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ヨークの遺産と白銀の少女~シズクの正体~


「ややややや、やっちゃったよぉおおぉおおー!」

中に入った瞬間、ハクは叫んでいた。

「ちょっとセン!繋がってんでしょ!」

スピーカーに向かってハクが叫ぶ。

「はいはい。音大きすぎますよ-。馬鹿な白い人-。」

センの声がスピーカー越しに聞こえる。

「やっちゃったんだよぉおおぉおおー!どうしたらいい?どうしたらいいと思う?これもうあれ?失恋確定な感じ?いやぁあぁあぁー!!!」

ムンク『叫び』の状態で顔を青くしたり赤くしたりを繰り返しているハクに、センは溜息をついた。

「無事で何よりだよ、で。何が一体どうなったのか、お前の妄想はすっ飛ばして教えてくれる?5分以内の発言で。」



「なるほどね、脳みそ足りないなりに、頑張って粋がって言っちゃったのね。」

「あの発言、完全にあれだよね。丸投げどころか、技術対応放棄扱いになるよね。どうしよう。ああああー。カザマ様に嫌われるぅぅううぅー。」

「それだけの目に遭ったにも関わらず、まだ愛を語るお前がすげぇよ。」

「ああああー。どうしようー。カザマ様は私を迎えに来てくれたのにぃいいぃーーー。」

「あー。それは残念ながら違うと思うね。」

「ああん?」

「カザマは明らかにシズクとかいう奴を迎えに来た。」

「なんで分かるのよっ!」

「軍の量が半端無かったからだよ。下の方見なかったのか?まぁ、見れなかったか。お前は。」

センが宇宙船の外部モニタから見た景色は、明らかに一個の部隊というより、全軍を配して蛇族の居る牢を囲んだところだった。

「一隊程度の軍ならまだしも、かなり全力で小さな所を囲んだってことは、シズクってやつ、相当重役だぜ。しかもカザマ以上に。」

「えー。だってカザマ様、シズクって呼び捨ててたし、シズクはカザマ様って呼んでたよ?」

「芝居かもしれねぇだろ?そんなものはどうとでもなる。しかも、そのリリスとかいう蛇族の女が見知ってるって事は、政府関係者であることはほぼ間違いない。」

「カザマ様のお付きだから側に居て覚えてただけじゃないの?」

「それじゃ『蠍族のお坊ちゃん』っていう呼び捨て方はおかしいだろ。」

「むぅう。」

ハクはイヤーマフを取り、それを咬みながら唸る。

「お前の少ない脳みそで考えてみろ。いいか、リリスってのが『シズクは返す。その代わりハクを寄越せ』と言った。」

「正確には『預かる』だったと思うけどね。」

「言葉尻はいいんだよ。要するに、カザマに対してシズクはハクを取引するに値する人物だとリリスは知っている。」

「部下だから大事って事はないの?」

「無いね。政治の世界で人の命一つを軽く消す部族だ。部下の替えくらい幾らでも居る。逆にお前の替えも居るはずだ。」

「酷っ!あたしが死んじゃったら、絶対ばあちゃん許さないもんね!」

「それは俺も殺されるわ!何にせよ、シズクの代わりは効かないと見た方がいい。とすると、シズクの正体は蠍族の首長だ。」

「ええええぇええぇぇえぇ!!!?ないないないない!だってあいつ超お坊ちゃんだよ!?」


市場に行くのも初めてなら、麦畑を見るのも初めて、しかも人様が差し出したパンも食えな…。


「首長として育てられたとしたなら、そりゃもう相当箱入り娘ならぬ、箱入り息子として育てられただろうな。」

それこそ、市場で売られるような飯も食えないほどに、だ。とセンの声はスピーカーから淡々とした音を響かせる。

「ハク。お前は技術以外全く駄目な馬鹿なのは知ってる。しかしもう少し洞察力があると思ったがな。」

「ううう。ぬかった……。」

「まぁいい。問題はこの後だ。」

「そ、そうだよ!もう、日付変わっちゃって明日になっちゃったけど、明日の夜あいつら全員招集しちゃったんだけど。どうしたらいい訳?」

「どうしたらもこうしたらも。お前なんか考えがあってそう言ったんじゃないのかよ。」

「ない!!!」

スピーカーの向こうで、しばらく沈黙が続き、その後割れんばかりの音が響く。

「どあほぉおおおぉおおーーーー!!!!」

スピーカーの音をとっさに絞って置いて良かったとハクは思った。

「このノミ頭!ウサギに謝れ!土下座しろ!ていうか、俺に土下座しろ!!」

「な、酷い!だってしょうないじゃん!そうしないと逃げれそうにも無かったし!|宇宙船≪ここ≫にも戻れなかったんだよ!」

「それもお前の行動如何だっただろ!俺達がどれだけ心配したと思ってるんだ!」

スピーカーの声は、怒気を孕んだものだった。


本気で怒ってる。本当に怒ってる。


「……ごめんなさい。」

素直に、ハクは頭を下げる。

「次はないぞ。ハク。」

「はい。ごめんなさい。」

「よし。じゃ、この現人神である俺様が、お前に今後の対応を伝授してやろう。」

「……むかつくけどごめんなさい。お願いします。」

「よろしい。」

スピーカーの向こうの声は、偉そうな声でそう言った。


悔しいけど、今日は言うことを聞いてやる。


心配して貰って嬉しいけど、この状態は悔しい。

そんなジレンマを歯痒く思いながら、ハクはセンの言葉に耳を傾けるのであった。


と言うわけで、長い間の複線が漸くほどけてホッとしております。

もうちょっと、複線が続きますが、お待ちください。

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