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ヨークの遺産と白銀の少女~本当の理由~

「で、長の言っていた植物については検討がついたのか。ハク。」

「うううーん。まだ……。」

「お前……今日一日なにやってたんだ。」

「色々あったんだよ。色々さぁ……。」

夜、宇宙船に戻ってハクは靴を脱ぎながらセンと連絡を取る。


このスピーカー越しのオッサンは、連絡すればいつでも出てくるが、いつ寝て、いつ休んでいるんだろう。

と疑問に思う事が何度かあったが、最近はそう言うことを思う事すら停止した。

基本、ハクは自分が考えても分からない事は考えない事にしている。

それこそが「馬鹿だなお前は、お前は馬鹿だ。」とセンに馬鹿にされる所以でもあるのだが。


あらかたの報告をしあって、ハクは一息つく。

「でもさ。なんであんなに王家の遺産に固執すんだろうね。二つの部族とも。」

使えないかもしれないのにさ。とハクは素朴な疑問を感じていた。

「それが武器であろうが無かろうが今の部族戦争にも使える、と踏んだからじゃないか?」

「例えば?」

「滅びたとは言え、今の双方の部族のトップクラスは王家の血を継いでいる。」

首長の身元は極秘扱いされており、一切調べることは適わなかったが、首長補佐のカザマの血を辿った際、過去の王族との繋がりをセンは発見していた。

「神託を受けたとか言ってたから、前の王族の巫女の残りの血を蠍族が継いでるのは間違いなさそうだもんね。」


カザマと対等に張り合っていたリリスにも、同じ高貴な雰囲気を感じた。

となると、二つの部族は張り合うために王族の血を前に持ってきているに違いない。


「王家の遺産を手にするってことは、正当な王政を継いだ者と認められるんじゃないか?」

「……なるほど、昔の王家を信仰してる者は何処にでもいるからね。」

滅びたとは言え一時期は国を纏め、民を動かしていた王政。

その王政を再び戻したい、戻そうとする動きがあってもおかしくは無い。

むしろ、こんな部族間の争いをしている今の政治そのものに不満を抱いている輩も多いだろう。

「和平につなげるにしても、その遺産を手にした方が、権力を握れるに決まっている。」

「にしてはシズクとかカザマ様は結構おおっぴろげにリリスに内容暴露してたけど?」

しかも、開けるときには蛇族も立ち会う、というリリスの投げるような言葉にカザマは当たり前だというような顔をしていた。

有益に事を運びたいなら、相手部族には何も話さないようにするのが術なのではなかろうか。

「それは、お前を呼んだのが蠍族だからだ。」

「へ?」

「蛇族も技術依頼は出していた。が、すぐ突き返されたようだがな。」

蠍族は、長に直接書簡を送った。手紙の表面上は、ラブレターとして。

一方、蛇族はごくごく当たり前の手順として、一族の窓口担当に技術担当依頼の書簡を出した。

「賢さで言えば、蠍族の方が一枚上手な感じではあるな。」

「そりゃ、カザマ様が居るからね!!!」

そのカザマとやらが厄介なんだろうが、とセンは言いかけた言葉を飲み込む。


この馬鹿ウサギは、恋愛モードの時はあばたもえくぼだからな……。


「ともかく……開ける為には王族の血を引くものが必要だ。」

「そりゃそうだけど……その血は両方継いでるじゃん。」

「とすると、蠍族は『主導権はこちらにある事』を蛇族に示したいんじゃないか?」

センはペンを指でくるくると回しながら、続ける。

「蠍族の手によって開けれれば、王族の血の正当は間違いないと言い張れる。」

「でも、それって血の濃さで言えば、同じくらいだとしたら蛇族でも開けれない?」

「そう。それでお前だよ。」

「お?」

くるくると回していたペンをピッとモニタ越しのハクに向けると、センは続けた。

「お前を呼んだのは蠍族。だから、真っ先に箱を開けるのを試せるのは、蠍族だ。」

「あ!」

「お前の技術対応下での箱開封となれば、あっち側はほぼ80%の確率で開けれると踏むだろう。」

「しかも、向う側は技術対応を依頼していない……から、あたしは手出し出来ない。」

基本、技術依頼があった側に情報を与えることがルールになっているだけに、他の人間に情報を与えることは技術依頼の側としても御法度となっている。

他者に情報を与えてしまうと言うことは、一歩間違えれば犯罪にも利用されかねないからだ。

「そうだ。」

センは、更に続ける。

「更に言えばお前は、この宇宙の中を自由に飛び回ることを唯一許されている一族の一人だ。」

「お?当たり前だろ?ヨーク一族の作品は色んな所に散らばってんだから。」

惑星間の不法な取引を取り締まるため、宇宙法によって惑星間を移動する際は厳しい審査と管理が敷かれている。

その中で、特殊な職業を生業としているヨーク一族のような者達は、特例として自由に移動することを許可されている。

個々に独自の宇宙船を持つこと自体、各惑星のトップクラスか豪商のような待遇なのだ。

「うちのサポート対応履歴は宇宙政府も閲覧することが出来る。」

惑星間を自由に行き来出来る代わりに、ヨーク一族が技術対応した時の各地の情勢や記録は、宇宙政府や各惑星のトップが閲覧する事が出来る。

要するに、対応の如何が全て監視されていると言うことであり、逆に言えば

「各惑星で起こった事柄が、公の場に晒されると言うことを利用したいんだよ。」

「意味分からない。どういうこと?」

「要するに、全ての惑星に『惑星サンザンにおいては蠍族こそが王族の血筋であり、現政府の正当性を示すものだ』と公表したいわけ。そうする事で蛇族も否応なしに蠍族の下へ下らねばならないし、もし意を唱えたとしても、ヨーク一族のお墨付きを得た文面に他の惑星が首を動かすはずがない。」

「なるほど!」

「お前のような枝豆程度の脳みそでは考えられないかも知れないけどな。」

「な……!!!何をこのモジャ毛!!!」

「カーリーヘアって呼べ!」

「何がカーリーだこの綿毛ヘアーめっ!!!」


白ウサギ!モジャ頭!とボキャブラリーもへったくりもないような言葉の数々が続いた後、勝ち誇った顔をしてセンが言葉を変えた。

側にある画面が、丁度、何かの渦を巻いたような画面に切り替わった瞬間だった。

「良いのか!?カスタマー様にそのような口を利いて。」

「!?」

「折角この、現人神アラヒトガミであるこの俺様が無風になる日にちと時間帯を調べてやったっていうのにだ。」

「ず、ずるいぞ!このモジャ毛!」

「何とでも言え。さぁ。どうする白ウサギ。」

「くっ……。お、教えてください……。……セン様。」

ギリリっと歯ぎしりするようにハクが呟いて、この下らない喧嘩の決着は着いた。

「ふっふっふ……今回は俺の勝ちだな。勝てた気分の良い俺様が、他にも良いことを教えてやろうかな……。ふふふふふ。」

「覚えておけよ……センめ……。」

昼間のリリスと同じような捨て台詞を吐きながら、ハクは再びセンからの情報を得ることに専念するのであった。


ここを書くのに、およそ3日かかりました。

難産……。あ、あともしかしたらセンの仕事の名前を変えます。

なんか、いまいちしっくりこない(こんだけ書いておきながらそれはどうだ)


久しぶりに書いた小説って事で、一つご勘弁願いたいです。すんませんw

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