我、魔王なり
ここは、アニマ―王国。 魔王は若くして軍を率い、日々の戦いに明け暮れていた。
城内、王の間の玉座に座しながら魔王は戦況を冷ややかな目で眺めていた。
「魔王さま!ベンガー隊、シャーム隊をはじめ、各隊もう持ちそうにありません。」
そう言って1人の兵が魔王に駆け寄る。
今、魔王の軍は壊滅の危機を迎えていたのだった。
「これしきの相手になにをグダグダやっている」
魔王は恐ろしく強かった。幼い頃から力に恵まれ数多の戦場を1人で制してきた。そんな魔王には、壊滅寸前まで追い込まれている軍、力なく倒れていく兵たちのことなど到底理解できなかった。
「これは我も出ねばならぬようだな」
「魔王様直々にですか⁉ しかし、もしものことg…」
「我、魔王なり」
心配する兵の話を遮ると、そう一言だけ残し魔王は腰を上げ城の外へ向かう。外へ出るやすぐさま羽を広げ、大混戦の戦場の遥か頭上を越えていった。
宙を舞い、衝撃波を放ち、はたまた口から炎を吐いては各戦場の形成を次々に逆転させていく。
その様子を見て兵たちは思った。(初めから魔王様だけでよくないか)
戦いの風向きが変わったことを喜ぶのではなく、自分達がいる意味など初めから無いのではないかとの思い。それは日々の魔王の周囲への態度が招いたものだった。
日々命を懸け魔王のために戦い、傷を負ってきた兵たち。そんな仲間に魔王は1度でも労いの言葉をかけたことがないばかりか、出てくるのは不甲斐ない戦いをしたことに対する罵詈雑言だった。
それが日常となっていた魔王の軍はいつしか一体感や団結力、そういったものを失い、周囲の魔王への気持ちはほぼ離れていた。
そんなことを気にすることなく魔王は戦場の大部分を好転させていった。
そしてあと1局面、そこを抑えれば魔王軍の大逆転勝利かとの所まで来たとき事態は起こった。
ドゴォォォン!!!
一瞬だった。 敵軍の最終兵器たるレーザー砲が魔王を捉えたのだ。
宙を飛び回っていたのも束の間、魔王の体は焼き焦がれ、地面へと落下した。
戦場へ倒れ遠くなる意識の中、魔王には薄っすらと声が聞こえていた。
「d%#5’;&!!」 「&pz:$!!!!」
何を話しているかはわからない。だがその声は、決して魔王の事を心配した魔王軍のもの達の声ではなかった。そのことを認識したところで魔王は意識を失った。
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「お母さん、早く! 猫が!子猫が倒れてる!!」
誰かが慌てた様子で話している。 そしてまた誰かが駆け寄ってくる。
「はぁはぁ、、 ほんとだ、酷いケガしてるじゃない」
朦朧としながらも意識が戻ってきた魔王は思った。
(ケガか、、我がケガなどいつ以来か。 ねこか、、ねこって、、、、なんだ。。。)
ここは日本。 魔王は軍を率い、自らも戦場にいたのだが気づけば、、、
河原、背の高い草むらに倒れこみながら目を開いた。
魔王は猫になっていた。