ヨークの遺産と白銀の少女~秘密箱~
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担当惑星 サンザン
国政情報 現在国政への不満と民族間との諍いにより、内戦が勃発。
国政を牛耳っている蠍族といわれる民族と、蛇族といわれる民族とが部族を隔てた争いを行っている。
現在は一時停戦状態を保った状態になっているが、その状態は一触即発状態とも言われている。
対応依頼 蠍族の首長一族より依頼あり。ヨーク一族の長に直接の依頼があったものとみられる。
対応対象 ヨーク生存時に作られたといわれている『秘密箱(パンドラボックス)』の仕様確認及び修繕。
箱の中は伝承にのみ残された過去の王族が残した遺産があるといわれている。
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「あのモジャ毛め!!内容はこれだけか。あの駄目男(ダメンズ)が!!」
『いわれる』『みられる』『されている』の予想3拍子。
こんな糞サポート内容は要らないんだよっ!!
ハクはぶち切れながら資料を見やる。
明らかに手抜きじゃないか。あの野郎。
内紛や戦争が起こっている地域に技術者(テクニカル)を送る事自体、特例中の特例だ。
しかも依頼者は紛争の対象者、蠍族の首長一族とやらだ。
自分の祖母…一族の長が考えなしにこの修理依頼を受けたとは到底思えない。
さらに言えば『秘密箱』が修理対象ときたもんだ。
絡繰(からくり)物の神と言われたヨークが作った『秘密箱(パンドラボックス)』
どんなものだろう。
ハクは全身に鳥肌が立つような興奮を覚えた。
ヨークの製品だけを修理するのが一族の務めではない。
歴代のヨーク一族が作ってきた作品をも修理する。
ハクもこれまでヨーク自身が作った作品を修理できたのは両手に余る程度である。
だからこそ、ヨークと他の一族が作った作品との違いがわかるのである。
神の子と称されたヨーク。
感服させられるほどの技巧に腹が立ち、最後は結局鳥肌が立つような興奮と涙が出るような感動を与えさせられて終わってしまう。
悔しいほど、美しく素晴らしい旋律の作品。
「秘密箱…ね。」
秘密箱とは、元来宝石や貴重品を隠すために作られた箱。
そういう意味では王族が遺産を隠したというのも頷ける。
箱の外側のパーツをずらしたり、押したりを何度か繰り返すことで開くようになっているものが秘密箱と称される。
滑りや構造の仕様から木製のものが多く、サイズも手のひらサイズのものがほとんどだ。
それを修理する……というのは開かなくなったということか、果たして…。
ヨーク時代に作られた絡繰箱。よって電気が通っていたとは思えない。
そして、ヨーク時代に作られた『箱』がどのように現存しているのか。
木製であればほぼ朽ちかけているんじゃないのか?
中身を取り出したいだけなら、壊せばいいものを…。
ハクは考えることをやめ、かぶりを振った。
考えても仕方ないの。なぜなら、稀代の技工士ヨークの作品なのだから。
「それにしても……あのモジャラ毛男め……あとで覚えておけよっ!!」
ハクは切られたスピーカー越しにまたも文句を始めたのだった。
「ッヘックショイ!!」
「きったねぇなぁー!!おい!!」
資料室と呼ばれる古びた書庫の中で、センともう一人の男が資料を探していた。
「いやいやいやいや。俺のくしゃみはほら。神の息吹みたいなもんだから。」
「お前が神様なら、俺は創造主だよ。」
しっしっ!と手のひらでセンを追いやるように、男が言い返す。
「きっとどっかの子猫(かわいこ)ちゃんが俺の事を褒めてだな……。」
「うるせぇ貧乏神。いいからこれ見ろ。」
広げられた資料を見ながら、センは愕然とした顔をした。
「お前、これ秘密箱っていう規格(サイズ)と仕様じゃねーだろ。」
ここまででセンのキャラ元が大体誰かお気づきになった人が居そうな予感で御座います。
ちなみに、ここに出てくる男も追々誰がキャラ元か分かります…www
いやぁ。影響されすぎ。あたしw