ヨークの遺産と白銀の少女~狐の嫁入り~
前日の夜の無風は何処へやらと、柔らかい風が覆う『箱』の前にハクは立っていた。
メンバーは、いつもの4人…リリスとシズク、カザマとハク。
ボア達は昨日の対応で納得したらしく、本日は来ないと言う事だった。
「ねぇ白いの。無風は昨日体感したけどさ。『蒸す』ってどういう事よ。」
リリスは、2日にかけて面倒臭い、とでも言いたげな顔でハクを見やる。
「まぁまぁ。見てなよ。面白いものが見れるはずだから。」
ハクは、ぐっと屈むとシュっという音ともに上に飛び上がる。
「いつもながら、驚きますね。あの靴には。」
リリスの隣に居た、カザマが感嘆の声を上げる。
「あれ、靴の機能なの?じゃ、あたしらが拿捕した時、マジであの子は逃げれたんじゃないの!」
「だから、あの方はお優しいから私を置いていかなかったのですよ。リリス殿。」
シズクは、眩しそうに上を見る。
「今回も、優しさに縋って残ってもらえば良いじゃない。」
見透かしたような言葉をリリスが吐き出す。
3人に静かな沈黙が訪れ、そして
「きたよ!」
ハクが、そう叫んだ瞬間に
サワァアァ。
「これは……。」
空は、完全に晴れ渡り、雲ひとつない。
「天気雨……。」
小雨のような、柔らかな雨が4人と遺跡を包んでいる。
「ほら。狐の嫁入りだよ!」
笑ったハクは天に手をかざして、嬉しそうにしている。
「ああ……。神託を受けた場面は、ここだったのか……。」
シズクが、ハクを見ながらひとりごちる。
小雨は、日の光と熱によって白く光りを帯び、ハクの姿をギリギリの姿で捉えるのみ。
そして、彼女は天を仰ぐように手を広げ、楽しそうに笑っている。
「シズク様……。」
カザマが、シズクを気遣うように傍に寄る。
「シズク、あんた泣いてるよ?」
「え?」
顔に伝う涙にも気付かず、シズクはハクを見ていた。
涙の理由は、分からない。
いや、分からないようにしたい。
が、もう無理だ。
「短期間の間に、こんなに人に惹かれてしまうものなんですね。」
シズクは、涙も拭わずにつぶやく。
カザマとリリスは、彼の葛藤と思いを静かに見つめるだけだった。
「ほら、綺麗だね。キラキラ光って。楽しい!」
ハクが、嬉しそうに叫んでいる。
更新が遅くなって申し訳ありません。
と言うわけで、明日も遅くなるかもしれませんが、多分今週中にエンディングを迎えるので、もうしばらくお付き合いください。