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#12『銃声』

〈理性の街〉



戻って来た。

正確には、オブシディアンが居た場所とは違う、文明の最前線とも言うべき都市の中に居る。


(俺は死ぬのか?)


不思議と恐怖は無い。生に執着が無い。この世界に興味があるわけでもない。だが、この力を持て余すのも何か違う。


(この世界の事は知らんが、人の役に立つのは悪い気はしない。なら、自分にしかできない事をやってのけてからというのも悪くは無いだろう。)


オブシディアンは片目を覆う髪が、風になびかぬよう、自身の身に纏う上着のフードを被る。


『......にしても―――』


オブシディアンは周囲の道行く人々を見渡す。


『随分人が多いな。さっきまでのあの街とは大違いだ。これが都市ってやつか』


本能の街は老朽化した建物や、その路地にブルーシートなんかで屋根を作り、雨風凌ぐのがほとんどだ。

刻動の街も、去り際に見た限りでは、ここまで文明は発達していないように感じた。


「おっと」


『あっ』


オブシディアンはよそ見して歩いていた故に、目の前から歩いて来る少女に気付かなかった。


「ごめんね!私もよそ見してて...」


『あぁ......俺こそ悪い......』


目の前の少女はオブシディアンの顔を覗き込む。オブシディアンは文様がバレないように片目を覆う髪をさらに手で覆う。


「おそろいだねっ」


『え?』


「片目隠れ同士♪」


『あ、あぁ......』


少女もまた、片目が前髪で隠れている。綺麗な碧い目をしている。


「またねっ♪」


『おぅ......』


少女は別れの言葉と共に、一瞬にして人ごみの中に消えて行った。あっという間の出来事だったので、オブシディアンはまともに言葉を発せなかった。


(バレてない......よな?)


オブシディアンはしばらく少女が去った方を眺めた後、西へ向かった。



〈理性の街、ペグマタイトタワー付近〉



(随分高いな。雲まで届きそうだ。)


オブシディアンは近くにある看板に目を向ける。



「ペグマタイトタワー」


理性の街で最も高く、街のシンボルとして多くの人々に親しまれています。

この建物の由来となったペグマタイトは、眠ったままの才能や能力を目覚めさせる効果があるパワーストーンです。


(そういや俺のオブシディアンって名前、黒曜石だよな?まぁ、だからどうしたと言えばそれまでか。)


オブシディアンは特に何かのアクシデントに見舞われることも無く、その場を後にした。



〈理性の街、西側〉



無心で歩いていると、案外あっさりと結界の近くまで来ていた。


『......』


(彼女はもう居ない)

(彼女は貴方の身代わりに―――)


(ここはとても静かだ。さっきまでの人込みどころか、ここには無機質な建物が並ぶばかりで、人の気配はまるで無い。)


そう、この瞬間までは。


『っ!?』


ドーン!!!!


聞いた事のない轟音と共に、オブシディアンの頭を何かが貫いた。


『ぐっ!!』


オブシディアンの頭部には風穴が空き、オブシディアンはそのまま倒れ込む様に水溜まりへ飛び込む。


(何が起きた、何が俺を貫いた。)


幸い隠していた文様のある眼には当たらず、オブシディアンは潜ったまま少しその場から離れ半身を出す。それと同時に、両手に剣を形成し、必死に辺りを見回した。


(居ない......!?本当に何処から......ん?)


遠くの建物の屋上、人影が1つ。その人影は何か光るモノをこちらに向けており、オブシディアンはただならぬ殺意を感じた。


『そういう事か。だったら!!』


オブシディアンは翼竜との戦闘で得た技を活かし蛇行しながらその人影への接近を試みる。

人影はオブシディアンへ、冷静に狙いを定め、発砲する。オブシディアンは轟音と共に潜り、それを回避した。


(あの翼竜みたいに水中までは飛ばせないみたいだな。だったら!)


オブシディアンは水溜まりに潜ったまま、狙撃手との距離を詰める。やがてその建物が近づいて来ると、オブシディアンはそこへ潜り、勢い良く水面から飛び出した。


その時だった。


『......は?』


オブシディアンの飛び出た先に、何かトゲトゲしたものが大量にあった。それらはオブシディアンを待っていたかのように、一斉に赤みがかる。


『しまっ...!!』


オブシディアンは爆発をもろに食らったが、幸い地上から離れる直前に盾を形成し難を逃れた。だが、爆発と水面から勢い良く飛び出た推進力によって、オブシディアンは空中に投げ出されてしまった。


(まずい......あの狙撃手がどんな奴かによっては、空中で撃たれる......!!)


オブシディアンは狙撃手に向かって盾を構えると、その瞬間に弾丸が打ち出され、オブシディアンはその反動で大きく吹き飛ばされ、水溜まりから大きな水しぶきが上がった。


『クソッ、あいつどんな銃使ってんだ―――』


オブシディアンは水中で腕に剣と盾を形成し、地上へ上がる。だが、狙撃手は、いや、狙撃手"達"は、思考の隙を与えてはくれなかった。


「くらえ。」


オブシディアンの真横から声がした。幸いオブシディアンの盾を形成した方からだったので、咄嗟に構えて攻撃を防ぐ事が出来たが、盾は砕けてしまった。砕けた盾越しに、もう一人の顔が見える。


(片目に変な模様、いや、これは、銃のサイト!?いや、幸い水しぶきがまだ狙撃手の視界を覆っている。撃たれる心配は―――)


ないはず。そう思っていたのが間違いだった。幸い弾はオブシディアンの髪をかすめて、地面に大きなヒビを入れた。


『っぶねぇ!!』


「あの子にばっか集中してたら死ぬよ!!」


目の前の少女はオブシディアンに立て続けに攻撃を繰り出す。彼女の手から現れた黒い結晶。それを少女はオブシディアンと格闘しながら、オブシディアンにぶつけて爆発させる。オブシディアンは片目を守りながら、少女の動きをしっかりと捉える。少女が回し蹴りの態勢になった瞬間に、オブシディアンは再び水溜まりへ潜ると、それをいくつかに分け、街の路地や至る所へ逃亡した。


(駄目だ、相手が悪すぎる。ここは撤退だ。この目を撃たれたら、どうなるか分かったもんじゃないからな!!)


(お前に頼みがある。)


(そうだ、今はそれだけ考えよう。無理に戦闘する必要はない。しかし何故、あいつらは俺に武器を向けたんだ?)


オブシディアンは2人が追って来ていない事を確かめると、結界に向かい、なるべく人目に付かない場所を通って向かった。


(それにしても......完璧に息の合った連携、常識はずれの威力の狙撃銃、そしてあの眼。あいつらは一体.....)



≪ターゲット喪失、逃しました。≫


≪了解、偵察隊を派遣しておく。君達は帰還してくれ。≫


≪≪了解。≫≫



〈理性の街、西の結界〉



初めての敗北。だが、何かがおかしい。この街は、刻動の街のような妙な気配は無かった。


(俺が首突っ込むのはまだやめといた方が良さそうだ。)


そんな事を考えていたら、目の前に壁が現れた。


『......そういえば、あの街に行く前、似た色の壁があったな。』


オブシディアンは水溜まりに潜り、勢いよくそれを飛び越える。案外目的のものは近くにあり、オブシディアンは結界に入ったヒビの前に立った。


『なんか、あれより大きくないか?』


オブシディアンは溶かした腕の断面をヒビに付けるとそのまま液化し日々の向こうへと入った。


    To be continued.

Meanwhile, at that time:[愛の形、孤独の形]Episode Crys&Pearl

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