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#4『狼煙?信号?』

「本当に迂闊でした。まさか時の神子まで呪われてたなんて。えっと、続きですね」


時の神子は、この街の時計塔の上から、私たち民衆を見守ってくださっている存在です。年に1度、時計塔の正面にある広場で一夜踊り明かすなんてものがあったりして。

そんな時の神子が、民衆を見下ろす時計塔が、突如として強い光を放ちました。その光は街全体を包み込むと、辺りはすっかり暗くなり、日が沈むと同時に、化け物が現れ始めました。化け物は光を嫌うらしく、その時の僕は幸いにもランタンを持っていたので、化け物が僕を襲う事はありませんでした。

ただ、時の神子と同時に光を失ったこの街で、ただ1人、孤独に彷徨う中で、僕は友人達を探しました。あの2人なら、きっと僕の助けになってくれるはずだって。だけど、思いはむなしく、ランタンの中の蝋燭が溶け切り、気が付いたらここに居たって訳です。

目覚めは凄く悪いものでした。夢の中で、沢山の声が、僕の精神を蝕んで行った。しまいには、顔に刃を受ける始末で。


「とまぁ、これが僕の知る限りの情報です。」


『......これからどうするんだ?』


「その事なんですが......」


カーネリアンは、オブシディアンの前に立つと、頭を深く下げた。


「よろしければ僕と一緒に、友達を探してはくれませんか」


『......』


オブシディアンは沈黙したが、断るなんて選択肢は無かった。


『その友人、2人居るんだったな。どんな奴だ。』


「.....!?ありがとうございます。1人は深紅のマントを身に着けているから、すぐに分かると思います。もう一人は...普段表立って活動しないので、どこかに姿をくらましているか、もう1人と一緒に居ると思います。彼女達、とても強いんですよ!」


『...分かった。』


オブシディアンはそう言うと、その場を立ち去ろうとする。


「あ、待ってください!」


『......?』


「その...よかったら、僕をある場所に連れて行って欲しくって。今の僕じゃ戦力にならないと思うのですが、」


『行こうとしてる場所に、武器でもあるのか?』


「はい!僕、鍛冶師なんです!」


『......案内しろ。ただし1人で何かしようとするなよ』


「もちろん、邪魔になるような事は致しません!」


2人は牢獄を後にする。この街は一体、どうしてしまったのだろうか。



〈?????、中庭?〉



2人は薄暗く松明に照らされた牢獄を出た。すると、広く手入れが行き届いている中庭のような場所に出た。


「ここは......!?」


『知ってるのか?』


「ええ、知ってるも何も、ここはこの街を統べる、王様が居た灰鉄柘榴(かいてつざくろ)城と言う場所です。」


『居たって事は、今は居ないのか?』


「はい。先程お話した呪いで、命を落としてしまいました。正確には、呪いで化け物の姿となった王様を、私の友人が討ちました。」


『その友人と言うのは、よっぽど強いんだな。』


「そうなんです!彼女達とは学生時代からずっと友達で...ってのは一旦置いておくとして、彼女達は、「騎士」といって、この街で悪党を懲らしめる役割を持っています。と言っても、偉い立場と言う訳ではなく、なるべくしてならざるおえなかった人たちの集まりに過ぎません。彼らは基本孤立して行動し、武器を振るう事は滅多になく、なるべく敵味方傷を負わせる事も無く問題を解決します。」


『随分腕が立つみたいだな。なるべくしてならざるおえなかったって事は、貧しい家計とかそういう話か?』


「大体はそうです。後はそこから、ならず者になるか騎士として第2の人生を歩むか、と言った所でしょうか。」


そんな話をしていると、庭の茂みの中を、何かが蠢いているのが見えた。


『カーネリアンだったか。アイツら、光を嫌うんだったな。』


「はい、一応ここにランタンがあります。」


『蝋燭はどれくらいある?』


「3本です。」


『1本点けて、俺に貸して欲しい。』


「分かりました......?」


カーネリアンはライターで蝋燭に火を灯し、オブシディアンにそれを手渡した。すると光に誘われ、次第に蠢く音が多くなっていくのを感じた。


「あの......オブシディアンさん...本当に大丈夫なんですか?」


『......怒るなよ。』


オブシディアンは茂みに蝋燭の火を移すと、カーネリアンに蝋燭を返した。


「オブシディアンさん!?」


『この様子だと町中に溢れかえってるだろう。なら、光源を増やして身動きが出来なくなったところをまとめて始末するのが手っ取り早い。違うか?』


「で、でも......ここは」


『言いたい事は分かる。だが言ってる場合か?』


「......そうですね、腹を括ります。」


『じゃあそこの移した火を見張っててくれ、もしこれを消そうとするやつが居たらすぐに言うんだぞ』


「は、はい!」


オブシディアンはそう言うと、腕に刃を形成し、叫んだ。


『おいザコ共!!ここに居る奴全員かかって来い!!!!』


その声に呼応するように、辺りに蠢く影が次々姿を見せる。それはたちまち人の姿へと変貌を遂げると、一斉にオブシディアンへ襲い掛かってきた。


(思ったより少ないし、1体1体の戦闘能力はたかが知れてるが......)


オブシディアンは一瞬だけカーネリアンの方を見る。


(アイツを守りながらか。アイツの悲鳴に反応できる余裕があると良いんだが)


『なっ!』


オブシディアンは右から勢いよく突撃してきた化け物を軽くいなすと、そのまま頭を貫いた。


『やっぱり、全員頭の文様が弱点らしいな。カーネリアン!危なくなったら頭を狙え!丸腰でも怯ませる位は出来るはずだ!』


「えぇ!?僕戦闘なんて......まぁ、やった事無いと言ったら嘘になるんですけど、それでも生身は無理ですって!」


『こいつら1人1人の動きは遅いし単調だ!なるべくそっちに行かないようにするから!相手の動きをよく見ろ!!』


そう言いながらオブシディアンは、次々と人型の化け物に刃を振りかぶる。気付けば化け物の返り血とも言える体液で、辺り一面大きな水溜まりが出来ていた。


『火の状況はどうだ!』


「あの!1人こっちに向かって来てます!!」


『すぐ行くから待ってろ!』


化け物を殲滅するのに集中する内に、オブシディアンは中庭の端の方に来てしまっていた。これでは最悪、カーネリアンが傷を負ってしまう。

化け物がカーネリアンのすぐそこまで来ている。カーネリアンは震えながらも、それに向かって構えた。


「っ......!!」


カーネリアンは咄嗟にポケットに手を入れると、そこから5寸釘を1本取り出し、それを逆手に持つと、勢いよく化け物の顔に突き刺した。化け物は刺された所から液化し、そのまま水しぶきになった。


「!?しまった!」


カーネリアンにかかった水しぶきの一部が、茂みに点いた火にもかかってしまった。


『......?刃物持ってたのか。』


「すみません、僕のせいで、火が......」


『まだ火は残ってるし、俺はまだ戦える。また広げればいい。出来れば何か扇の様なもので火の勢いを一気に強くしたい所だが、そこまで体力を使ってられないからな。』


オブシディアンはそう言いながら、背後まで迫っていた化け物の頭部をノールックで斬る。


『それじゃ俺は殲滅に戻る。まだまだ化け物は残っているからな。』


ランタンを大事そうに抱えるカーネリアンを尻目に、オブシディアンは化け物に向かって勢いよく飛び掛かった。


  To be continued.

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