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いつ頃ですか?

バラが咲き乱れひらひらと蝶が舞う温室で寛ぎながら、シルヴィアが美しい笑みを浮かべながら言った。


「サレオス……逆にマリーからは逃げられなさそうね」


「え、シルヴィアまさか私のこと 追い人(ストーカー)認定したの!?」


「やだ、そういうわけじゃないわよ」


紅茶のカップを持って、クスクスと笑う。シルヴィアもイリスさんも何だか楽しそうだわ。


「でも……アガルタでたまたま知ったんだけど、サレオスのお兄様なんて好きな人に10日会えないのが嫌で結婚しちゃったんでしょう?私なんて冬休みに入って20日くらい会えなかったわ。つまりは、そういうことよね」


そう。私は、キスするくらいには好きだけれど20日離れていられる女なの。わかっているわ、まだまだ先が長いのよ!


「マリー様、こんな空気で非常に申し上げにくいのですが」


気まずそうなイリスさん。私は何かしらと思って首をちょっぴり傾げた。


「10日じゃなくて5日です」


「短っ!何それ、待てなかったの!?たった5日を!?」


私は絶叫した。5日はさすがに短すぎるわ!シルヴィアも唖然としている。知らなかったのね!


「ほんっとバカじゃないのカイム様!?そんなことするからトゥランが怖がられるのよ」


「シルヴィア、王太子様にバカって言っちゃったわね。それにしても5日はないわ」


イリスさんが「はは……」と力なく笑っている。言わなきゃよかった、と顔に書いてあるわ!


でもそれなら、私はやっぱり……!ついため息が出てしまうわ。

シルヴィアが私の肩にそっと手を置いて、「大丈夫よ」と慰めてくれた。


「マリー、元気出して!サレオスは昔からお父様やお祖父様の溺愛ぶりを見て、『俺はあんな風になりたくない』って言ってたんだから!我慢してるだけだから!」


うわぁ、ものすごく慰めてくれてる。なんかごめん!


「大丈夫よ、サレオスが叔父様みたいになるところは想像できないもの。息するみたいに愛を囁ける人は何人もいないでしょう?」


私は何でもないように笑ったけれど、シルヴィアは軽いため息をついた。


「好きなら好きって言えばいいのにね~。何をもたもたしてるのかしら。マリーみたいな子はさっさと手をつけとかないとすぐ盗られるわよ!?」


「いや、うちはお父様という強固な砦があるから、むしろ私を妻にできる人を見つける方が難しいと思うわ」


私が苦笑いすると、シルヴィアは興奮気味に身を乗り出した。


「そんなことないわよ!だって侯爵家でしょう?格上から申込まれたらそこで終了じゃないの!うちはお母様が断固として拒否するけれど、もし他国の王族にでも目をつけられたらどうするのよ!ちょっと根暗だし気が利かない男だけど、財力と見た目だけはあるからサレオスとすぐ婚約なさい!」


「ええ!?」


すぐに婚約してもらえるものならして欲しいんだけど……。私が言葉を発する前に、イリスさんがにこやかに割って入る。


「まぁまぁシルヴィア様、落ち着いてください。……っとまぁそんな感じですがサレオス様どうですか?」


イリスさんがにっこり微笑みながら話しかけた先には、ものすごく気まずそうな顔をしたサレオスがいた。


「いっ……!?いつからそこに!?」


ーーガタッ!


慌てて立ち上がった私はテーブルについた手を滑らせ、シルヴィアがとっさに支えてくれた。あ、危うく顔面を強打するところだったわ!


「どこから聞いていたの!?」


「兄上が5日で、というあたりから」


よ、よかったぁー!監禁妄想を新婚生活に置き換えていたのがバレたら、恥ずか死ねるわ!いえ、距離を置かれるかもしれないじゃない!あぶないー!


ほっとした私に対し、イリスさんとシルヴィアが優しい眼差しを向けてくれる。


「で、サレオス様。マリー様を誘拐・監禁するご予定は?」


「は?」


「ちょっ……!?イリスさん!」


なんてこと聞くのこの人は!サレオスがびっくりして目を見開いているじゃない!


「するわけないだろう!」


あ、してくれないんだやっぱり。うふふふふ……ショックだわ。ちょっと好かれてるんじゃ、とか思い上がってた自分を蹴ってやりたい。現実は厳しいわ!


「マリー!しっかり!」


「おい、マリーはなぜ落ち込んでいる?シルヴィア、俺がいない間に何を言ったんだ」


「あぁ、かわいそうに!マリー、大丈夫よ!サレオスが女の一人や二人、しっかり監禁できないようなヘタレだったら私が根性を入れ直してあげるから!」


「私なら大丈夫よ、本当に。ふっ……ふふふふふ」


「おいちょっと待て。一体、どんな会話をしていたらそんな話になる」


あぁ、前途多難だわ。キュン生産者の心を得るには、まだまだ努力と修行が必要なのね。ええ、がんばりましょう。



その後、私たちは温室での散歩とお茶を楽しみ、夕方前にはシルヴィアを見送った。




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