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悪役令嬢はシナリオを知らない(旧題:恋に生きる転生令嬢)※再掲載です  作者: 柊 一葉
未書籍化部分

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サレオス視点【7】さぁ囲い込もう

マリーを屋上に連れてくると、ようやくいつものように笑ってくれた。


俺に会いたかったのだと言われれば、さきほどまで鬱積していたものが消えてしまうのだから自分の単純さに驚く。


「会いたかったの……淋しかった」


「そうか」


「そうよ。だいたいあんなことしておいてさっさと国に帰っちゃうから……だから私、色々と」


しまった。ついにあの話になってしまった。後ろから抱きしめた状態で、どう答えるべきか思い悩む。ただ口ごもる彼女が可愛くて、無意識にいたずら心が湧いてしまう。


「あんなこと、とは?」


俺が笑いを堪えていると、パニックになったマリーがおかしなことを言い出した。


「あ、あんなこととはあんなことで……ちょっといったん家に帰ってもいいかしら」


しかしからかって遊んでいるのも一瞬で、マリーから頬にキスをされてしまえばすぐに理性が吹き飛んだ、というか消滅した。これは俺は悪くない、はず。


俺が強く肩をつかむと、茶色の大きな瞳がおもいきり見開かれた。きっとこの十数日、会いたかったのは俺の方だろう。マリーの気持ちも確かめず、またも唇を強引に合わせた。


「ふっ!?」


触れた肩から、身を強張らせてかすかに震わせるのが伝わってくる。拒絶されない、ただそれにほっとして何度もキスを繰り返した。


抱き締めると、力が抜けてしまったかのように胸にもたれかかってきて動揺した。……大丈夫だろうか?


心地よい香りと柔らかな人肌に、思わず本音が漏れる。


「巻き込みたくなかった。マリーが来る前に婚約者候補などすべて処理しておけばよかった」


守りたいと思うばかりで、結局は何もできなかったことが悔やまれる。もともと貴族間の駆け引きは得意ではないが、それにしても随分と平和ボケしたものだと思う。マリーひとり守れずにどうするのだと歯痒さに悶える。


それなのにマリーは「巻き込まれてもいい」と言ってくれた。


「だってこのドレスを着てしまったんだもの。これを着ている間は、その、私は、恋人なんでしょう?」


顔を真っ赤にしながらそんなことを言われれば、もう受け入れるしかない。


俺がマリーへの気持ちを明らかにすれば、きっと滞在中にも動きがあるだろう。きっとマリーを排除しようと仕掛けてくるヤツがいる。


……もういっそ、好きにしてしまおうか。ぐちゃぐちゃと考え込むからいけないんだ。

マリーが俺の気持ちに気づくくらい、徹底的に態度で示してやろうか。


そんな考えが頭をよぎる。


「何があっても守るから……許せ」


そう、何があっても、一生。逃げているだけでは埒が明かない。早急に結婚への根回しを始めよう。


唇を重ねても嫌がられないくらいには好かれているし、ものすごく懐かれていることに関しては自信がある。

もしもマリーが俺に恋心を抱いていなくても、結婚してから少しずつ惚れてくれればそれでいい。


なんだ、簡単なことじゃないか。


穏便に物事を勧めようなんて無理だったんだ。マリーのことは標的にされても守ればいい。返り討ちにすればいい。


どちらも立てることが不可能なら、邪魔者は消す。


マリーをエルリックに預け、迎えにきたイリスに向かって俺は言った。


「婚約は在学中に、婚姻は卒業後最短で進める」


さきほどまで渋っていた俺が意見を変えたことで、イリスは目を瞠る。


「よろしいので?」


俺はイリスの目を見て頷いた。


「たった今、決めた」


その返答に満足したイリスは、さっそく悪だくみを始めるらしく最高の笑みを浮かべた。


「仰せのままに」


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