恋愛指南書のその後
その翌日、マリーのところに来たレヴィンとヴィンセントの会話にて。
ヴィ「レヴィン様、このところの文字が読めません」
レ「またー!?読めないなら何で姉上から本借りたの!」
ここのアサシンは、スラム育ちのため文字があまり得意ではない。
ヴィ「シーナ様からお借りしたらしいんですが、踊り子が好きなら騙されないように読めと」
レ「シーナさんがすることは善だ。きっと正しい。読め。それで?どこ?」
本をのぞき込む二人。
ヴィ「酔っていないのに酔っている風を装い、自分よりたくさん相手に呑ませて財布をスルというのは、酒に強ければ大丈夫だということでしょう?」
レ「あのさぁ、まず大丈夫とかそういう問題じゃなくない?こいつ俺のこと金ヅルだと思ってるなって気づいた時点でイラつくじゃん」
ヴィ「いやいや、金目的じゃない踊り子なんているんですか?」
レ「それもまた極端だな。でもさ、酔ってしなだれかかる女なんて、絶対にまだ正気でいるに決まってんじゃん。昔、姉上が貧血で倒れたときに思ったよ、本当にやばいときは顔面からストレートに地面めがけて撃沈するんだなって」
ヴィ「それはそうですね。喉を掻き切られた人間は、真正面か横にぐだっと倒れます」
レ「なにその暗殺者情報。まぁそれは置いといて、ヴィーはこんなもん読まなくても大丈夫じゃないの?だって姉上の護衛って襲撃多いし激務だから、そんなところ行ってらんないでしょ」
ヴィ「そうなんですよねぇ。だいたい酒場なんて行ってにおいでも付けようものなら、純真無垢で可憐な主様の前にどのツラで立てばいいのか……!」
レ「キモッ。あれが純真無垢なわけないじゃん、天然だけどわりと邪心まみれなときあるぞ」
それにレヴィンは知っている。マリーが意外と「行けばいいじゃないの、男なんだから」と他人には寛容であることを。サレオス以外の男が何をしようとどうでもいいと思っていることを……。
レ「とにかく、これは俺がシーナさんに持ってくから~。返しにいくよ今から!」
ヴィ「え?あ、わかりました。では主様にそのようにお伝えします」
こうしてシーナの本は、誰にもロクに読まれずに返却されることになった。




