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ヨークの遺産と白銀の少女~リリスの正体~

「リリス殿があの市場に来ていたと言うことは、かなり私達の行動も筒抜けなのでしょうね。」

「まぁ、リリス殿が『どちら側』なのか私達には分かりかねる部分がまだあるからね。」

争いを望む者が『あちら側』なら、和平を望む者は『こちら側』だろう。

どちらの部族にも、争いを望む者、和平を望む者は居る。

二つの部族を隔てているのは、部族内での和平へ向かわせない者達のパワーバランスなのかもしれない。

「問題は、リリス殿や向こう側に情報を流した者達の洗い出し……だろうな。」

闇は更に深くなり、二人の姿も朧気になっていく。

他の者の気配を察知するためにもこれくらいの光の方が都合が良い。

「下手をすると、白い彼女の命にも及ぶ可能性がある。」

「あいつらなら……やりかねないでしょうね。」

「明日も……頼むぞ。」

「畏まりまして御座います。」

二人の影が、ゆるりと壁にゆらめいた。




「え?開けれなかった!?」

「はい。白銀様。」

ニコニコと微笑みながら、カザマは頷く。

カザマが市場を歩けば、すれ違う女性の瞳が全てハート型になっている。

ハクはというと、センに言われた「自生する植物」と思われるような植物を片っ端から買いあさる状態。

そして、後ろではその買った植物を抱えてよろよろとシズクが着いてくる。

「口伝では『王族の番(つがい)により扉は開かれる』とあります。」

「そう。それは私のカスタマーも同じ事を言っていました。」

「はい。なので、実は一度…私達で試した事があったのです。」

王族の血を引く者を何名か、あの秘密箱……とも既に呼ぶのは憚られる大きな建造物に派遣し、色々させてはみた。

が、一向に箱が開く気配は無かった。

「そんな中、神託があったのです。」


ヨークの一族と思われる人物が、箱の上に立ち、手を広げている……景色が見えたと。


「で、私が呼ばれた。という訳ですか。」

「はい。このような可愛らしい方だとは思っても居りませんでしたが……。」

カザマの微笑みで、ハクはまたしても赤面する。

「そういえば……リリスは一体……?」

「彼女は、蛇族の部族長の娘なんですよ。」

「ええええ!?」

「停戦のための議の際に、2度ほど拝見したことがあります。」

非常に活発なお嬢様だそうで…とカザマは笑う。

「ああ、それでシズクも見た事があったんですね。」

カザマの側近であれば、そういう場所にも同席するのも分からなくは無い。

「……ええ。そうですね。」

「でも、2度見たくらいの人を覚えてるなんて、リリスは頭良いんだなぁ……。」

カザマはともかく、シズクのような側近の顔と名前を覚えているとすると、彼女は相当頭が回る人だと思われる。

なにより、カザマ達同様、かなり共通語が達者なようだった。

あちらの部族も、同じような教育を受けて育てられていると考えた方が良さそうだ。

「首長との縁談も持ち上がってるんですよ。リリス殿は。」

カザマが悪戯っ子のような笑みを浮かべてハクを見る。

和平に向けて部族間が手を繋ぐ手っ取り早い方法は、部族間の婚儀である。

それを蠍族の部族長の娘であるリリスと首長がやるというのだ。

シズクは、後ろに控えながら余計な事を……と言った顔でカザマを見やった。

「え!?ってことは、首長はかなりお若いってことですか?」

「はい。私より5歳ほど若い方です。」

先代が5年前に無くなった為最近首長になったと、とカザマは付け加える。

「は-。じゃあ、リリスと結婚するとなると、彼女は姉さん女房になるわけですね。」

「そうですねぇ。しかし首長もリリス殿も、その話をする度に嫌な顔をされますがね。」

「双方あまり心良く思っていないってことですか?」

「リリス殿は堅苦しいしきたりを嫌う方ですから、首長と結婚し妻になるという事自体、考えたくないことなんでしょう。」

「では、首長の方は何故……?」

性格はさておき、あんな美人なのに……とハクは呟く。

「さぁ……。私は首長ではありませんからね。年上というのが嫌なのか……はたまた……。シズク、あなたはどう思いますか?」

後ろでハクが買った植物を抱え込みながら歩いて居たシズクはぎょっとして反応した。

「わ、私ですか?」

「シズクは首長と同い年ですからね。そこらへんの気持ちはシズクの方が分かるのでは?」

にやにやとカザマがシズクを見やる。

「わ、私は……私だったら、結婚相手は自分で見つけたいと……。」

「おやおや。若いですねぇ。シズクも。」

カザマが笑う。

「でも、分かるよ、シズク。あたしもそうだもん。」

結婚するなら、誰かに押しつけられたり差し出されるような人ではなく、自分で見定めた人にしたい。

そう思うことを許されるかどうかは別として。

「あ……有り難うございます。白銀様。」

シズクは、少し頬を赤らめながら微笑んだ。


「あ、ところで白銀様、今宵の夕餉は如何いたしますか?珍しい昆虫が手に入ったと厨房の者が言っておりましたが……。」

シズクの言葉に前日の阿鼻叫喚を思い出し、鳥肌を立てながら丁重に断る言葉を探るハクだった。


と言うわけで、リリスさんは蛇族んとこのお嬢さんでした。

イメージ的にはぐっと大人でバンキュッボンなイメージなんですけどね。

なぜ、あんな不思議っ子に…。あたしのせいか。


※明日は更新を御休みします。毎週火曜日は更新休止日~。

 さぁ。書きためなければばばば(滝汗

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