炉簿戸家のチャミ(7)楽しいプール、楽しくないプール
「今日はプールだよ」嬉しそうにショウしゃんは、手に水着やバスタオルを入れたバッグを持って言いました。
「モエもプールだぁ」姉のモエちゃんは、嫌な表情を隠せません。
「モエは高学年かぁ」お父さんは、にやにやしながら二人を見送りました。「気を確かにな」
ショウちゃんは、市の共同プールで授業を受けました。生徒達は、背の丈や水泳の熟練度により、色々な深さのプールに振り分けられました。ショウちゃんは低学年でまだ泳げないので、浅いプールでした。そのときお姉さんがどこかに居ないかと探しましたが、見つける事ができませんでした。
授業で、ショウちゃんたちは、水の中を歩いたり、顔を水に浸けたりして、水に慣れることから始めました。怖い気もしましたが、それでも、楽しい授業でした。
家に帰り、楽しかったことをお父さんに報告していると、疲れた顔をしてお姉さんが帰ってきました。
「どうだった?」とショウちゃんが訊くと
「もう最悪、アオミドロどろどろの水の中で、ぬるぬるの生き物とたわむれるなんか地獄絵図だよ」お姉さんは、荷物を放って座り込みました。
「え?生き物なんかいるの?」ショウちゃんは、お姉さんのプールの方が楽しそうに思えました。
「学校の裏にある、大昔のプールだよ」お姉さんは、はぁとため息を付きました。「まだあの匂いが体にまとわりついている気がする。
「あの池?」ショウちゃんは、授業でみた、緑色をした水で満たされた場所を思い出しました。「プールだったの」
「そう、生物の授業をかねて、生き物の捕獲とプールの清掃だよ。あーもうやりたくないよう、今晩の夢にでてきそう」お姉さんは、大きくため息をつきました。