ヨークの遺産と白銀の少女~エピローグ~
「あああああーーーーーい!!!」
スピーカーの向こうで号泣するハクを完全に無視しながらレポートをまとめるセン。
「か、カザマ様がぁ、りりすとぉ……うわーーーーーーん。」
「なるほど婚儀を結んだか。考えたな。」
今日一日の経過を報告する。
それはハクからしてみれば、自分の傷心をもう一回抉るような行為である。
「リリスのお父さんは軍の偉い人になっちゃうし、カザマ様は結婚しちゃうからキス出来ないっていうし……あああーい!!」
「なるほど、軍の総統と政府の首長補佐。親子を対比に置く事で蛇族を抑え、しかも蛇族の後ろにいる武器商人も丸めこんだか。」
淡々とレポートをまとめるセンにハクがかみつく。
「このもじゃら毛!ちょっとは慰めろ馬鹿っ!!!」
「気をつけろつったのに、勝手に惚れた腫れたを繰り返してるお前が悪い。」
ばしっと言い切ると、またレポートを書き進めるセン。
「光速帯域に入るまで、せいぜい泣き腫らせ。」
「酷いっ!」
「はい、44連敗。」
「今度こそ運命の人だと思ったのにぃいいぃー!!!」
ぶわっとハクは涙をためて叫ぶ。
何度目だ、その科白。
「高貴な感じの声だったし、対応も柔らかかったし、何よりキスされたし……。なのに、なのになのにぃいいいー!」
「はいはい。ほっぺにキスして貰えて良かったですね。じゃ、次の対応惑星の話するぞー。」
「浸らせろ!傷心のあたしは悲しみに浸らせても貰えないのか!」
「次の惑星はー」
「覚えとけよ!あたしの復讐は恐ろしいんだからねっ!!!馬鹿もじゃー!」
数週間後、ハクがスリープモードから光速移動を開始し、センはセンでレポート提出後の人心地を味わっている時だった。
「おい。貧乏神。届けもんが来てるぞ。」
ラムジフが面倒臭そうにセンの部屋までやって来る。
「お前が部屋を出るなんて珍しいな。おい。」
「急ぎ便で来てたから、早くやろうと思ったんだよ。有り難く思え、この野郎。」
そう言って、ラムジフは箱を投げ捨てる様に置いて出ていく。
「あ、箱の中身は気をつけろよ。特殊なカラクリ箱らしいからな。」
ふふふ、と笑ってラムジフは去っていった。
「なんだそりゃ。ただの箱じゃねーか。」
差出はハク。そして、発送元の惑星は今回対応したサンザン。
「ん?」
ガサガサと、何も考えずに開けた瞬間。
「!!!!」
声にならない悲鳴を上げる。
『覚えとけ』
ハクの言葉がよみがえる。
いつからあいつはこんな用意周到な……。
全身鳥肌を立てながら、箱から沸いて出てきた虫を何とか箱に戻そうとするセンは、ひらりと落ちてくる紙に目をやる。
『今度から飯の情報だけは真っ先に寄越せボケ!』
「そこからかい!!」
黒い悪魔を雑誌でたたきつぶしながら、センは叫んだ。
「あの馬鹿ウサギめーーーーーーー!!!!」
と言うわけで、第1話、終了でございます。
1か月半にも及ぶ長い連載に辛抱強くお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
しばしのお休み(2週間くらい…かな?)を頂いて、番外編を書きたいと思います。
うふふ。あの人とあの人の話とか。むっふーvvv
と言うわけで、一旦完了としておきます。
感想&誤字脱字などの御指摘、お待ちしております!