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ヨークの遺産と白銀の少女~ハクとセン~

「そういえば、お前また振られたって聞いたけど?」

男が、スピーカー越しの女性…むしろ少女くらいの声の主に問いかける。


「……知ってる癖にっ……!!」

少女は、裏目がましく男の声がするスピーカーに涙目でにらみつける。

「今度こそ……今度こそ運命の人だと思ったのにぃぃぃぃー!!!!」


わっと少女はメタルスチーム的な机に俯せる。


「はい、43連敗。」

「連敗言うな!!こっちはいつだって本気なんだぁあああー!!!!」


男は俯せて涙ぐむ少女をモニタごしに見ながら苦笑いを浮かべる。


この少女のサポート役に就いて早半年。

しかし、その間に玉砕した数、およそ14。勿論連敗である。

そして、その前から聞いていた玉砕も合わせれば、43連敗。

惚れやすく、砕けやすいブロークン恋愛体質。それが、このモニタ越しの少女である。


「大体、あんたもあんただよ。ちょっとはさー。手伝ってくれたっていいじゃん。センのケチ。」

鼻水をびびーっとかみながら、少女はこの男----セン、に噛みつく。

その、鼻のかみ方からして、乙女失格だって事を分からせないと駄目なのか?とセンは心の中でごちたあと、言葉を選ばずしゃべり出す。

「俺は、お前の恋をサポートするために居るわけじゃねーっつの。」

「技術者の仕事を潤滑にするためなら、なんだって手伝ってくれるべきじゃない?恋だろうが、なんだろうがさ。」

「馬鹿言え。『あの声!出会った!運命の人!!』なんてな。毎回声で一目惚れして帰ってくる馬鹿の恋路なんて、終わりが見えてんだっつぅの。」

お前はカスタマーをなんだと思ってるんだと、センは付け加えることも忘れない。


今回の玉砕に至っても、最初っから無理だと思ってた。

なにせ、少女よりかなり年輪がいっちゃってる殿方に惚れ込んで

『あの声…魔術師みたいな…素敵!!!』

ときたもんだ。

念のため調べてみたら案の定妻子持ち。当たり前だ。いい男には早めにツバが付くんもんです。

世の定説だろ。そんなもん。


あ、俺は『わざと』独り身を貫いてるんだけどね。

と誰に言い訳するでもなく、センは独りごちる。


「大体、お前の耳は人間惚れ惚れ探査機じゃねーだろ。仕事に使え。仕事に。」

「違うよ!仕事は人生のついで!大半は愛のささやきを聞くためでしょー!」


この馬鹿はどうしようもない馬鹿でした。


「ハク…お前は馬鹿だなぁ。馬鹿だなお前は。」

「なっ!!毎度毎度、その口の利き方……技術者(テクニカル)に向かってなんて口の利き方だよっ!」

「はいはい。存じ上げておりますよ。ヨーク一族テクニカル様の中でも飛びぬけて阿呆の子、ハク様。」

「そういうのを慇懃無礼っていうんだっ!馬鹿セン!」


スピーカーの向こうでは足をバンバンと踏んでる音がする。

子供か。いや、子供以下だもんな。こいつ。

センはサブモニタに開かれた『技術先情報』的なことが書かれている文面を見ながら、言葉を続ける。


「よーし。その『慇懃無礼』の意味が分って使ってるかどうか分らないくらい頭の弱いハク様に次の技術先をお伝えしますよ。」

「このっ……!人の話は最後まで聞け!!」

「技術先の惑星ははサンザン。砂漠の地域だ。ちなみに現在民族戦争が勃発してる真っ最中。」


戦争という言葉にハクは素早く反応する。


「待ちなよ。セン。戦争してる地域は『うち』の修理担当外でしょ?」

「そうだ。技術者の命の危険が無い場所での修理っていうのが依頼する側の最重要項目だからな。」


一族の中でも特殊技術者は稀である。だからこそ、技術担当者の命はヨーク一族の中では何よりも重いものとされている。……らしいというのはセンがこの阿呆の子のサポート(カスタマー)に就くときに教わった程度だからだ。

しかし、最終決定は一族の長にゆだねられている。


「もちろん、相手側も技術者の命は最優先で守るとしてきたらしいが、長がそれを受けたらしい。」

「お……ばあちゃんが?」

「ばあちゃん言うなよ。長っていえ、長って。」

「なーにが長だよ。ばあちゃんはばあちゃんだよ。」


ハクはうんざりした顔で自分の優しくも恐ろしい祖母を思い出す。


「ばあちゃんが許可したってことは、何かしらその戦争に対するアイテムなんじゃないの?修理対象(それ)。」

「そう……らしい。というしかないな。なんせ、俺らが担当するのはその外側(ガワ)だから。」

「ガワ?」

「そう。担当地域と修理依頼者の内容も含めて今そっちに送るから。後は現地で確認してくれ。こっちも情報をもう少し集める。……おかしいんだよ。この依頼。」

「……ま、あたしに来る依頼なんざ、みんなこんなモンばっかりだからね。了解。」


センと連絡を切った後、送られてきた資料をモニタ越しに見ながら、ハクはなるほど、とうなずく。


「確かにおかしいわ。これは。」


ハクは17歳、センは29歳くらいのイメージで作られています。

さて、次からはいよいよお話が動きます!…多分w

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