表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/39

ヨークの遺産と白銀の少女~技術対応~

ザァアア


上から、大量の液体が『箱』に降り注ぐ。

そして、その液体を『箱』の母体である砂が急速に吸い取っていく。

「こ、これは……?」

「これは、あたしらの主食でもあるパンズの酵母菌をサボテンの水分で発酵させたものだよ。」

ナミが、カザマに応える。

「この砂を分子の様に整列化させるには、何かしらの酵母の働きが必要だと思ったんです。」

ハクは、ゆっくりと上を見上げながら続ける。

「蛇族のパンズって、多分粘りが凄く少ない小麦から作られてて。」

その言葉に、ナミがうなづく。

「その粘り気を補うために、このサボテンの液体と、整列化させる働きがある酵母が作られた。」

「なるほど……食物の酵母をこのような媒体に使うとは……。」

失われた文明の恐ろしさに、カザマは寒気すら感じる。

「でも、それだけじゃ足りないの。」

「え?」

「整列化させたあと、高熱が必要なの。あと、蒸す力っていうのかな。水分?」

「水分……こんな、雨も降らない地域で……ですか?」

こくりとハクは頷くと、兎に角、と言葉を発したうえで続ける。

「明日の朝、もう一回此処に来て最後の仕上げをします。」


その言葉に、リリスは戸惑う。

「え?もうこれで終わりじゃないの?」

「人の話聞いちゃいないんだもんなー。リリスは。明日、朝日の熱と……うふふ。後は明日の朝のお楽しみ!」

「何を偉そうに!人の話を聞いてないのはあんたらの専売特許だっての!」

「別に立ち合わなくても良いんだけどさ。でも、どうなるか最後まで見てみたいじゃない?」

「まぁ、最後まで見るべきは見るべき……よね。」

「そんな訳で、皆お休み!あ、手伝ってくれたおばちゃん達もありがとー!」

ぶんぶんと手を振って、ハクはぐっとしゃがんで飛び跳ねる。


ヒュン


という音速の音とともに、ハクは上に待機させていた宇宙船の扉蓋に飛び乗っていた。

「明日まったねー!あ、リリスのおかーさん、パンズ明日もよろしくー!!!」


蓋が閉まりかけるまで、にぎやかなハクの声が辺り一面に木霊した。



「あの子……いつの間に船を……。」

「流石白銀様……。我らの行動を色んな方面から予測していたんでしょうね。」

カザマが関心したようにハクが消えた闇を見つめて言葉を発した。

「どういう事だ?」

ボアが呆然と上を見ながら言葉を発する。

「多分……ではありますが、彼女は万が一を色々想定していたんでしょう。」

「自分が囚われるとか?」

「それもありますし、双方の争いが勃発する事も考えたのでしょう。」

つい数日前まで、睨みあいと殺し合いを平気で行ってきた二つの部族が一同に会すと言う事は、ともすると自分の命の危険所か、遺跡の崩壊にもなりかねない。

「彼女は、多分いつでも自分が避難できるように、そしてその状態を克明に報告できるように宇宙船を頭上に待機させていたのではないでしょうか。」

宇宙船には通常、外部モニタがある。通常は外部モニタは機体の破損や状態を確認する、または着陸時の周囲の確認などを行うために使用されるが、時として外部モニターを録画させ、周りの状況などを記録する為にも使われる。

「脅しと、逃げ道の確保って訳ね。ただのお馬鹿ウサギって訳じゃ無かった訳だ。」

後ろで二人の会話を聞いていたシズクは、ハクの言っていた『セン』という人物を思い出していた。

もしかして、すべてこれもその人の指示なのだろうか。それにしては、すべてが完璧すぎる。

彼女の行動力、そして洞察力。

それを全てセンという人物が吸い上げ、消化しこの一連の作業を組み立てたのかもしれない。


「シズク、何ぼーっと突っ立ってるの?帰るよ。」

リリスの言葉に我を取り戻したシズクは、はいと笑って上を見上げる。


いずれにしても、その人以上に白銀様をお守りできる人は居ないと言う事。

ならば、自分は笑顔で彼女を見送らねば。


「明日、どうなるか楽しみですね。」

呑気な言葉が出たものだ、と自分でもびっくりするくらい、シズクは軽やかにその場を後にした。



金曜日は更新できずすみません。

と言うわけで、もう今日は一挙に2話更新します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ