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ヨークの遺産と白銀の少女~本当の対応依頼~

夕暮れ。

朝焼けとは逆の方向に照らされた壁が、ゆらりとハクを起こした。

「んぁ……?」

「お気づきになられましたか。白銀様。」

天蓋がつるされたベッドの上、ハクはゆっくりと目を開ける。

薄い膜の向こうには、シズクが静かに本を読みながら座っていた。

「んぉ……あれ?あたし……なんで?」

「なんでも、市場で突然気を失われたとか。リリス殿がそのまま白銀殿を抱えて連れてきて下さったんです。」


最後の記憶の断片は、カザマが自分の頬に唇を落とした処まで。


思い出すとカカカカっとハクは赤面する。

「し、シズクはずっとここに居たの?」

対面を取り繕うようにハクが言葉を発する。

「いえ、こちらに来たのはつい先ほどです。先ほどまではリリス殿がずっといらっしゃられて。」

リリスにも心配をかけてしまった。申し訳ない気持ちでハクはぎゅっと布団を握りしめる。

「なんでも、カザマが白銀殿に無体を働いたため、お倒れになられたと。」

「い、いやいやいやいや!」

あれを無体というのか、どうなのか。

むしろラッキーというか、そういえばリリスのかーさんがプロポーズだなんだの……。


思い出しただけでまた一気に赤面する。


「白銀殿。私は、白銀殿にもう一つ、お願い事をしなければなりません。」

ハクの表情が薄い膜の向こうから読み取れないからか、シズクは淡々と言葉を続ける。

「お願い事?」

「……あの遺産の開封は、やめていただきたい。」

「ええええ?」

ハクの仰天する顔とは別に、シズクは到って冷静に言葉を続けた。


「ヨーク様が居た時代、この惑星には唯一の王朝があり、私の血族……巫女の一族が長となり、平穏に暮らしていました。」

ゆるり、とシズクは立ちあがる。

「あの王族の遺産……ヨーク様が作られた遺産を守る箱は、何かしらのアンチテーゼのような気が、ずっとしていました。」

「あ、アンチテーゼ?」

「王家が滅びて、もはや1000年の時が経つと言うのに、誰もあの遺産を開けなかった。いや、開けようとしなかった。」

シズクは、ハクの言う『砂の周期』があるとするなら、何百年かに1度はこのような遺産が目に見える形で姿を現していたのではないかと推測した。が、何処にもそんな記述も無く、また口述も残っていない。

以前、白銀の祖母が対応した事があるという記録がわずかに残っている程度だ。

では、何故誰もあの遺跡を開けようとしなかったのか。

また、開ける事と閉じる事に何も記録が残っていないのか。

「あの遺跡を開けると言う事は、即ち惑星として、この国が滅びても良いのか、という示唆にも感じるのです。」


金銀財宝ではなく、武器を納める。

武器とは破壊。破壊と言う事は、血を流し、相手を滅ぼすために使うもの。

それをわざわざ重厚な作りのものに閉じ込めておく。

それは、案にこの箱を開けるなと。開けると言う事は国を滅ぼす気ではないかという。

そういう暗示ではないかという考えに至った。

色んな口伝が残って要るが、真偽は別として一貫して居る事は中身は武器だということのみ。

ならば、余計そう考えた方が正しいのではないか。


「センの言った通りになったなぁ……。」

「白銀様?」

「あ、センってのはさ、あたし専属のサポート役の奴なんだけど。」

ポリポリと頭を掻きながらハクは続ける。

「本当にむかつく奴なんだけど、こういう推測は外れた試しがないんだよね。」

「と、申されますと……。」

「センがね。『馬鹿な首長じゃなかったら、この箱を開けたいと絶対言わない。もし言ったとしたら撤回するだろ。』って。」

シズクは、一瞬ぞくりとした。

白銀の先見の目は、そのセンと言うサポートの言葉から来ていたものだとしたら、今まで自分達はそのセンという人物にどれだけ振り回され来たのだろうか。

「センという方は、何処まで想定されていたのでしょうかね……。」

ぽつり、とシズクがつぶやくとハクはそれに応えるかのように口を開く。

「もし、このまま争いが勃発する可能性を秘めた状態の場合は、サポート対象外として宇宙政府に対応を要請しろとか言ってた。」

「!!!」

シズクは、その言葉に背筋に凍るものを感じていた。

技術者が対応を拒否する。そしてそのありのままを宇宙政府に報告したとしたら。

遅かれ早かれ、リリスが言う『蠍族も蛇族も滅びる』状態に陥っていたかもしれない。

リリスはそんな事を先見していたとは思えないが、センという人物はそこまですべて見越して動いていたというのか。

「まぁ、そんなことには絶対ならないって、言ったんだけどね。」

「白銀様?」

「だって、シズクはちゃんとやれる男だって、皆知ってるからね。」

薄い膜の向こうで、ハクはにっと笑った。


この信頼に、ずっと応えなけれいけない。


「有り難うございます。白銀様。さぁ、お時間も近い。そろそろお支度を……」

「白ウサギ!そろそろ起きろ!」

リリスが部屋に飛び込んできた。

「あ、リリス!ごめんね、迷惑かけた!!」

「迷惑はあんたじゃなくて、あの女ったらしに掛けられてるっての!!!!」

手をグーに握ってリリスが叫ぶ。

「それもこれもどれもなにもかも……元を正せば全部あいつが……っ!!!きー!!!」

リリスの怒りは収まりそうもない。

ハクとシズクは、顔を見合せて笑う事しかできなかった。


1か月以上にわたるお話でしたが、ようやく終わりが見えてまいりました。

もう少しのお付き合いをお願いいたします。


ちなみに、明日あと明後日、諸事情があり、更新できるか分かりません(ぉぃ

なるべく頑張ります。がんばり…。

出来なかった場合は、日曜日に一気に3話更新しますので、宜しくお願いします。

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