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夜に書く手紙は危険 <シーナ視点>

「あ、サレオス様!お久しぶりでーす!」


私は魔法防御実習の後、サレオス様に笑顔で手を振った。まわりは驚いているが、私の軽いノリに彼は慣れている。


一見、冷たそうに見える貴公子だけれど、サレオス様は実は優しいと思うわ。男爵家の娘の私に対しても、一度だって横柄な態度をとったことなんてない。


マリーの友達だからっていうのはもちろんあるんでしょうけれどね!

この授業はジュールも受けていて、ふたりは声をかけた私のところにずんずん近づいてきた。


私は今、マリーから預かり物をしている。領で書いた手紙のことだ。


こっちに戻ってきたときに、サレオス様と同じ授業がなかった上に、彼はすぐマリーのところに行っちゃったからこんなに遅くなってしまった。


しかも今日は午後からの登校だったから、まだマリーに会えていない。


どうしようかしらって迷ったけれど、ちょうどサレオス様に会えたから渡すことにしたの。



「マリーから預かっていた手紙があるんだけれど……」


「手紙?」


「ええ。実はサレオス様がマリーに会いにいくとは思っていなくて。私がこっちに戻ってくるときに、マリーから手紙を預かっていたのよ」


「俺に手紙を?マリーが?」


私は頷くと、淡いグリーンの封筒に入った手紙を手渡した。


サレオス様が不思議そうな顔をしている!わかるけれどね!?「一週間くらいしか休んでなかったのになんで手紙?」って思ったんでしょう?


でも仕方ないの。乙女の夜の恋バナが盛り上がりすぎた結果なの!そこはスルーしてちょうだい!



「会っちゃったって聞いたから迷ったんだけれど、一応渡しておくわ。あ、読む必要がないならマリーに返しておくけれど」


「いや、ありがとう」


すぐに手紙を広げたサレオス様に気を遣って、私とジュールは窓際に移動した。


正直言って「え!?ここで読むの!?」と思ったわ!


まぁ、私に預けるくらいだから、好きとかお嫁さんにしてほしいとかは書いていないんだろうけど……ラブレターじゃないの、それ?


私はジュールと一緒に、無言でサレオス様を観察した。


どうやら手紙は、たったの1枚みたい。クレちゃんとアイちゃんには、軍や役場でよく見る特大の紙に15枚も書いてあったのに。


クレちゃんなんて「さすがマリー様。すばらしいレポートだわ」って褒めてたもん。もうレポートって言っちゃってるし。


サレオス様には、まだ言えない気持ちがいっぱいあるもんね……。わかるわ、わかるよマリー、その乙女心!



なんて書いたのかな~。なんかドキドキしてきた!


私がニヤニヤしていたら、隣でジュールがぼそっと呟いた。


「みんなちゃんと手紙じゃねーか。俺の分は絵ハガキだったぞ。しかもこっちでも売ってるやつ……。ま、テル嬢らしいけどな」


マリー、あなた気持ちの格差を表現しすぎよ……!せめてテルフォード領でしか売っていない絵ハガキにしてあげて。


「だいたいなんでサレオス様は急にマリーのところへ行ったの?」


「あぁ、あれか?俺が『パンを持って行ってやってくれ』って言ったせいなんだが……」


本当にそれだけで!?ありえないわ。


「ただ、その前に『騒がしいテル嬢がいなくて寂しいんだろおまえ』って言ってからかったかな。すげー睨まれた」


うわぁ、命知らず……。よく消されなかったわね。


「それで、『例の処罰が決まったから、フレデリックが直接伝えにいくらしいぞ』って言ったんだ。そしたらパンを持ってそのまま行っちまった」


王子様にパンのデリバリーさせられるのは、今のところコイツだけだわ。私はじとっとした目でジュールを見た。




そんなジュールの話が終わった頃、手紙を読んでいたサレオス様が声を上げて笑いだした。


「はっ!あはははは……」


え!?サレオス様が笑っている!?


よくわからないけれど、マリーがマリーらしく文才を発揮してしまったみたい。


私とジュールはびっくりして顔を見合わせちゃった。



ふたりして彼を注視していると、サレオス様がまだ笑いを堪えながら声をかけてきた。


「マリーは?」


「えっと、まだ2階だと思うわ。いつもの教室」


「わかった。ありがとう」


サレオス様は手紙を持ったまま走り出した。マリーに会いに行くのね。何か気になることでも書いてあったのかしら?



私はこっそり見に行こうと思ったけれど、ジュールに「やめとけ」って止められちゃった。


あら、意外と常識的になところあるのね。アホなのに。


ふふふ、マリーとサレオス様どうなるのかしら?明日会ったら、マリーに聞かなくちゃ。


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