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ヨークの遺産と白銀の少女~シズクの思い~


「これ爆弾だと思うんだよね。小型の。」

ピンセットの様な針金の先には、小さい電子部品が取り付けられている。

「そうですね。しかし、威力はさほど大きくないと思われます。」

せいぜい、このヒビを更に増やす程度ではなかろうか。

奥深くにあるこの地下の牢獄が、そんなにたやすく壊れるとも思えない。

「いいんだよ。騒ぎさえ起こせれば。」

「は……?」

パンパン、と手についた泥を落としながら、ハクは続けた。


「あたしのこのイヤーマフにはGPS機能がついててね。あたしが、今、どこに居るのか。大体の位置が本家の電算処理室に伝わっているわけ。多分今頃、私の宇宙船が私の処へ向かってるはず。聡いカザマ様なら、それを追って私達を探すことなんて造作もないことだと思うのよ。」

「そんな小さな耳あてにそこまでの機能が?」

「うちの特殊技術者すべてに、こういう万が一の保険が掛けられてるんだよ。逆に言えば、特殊能力のせいであたしはこれを外せない。だから常に位置がばれる。逃げられない足枷みたいなもんなんだけど。」

「し、白銀様は今の状態に満足して居られないんですか?」

「満足……っていったらおかしいけど、小さいころから、ヨーク一族としての教育を受け続けてる訳。だから別の人生とかは選べない。だから、別の人生を夢見ることは良くあるよ。」

うちのサポート部隊はそれがおかしいみたいだけど。とハクは笑って続けた。

「でもさぁ。今立ってる場所に不満を言う暇があれば、少しでも前に進めばいいと思うんだ。満足はしてないけど、これがあたしで、これでいい。と、今は思う。」

「すみません。僕は……。僕は、自分の立場をずっと嘆いてばかりいて……。」

自分よりももっと優れた者が居る。なのに自分が矢面に立たなければならない事が往々にしてあって。

そんな日々なのにもかかわらず、自分の思い通りに事が運ばない。

周りから来るプレッシャー。誰も自分を正しく見ていない。必要以上に甘い言葉と、必要以上にとげのある言葉達。

そんなの無理なことは分かっている。でも、目の前に居るこの小さな白い女の子が羨ましくてしょうがなかった。

何よりも自由奔放に飛び回り、誰の束縛も受けないような少女が。

最初に会う前から、伝記でヨーク一族の話を聞いていたころから、ずっとずっとこの一族に憧れをもっていた。

少しでもこの人達から何か得られれば。いや、夢を見させてもらえれば。


「私は……白銀様に謝らなければ……。」


こんな仕事ばかりではないにしろ、この目の前の少女は、ずっと一人で戦ってきた。

そうでなくても、惑星間を旅するということは、孤独と時空との戦いだ。

光の速度で惑星間を移動しながら旅をするという日々は、愛する人も大事な仲間とも年を一緒に取れない。

ましてや、ヨークの遺産を修理、メンテナンスするということは、緊張感と一族の誇りを背負い続ける。

明るさの裏にある限りない闇を彼女は持っていることくらい考えたら、分かることだったのに。

白銀は、自分よりもっともっと重い業を背負ってるというのに。


「なんでシズクが謝るの?あ、さっきのベソかいてた奴?あれは場慣れしてなきゃしょうがないよ。」

暗闇に薄く映るハクの肌は青白く光る。

「白銀様……。」

「あとね、謝るより『ありがとう』っていう方が、きっと皆幸せだよ。シズク。」

にっこり笑ったハクは、シズクがどきりとするくらい可愛い笑顔だった。


「لقد وجدت هنا لماذا」

「أعرف. يصلب الدفاع على أي حال」

向こう側で、何か騒ぎがあったらしく、見張りたちがバタバタと動きだした。

「あいつら、何言ってるの?」

「"何故此処が分かったんだ"とか、なんとか。」

「ってことは、カザマ様達がやってきたってことじゃない?」

「しかし、ここはかなり奥深くの牢獄のようですし、そう易々と……。あ!」

「そう。そんでこれよ。」

にやり、と手に持った針金状の爆弾をシズクに渡した。

「あたしは扱い方分からないから、ここは任せた!シズク!」

「……はい!」

シズクは、にっこりと小型爆弾を受け取ると、シズクはすべてを振り切ったように笑顔で答えた。



シズクの真の謝罪については、また後日。

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