ヨークの遺産と白銀の少女~王家の遺産2~
「……予想以上に賢いお嬢さんがいらっしゃったようですね。」
「そうだね。私もあの若さで……と侮っている部分があったよ。」
薄く光が灯る空間の中、シズクとカザマが対峙していた。
二人の影が、ゆらりと壁に映る。
「蛇族の長の娘も注意が必要ですね。」
「リリス殿のことか。」
薄い光に照らされたカザマは少し微笑みながら回想した。
「あの中には、王族が唯一残した遺産が眠ってる……と伝承では伝えられています。」
シズクが、重々しく口を開く。
3人が座るゴザの周りは、相変わらずものすごい喧騒と活気に充ち満ちている。
「何が遺産さ。ただの兵器じゃないか。」
「口を控えられよ、リリス殿。あれは王族が伝説とさせ称した----」
「やっぱり『兵器』なの?あの中身。」
二人のやりとりに、ハクが突っ込む。
「白銀様!」
「兵器は兵器だろ?どんな奴?しかもさ。ヨーク時代の兵器つったら、もう朽ちてんじゃないの?」
鉄が酸化するにも十分な時間だし、木や石のようなものであれば威力もたかが知れている
「わざわざ封印するまでもない代物だよね。……朽ちるにしても、威力にしても。」
「そうだね。だから、アレは何かしら未知の鉱物で出来た『伝説の武器』なんじゃないかとね。」
「なるほど。口伝が神々しさを持って伝えられて言ったということ。」
その言葉に、二人はゆっくりと頷く。蠍族も、蛇族も……王族の遺産については同じ伝承が語り継がれていると言うこと。
それこそが、更にヨークの遺産の中身の信憑性を確かな物にしていた。
「それにしてもさ。そんな神々しいもんなら、ヨークが作った『ガワ』なんて壊して調べればいいじゃん。」
「そうはいかないんだねぇ。」
「なんで?」
「あの『箱』には開け方と閉じ方があるそうなのです。」
「そりゃ、秘密箱だからね。」
話が違う方に持って行かれたようで、ハクは少し不満げにシズクを見る。
「秘密箱というのは、基本中身を守るためにも出来ております。」
「~~~~何が言いたいのさ。シズク。」
「遠回しに言うのが好きなんだよ。この赤い毛の部族はさ。」
リリスがシズクを馬鹿にしたところで、空気がざわりと変わる。
「要するに手順を踏んで箱を開けないと、中身にどんな影響を及ぼすか分からない、と言うことですよ。白銀様。」
3人がばっと、声の主の方を振り返る。
そこには、周りの女性全ての目がハートになるほどの色香を纏った、カザマの姿があった。
「カザマ様!」
「か、かざまっ!!!」
「更に言えば、もし万が一、悪しき物……悪用されかねない物の場合は、それをまた閉じなければならない。おわかりですか?白銀様。」
「は、ハイ!!!」
ハクの目が他の女性同様ハートになっている一方、リリスはその場を飛び上がらんばかりに逃げ腰蒼白の様相を呈している。
「おや、どなたかと思えば、リリス殿ではありませんか。」
リリスに顔を向けぱぁっと笑顔でカザマが微笑む。その微笑みに鳥肌で応えるリリス。
「か、カザマ様はリリスを知ってるの?」
「存じてるも何も……」
「あ、あたし用事があった!今思い出した!用事思い出した!」
リリスは蒼白の顔をしながら立ち上がる。
「あたしはあのフェロモン成分100%配合な男が嫌いなんだよ…っ!!!」
ハクに呟くように話すリリスの顔は、完全に怖い物を見た顔である。
こんな美形を嫌う女が居たとは。
逆にハクは目が丸くなる。
「おや、リリス殿。用事があるとはつれない……。和平について話し合いたい議が沢山あるというのに……。」
「ここはっ!!!そういう話をする場ではないだろっ!!!」
にじり寄ってくるカザマに、しっしっと犬を追っ払うかのような仕草で後ろに下がっていくリリス。
先ほどの豪快で、上から見下すような余裕はもはや何処にもない。
「と、とにかくっ!!いいか、白ウサギ。」
カザマに手を握られそうになったリリスはそれをふりほどくと、キッとハクを睨み付ける。
「あそこを『開ける』時は『あたしら』も同席する。お前らも……分かってるな?」
「……分かっております。リリス殿。」
手を掴み、リリスの手の甲にキスを落とすカザマ。
そこには満面の笑みをたたえて。
ぞわわわわっ!と全身に鳥肌を立てたリリスがばっと手を離し、駆け出す。
「おぼえてろっ!カザマっ!!!」
リリスの目には既に悔し涙だか、恐ろしい物を見た恐怖涙だかが堪っていた。
「あれじゃ、悪党か、敗北者の捨て台詞じゃないの。」
ハクは呆然とリリスが走り去っていく後ろ姿を見つめていた。
「私、リリス殿に嫌われるようなことをしましたかねぇ……。」
挨拶したかっただけなのに……とカザマは一つ溜息をつく。
その、態度が……と言いかけて、シズクは言葉を飲み込んだ。
カザマ最強説wwww
そんなカザマの声のイメージは、井上和彦さんですv