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ヨークの遺産と白銀の少女~シズクの恋と~

「そうですか。そのような事を白銀殿が。」

「あの子にゃ危機管理ってものが欠けてると思うよ。あたしは。」

「いや。逆に危機管理がしっかりしているからこそ、市場に行ったのでしょう。」

カザマが横から口を挟む。

「市場は蠍族や蛇族だけでなく、渡航者なども使用します。そこで何かもめ事を起こすというのは双方にとって厄介です。」

「そうですね。カザマ。彼女は多分情報を仕入れるためと、私達に接触するため、あえてあの場に来たのではないかと思います。」

「現にリリス殿の母上でもあるナミ殿に接触していたことからも、あえて危険を冒してでも部族長クラスのメンツと接触したかったと考えた方が良さそうです。」

「それにしたって危機管理無さ過ぎだよ。あれじゃ、いつでも捕まえてくださいって言ってるようなもんだわ。」

「リリス殿はどなたに対しても心配性なんですね。」

カザマが軽口を叩いて冷やかす。それにギロリと睨んで対抗するリリス。

「彼女は特殊技能だけでなく、ご自身でカスタマイズしたアイテムなども装備されているみたいですから、早々捕まることはないでしょう。」

「私もそう思います。昨日の拿捕は、私を置いていかないようにするため、わざと囚われたのでしょう。彼女は優しい方だから。」

ゆっくり、ハクを思ってシズクが微笑む。


「まぁ、ともあれ首長だってばれちゃったねぇ。シズク。」

折角黙っててあげたのに、とリリスがこぼす。

市場で『私の事は黙っていてください』とお願いされてから、そういうニュアンスの言葉は言わないようにしていたし、早々に自分の身元は明かした方が良い、と言ったりもしてきたが、結局ハクが自分でシズクの身分を解明してしまった。

「……彼女ほど聡い方なら、気づかれるのも時間の問題だと思っておりました。」

「聡い。あの子が?」

リリスがぎょっとした顔でシズクを見た。その顔は明らかに『お前頭大丈夫か?』と物語っている。

「あの行動にしても、裏をかく行動を取っても賢い方だと思います。私達の気を抜く術も持って居る。」

「そうだね。白銀殿は本当に凄い方だ。」

感嘆の息をつき、シズクがうっすらと笑う。

その微笑みに、リリスははっとした口調で問い詰めた。

「あれ。シズクあれかい?あの白ウサギに惚れちゃった?」

「ななななななな!!!そんなことは御座いません!」

真っ赤になって反論するシズクに対して、大人二人は苦笑いを浮かべるしかない。

「分かりやすいねぇ。」

「分かりやすいですね。」

「違いますってば!……それに、あの方はこの仕事が終われば、また次の地へ行くのですから。」

一瞬、静かな空間が流れる。

「私には、勿体ない方です。」

シズクの言葉に、リリスが嫌味を言うような口調で言葉を発する。

「おやおや吹っ切りきれてもいないのに、別れの呪文を唱えちゃってまぁ。」

「まぁ、リリス殿よりは相当マシだと思いますけどね。白銀殿は。」

「ほー。タラシのあんたにそこまで蔑まれちゃったら、こっちも黙っちゃ居られないね。」

「私も、一度リリス殿にはシズク様への対応についてきっちりみっちりお話したいと思っていたんですよ。」

にっこりと笑うカザマと、額に青筋が浮かんでいるリリスの間には、静かに火花が散っているように見えた。

「と、とにかく白銀殿が、明日どういう姿勢で来るのか分かっただけでも由としましょう。」

シズクは、静かに外を見やる。

青い空に流れの速い雲が、旅立つ前のハクを探しているように見えた。




「お前にしちゃ上出来だ。」

「上出来って……こっちはもうね、心臓バクバクだったんだからね!!!」

宇宙船の中では、ハクがパンズをかじりながら怒っている。

「あたし、明日旨くやっていけるかなぁぁぁ……。」

ハクのため息は、宇宙船の中に静かに広がって行った。

「まぁ、今頃蠍族は喧々諤々としてるだろうな。あのカザマとリリスとやらは水と油っぽいし。」

「水と油どころか、龍と虎だよ。勿論、カザマ様は優雅な龍だけど。」

「お前まだ頭浮かれたままなのか。めでたすぎるよ。」

「なんか、同じような事を今日リリスにも言われた気がするけど、多分気のせい。」

「この惑星で多分一番常識人なのは、リリスだな。絶対……。」

宇宙船の中でそんな会話が繰り広げられているともしらず、地上の王宮のにぎやかさは風に吹かれて歌のように広がっていた。

拿捕された際にリリスが話した言葉、

「يبدو أنك لا للكشف عن هوية من نفسك.」

(貴方は身元を明かすことだ。)


「تبقي له بالمرصاد. تبقي عينيك مفتوحة」

(こいつらから目を離すな)

という言葉がありました。

やっとこネタバレでございますw;

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