら彼は誰よりも勇者を狩ったスライムに勝ったのだから。




