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悪役令嬢はシナリオを知らない(旧題:恋に生きる転生令嬢)※再掲載です  作者: 柊 一葉
未書籍化部分

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ストーカーfeat.魔王【前】

庭園の小路には白い石が敷き詰められていて、ところどころに光る鉱石が埋め込まれているから夜でも庭はぼんやり明るい。私たちは手を繋ぎながらゆっくりと散歩を続け、今後の話をどちらからともなく切り出した。


円満に結婚するために、残った課題は3つ。


1つめは、宰相様との約束通り、領地の収益を上げること。これに関してはすでに見通しが立ったそうで、特に心配しなくていいとサレオスは笑ってくれた。


2つめは私のお父様。これはもう私の泣き落としにかかっているといっても過言ではない。


先日、お母様と私が家出と称してトゥラン公館にお世話になった後、サレオスとお父様が話し合いの場を持ったことを私はここで初めて知ったんだけれど、やはり私を溺愛する父は首を縦に振らなかったという。


ストークスホルンで国王陛下やカイム様に会わせたくないという理由で、建国式典への参加は認めないと今もお父様は頑固だった。


「でももう会っちゃったわよね。カイム様に」


「あぁ」


「それに、私のお母様が婚約を認めちゃったものね」


「そうだな」


お父様ったらまだ反対する気かしら。あれ、これもうお父様は無視でいいんじゃないかなっていう空気が流れる。でもサレオスは律儀だから、それはさすがにできないと考えているみたい。


「娘を持つ父親の気持ちは俺には到底わからないが、父親としてずっとマリーを大事に守ってきたんだ。その気持ちをないがしろにすることは酷だろう?それに、マリーには一切の憂いなく嫁いできて欲しい」


うっ……なんて誠実な人なの!?王子様パワーで「娘ちょうだいね」って暴挙にだって出られるはずなのに。

やばい、キュンだわ!好き。


「そうよね、昔いろんなことがあったから心配かけちゃったし……遠くにやりたくないって思ってくれてるんだものね」


立ち止まって思い返せば、とにかく心配をかけてきたわ。変態は定期的に罠に引っかかるし、家庭教師はあやしくない人を選別するのに大変だったみたいだし、でかけるといえば過剰に護衛を用意してくれたり……。


何より、いまだにちょくちょく南の国に行って砂漠で日焼けしてくるのは、あの変態国王の様子を探っているんだと思う。記憶を取り戻すまでは、「南の国、好きだな~お父様」くらいにしか思ってなかったけれど、今思えばあんな王が治める国に行きたいはずがないもの。


一瞬でも「お父様はもう無視でいいか」とか思っちゃった自分はなんて親不孝なの!?


ごめんなさいお父様!

本当にごめんなさい!


私が反省してしゅんとしていると、目の前に大きな手がやってきて、髪や頬を撫でられた。


「侯爵のことは、一緒にちゃんと説得するから」


「うん……!」


あぁ、やっぱりこの人を好きになってよかったわ。今日またさらに好きになった気がする。私が感動していると、顎を持ち上げられて軽いキスをくれた。


「私ったらお父様の気持ちも考えずに何てこと……。やっぱり時間がかかっても説得をし」

「時間はかけない。予定通り最速で結婚するために、どうにか折れてもらう」


んん?何とかなるのかしら。

噴水の水が流れる音だけがサーーーッと耳に届く中、しばしの沈黙を経てサレオスは私の髪を撫でた。


「何とかなる。きっとわかってくれる」


そしてまた手を繋いで、ゆっくりと来た道を戻っていく。


「とりあえずは、ルレオードの邸の増改築からだな」


「へっ?」


増改築?私の頭の中には、三角屋根の塔がいくつも密集したルレオードの邸、というか完全に戦仕様の城が思い出される。


「侯爵に、心配しなくてもマリーは絶対に大丈夫だとわかってもらえるよう、全面的に邸を改修しよう。徹底的に不審者が入り込めず、なおかつマリーが安全に暮らせるようにしなくては。旧時代の迎撃システムはすべて入れ替えて……」


「え、あの」


「あぁそうだ、マリーを護らせるための護衛部隊も作らねば。第4・5塔は女性魔導師と女性騎士団の宿舎や施設に改装しよう。新たに部隊を創設して、今いる者のほかにも優秀だが現場から遠ざかった夫人たちを引き戻せば……乳母や教育者も必要だな。早急に集めよう」


え、え、何だかおおごとじゃない!?邸を改修?部隊を創設?え、今あるものじゃダメなの?

私は目を白黒させて、サレオスのことを見上げていた。


「あの、サレオス?」


「なんだ」


「今のお邸じゃだめなの?それに女性魔導師と女性騎士団って」


なかなか理解できない私に向かって、彼は美しいけれど怪しげな笑みを浮かべた。


「今のままでは多々抜け穴がある。邸も旧時代のつくりになっているから、最新の防衛魔法を展開しなおさねば。それに、いま騎士はほとんどが男だ。マリーを護るなら女性騎士がもっと必要になる」


「ええっと、ヴィーくんも男だし、なんとかなるのでは」


「ダメだ。ヴィンセント以外の男はマリーに惚れない保証がない。あいつはかなり常軌を逸しているが、恋情ではないから許す」


あら、ヴィーくんたら常軌を逸しているなんて言われてるわ!やはり普通ではないらしい。


「マリーの安全のためには、女性の魔導師と騎士を早急に集めつつ、育成するのがいいだろう。

それに以前から問題だったんだ、優秀な女性が結婚で役職から離れてしまうことは。どうしてか、トゥランではあまり妻を外に出したがらない傾向がある」


え、それをあなたが言うの!?

率先して囲おうとしているあなたが言うの!?


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