#7『木端微塵』
「操縦席は頭部!そこから胴体で燃料を燃やして後は人の身体とほとんど同じです!!」
カーネリアンが柱越しにオブシディアンへ情報を共有する。機械人形は完全に目覚め、オブシディアンを視界にとらえると、互いに真っ直ぐと標的へ向かう。そして
『あのデカブツの攻撃を相殺できたら良いが......』
オブシディアンと機械人形は同時に鈍器とも呼べる腕を振りかぶり、それをぶつけた。オブシディアンは呆気なく飛ばされ、柱の前で受け身を取り態勢を立て直した。
『チッ、物は試しと思ったがやっぱり駄目か。だったらこれで......!!』
オブシディアンは再び勢い良く機械人形へと駆ける。そしてもう一度鈍器を振りかぶろうとした時、オブシディアンは片足を溶かし出来た水溜まりに沈めた。
『はぁっ!!』
オブシディアンの予想は当たり、鍔迫り合いに持ち込む事が出来た。だが
『くっ......体力が無限とはいえさすがに重い......仕方ない、次だ』
オブシディアンはカーネリアンがこちらを見ていないのを確認すると、腕の結晶を砕くと同時に水面に姿を隠した。機械人形の手は地を叩いた。
「!?オブシディアンさん!!!!」
カーネリアンの目には溶解したオブシディアンは映っておらず、見たのはオブシディアンが居た場所に拳を叩きつけた機械人形のみだった。
「そんな......」
カーネリアンが絶望する間もなく、オブシディアンは機械人形の後ろにある柱から姿を現す。オブシディアンは機械人形の背後に音もせず接近すると、そのまま勢いよく操縦席へと飛び上がった。
『.......なっ!?』
オブシディアンが機械人形の背中から吹き上げるスチーム越しに操縦席を見ると、そこには何もなかった。
「オブシディアンさん!!危ない!!!!」
背後のオブシディアンに気付いたのか、カーネリアンの声がオブシディアンに届く間もなく、機械人形は上半身を180度回転させ、そのまま空中のオブシディアンへ拳をぶつけた。
『ぐっ.......!!?』
オブシディアンは柱を突き抜け壁に叩きつけられた。
『くそっ......なっ、嘘だ......ろ.......』
オブシディアンの視界はぼやけ始め、オブシディアンはその場で片膝を着いた。
『......あん時と同じだ......どうやらこれは空中では使えねぇらしいな......クソッ、それになんだ......?どうして目眩なんか......』
オブシディアンが動揺し身動きが取れない間にも、機械人形はゆっくりと近付いて来る。
『俺は体力が無限だと思っていたが、違うのか......?いや、これは体力じゃない、この体の耐久力か......?あぁそうか、俺はあの化け物とは違う。この違和感がようやく分かった。』
『あいつら、意思だけあって肉体が無いんだな.....』
『クソッ!!気付くのが遅すぎた。まだ動かねぇのかこの体は......あ?力が......抜けて.........』
オブシディアンは俯せになり、そのまま意識の深い所へと沈んで行った。
「まずい......オブシディアンさんが潰されてしまう......でもあの人形を傷付けたくない......一体どうしたら.....時間を稼ぐ......?誰が助けに来る......?こんな暗い城の、こんな場所に来れる人が居るの......?」
「......いや、考えるばっかりじゃ駄目だ、動かないと......でももし失敗したら?僕は死ぬの?僕が囮になったら、街の皆は、救われる?」
いつも、僕はあの2人に助けられてた。それどころか、迷惑ばかりかけて、あの時だって、呪いの根源と勘違いして、関係ない人を巻き込んで、僕はいつもそうだ。
不良達のいざこざに巻き込まれ、工場でも周りの期待には応えられず、僕は......
「......うるさい。」
「僕は確かに無能かもしれないけど、努力してる。それなのに誰も、僕に何も教えちゃくれなかった。あの2人だけだよ!僕に優しくしてくれたのは。あーもうイライラしてきた!!おい!!化け物!!その人形は僕のだぞ!!!!返してもらおうか!!!!!!」
カーネリアンは機械人形に釘を1本投げつけた。釘は機械人形に刺さりはしなかったが、機械人形の捉える標的がカーネリアンへとずれた。
機械人形は近くにある柱へと目を向ける。そしてそれを掴むと、そのまま引っ張り柱をもぎ取った。
「......え?」
機械人形はオブシディアンへと狙いを定める。柱をカーネリアン目掛けて投擲した。
「なっ!?ちょっ、それは卑怯だって!!!!」
カーネリアンは何とかそれを避け、そのまま走り出す。機械人形はまた1つ柱をもぐと、それをカーネリアン目掛けて投擲する。
「あっぶない!!馬鹿か!!!!お前丸ごと下敷きになるぞ!!!!」
幸いそうならないように、機械人形も手に取る柱を見極めているように見えた。
カーネリアンは次々飛んでくる柱を、近くの柱を盾にしたり、さながらドッヂボールの如くフェイントをかけながら躱していく。だが柱の装飾に足を取られ、その場で1回転した。
「くっ......足がもつれて.......運動はしてるはずなのに......」
カーネリアンは起き上がろうにも、足の筋肉が痙攣し体勢を立て直せずに居た。
「はは......僕っていっつもこうだな......無計画になんにでも片足突っ込んで......」
悲観的に考えるようになったのはいつからだろう。
いつも2人が励ましてくれて、学校を卒業できたのも2人のおかげ。僕は2人の引き立て役。でもそれで良かったんだ。だって僕には、英雄気取りなんか......
「諦めるな!!!!」
何処からともなく声がした。窓ガラスの割れる音がした。声の主は気付けばカーナリアンの前に立っており、その大きな剣で柱を木っ端微塵にしてみせた。
「はは.....聞かれたくない事聞かせちゃったな......ローズ」
「昔言っただろう?人の心は簡単には変えられない。だったら変えられるまで、お前が努力し続ける限り、私達がお前を守ってやるって。立てるかい?」
「足が痙攣してて......それにあの人も気絶しちゃってるみたいで......」
「そうか......アザミも後で合流する。ん?」
ローズはカーネリアンに危害を加えた元凶を目にする。それはローズも見た事があり、ローズが今手に持っているものをカーネリアンから受け取った際に見せてもらったものだった。
「あれって、君の......」
「本当にそれか分からない。でも、僕があれのあった場所に行った時は、工場丸ごと無くなってた。」
「そうか。ならアザミが来るまで時間を稼ぐとしよう。そこの柱に隠れていてくれ。」
ローズは剣を構えなおす。あの時の呪いに侵され狂気に満ちた彼女はもう居ない。
「過去は所詮過去でしかない。だからと言って見て見ぬふりするつもりもない。私は咎人だが、罪と向き合い生きてゆくと決めた、私の覚悟を、甘く見てくれるなよ!!!!」
ローズは目にも留まらぬ速さで機械人形へと向かう。彼女にとって過去は自身を縛り付ける枷であっても、それは決して、ローズが進む道を阻むものにはならない。
〈?????〉
『......』
ここは何処だ?
俺はどうなった?いや、気絶してるだけだ。すぐに目覚めるだろう。だが......
夢の中とでも言うべきか、気付けばオブシディアンは、この街に来て最初に見た、暗闇の中に居た。
早く月の光の下に、出て行かなくては。
「お前は家には帰れない」
家......?そんなもの私には無い。それがどういうものかもわからない。
「お前の居場所は何処にもない」
俺は何処へ向かっているんだろう?
『居場所ってのは、そんなに良いものなのか?』
暗闇の中、何処からともなく響く誰かの声。オブシディアンは自問自答するかのように、響く言葉の意味を考える。
『俺はどうして、この世界に生まれた?何故人を助ける?お前は何がしたいんだ?』
『私は生きてるのか?』
To be continued.




