Ep.10"添い寝"
「キュゥゥッ!」
今俺はとあるモンスターと相対している。うさぎさん平原のレアモンスター。“フェイタルラビッツ”だ。こいつは頭に角が生えている白いうさぎだ。奴らが狙ってくるのは急所のみ。首、頭、心臓。それさえ分かっていれば
「怖くなぁい!」
「キ"ュァ"ア"ッ!!」
いや待て、その声うさぎが出しちゃダメだろっ! 首を的確に狙ってくるのでそれを回避しつつ獲物を振るう。しかし傷は浅い。
「ふっ!」
うさぎが着地する瞬間を狙って今朝回収していた石を投げる。その間に距離を取り構える。
俺はAGI1とかいう鈍足なので基本カウンター狙いだ。【カウンター】というスキルと【アッパーカウンター】というアーツも獲ることが出来たので今はそれを使っている。
【アッパーカウンター】は相手の攻撃をしゃがみこんで躱し、下から上へとかちあげるカウンターだ。
しかも【跳躍】と合わせれば力強い一撃となる神スキル――タイミングよく発動しないと不発になる――である。
「キュァアッ!!」
「やっ!」
また首を狙って飛び込んできた。
1度しゃがんで【跳躍】発動! 追加で【アッパーカウンター】発動!
今度はうさぎの腹にグッサリと食いこんだ。ボクシングのアッパーのように下から上へとさらに短剣をくい込ませ、振り抜く!
すると力なく地面に落ちていき、ポリゴン片となって消えた。その場に残ったのは角と毛皮のみ。
《【跳躍】がレベルアップしました》
ふぅ。疲れた。よし、帰ろう。
お金に変えてもう一度鍛治をする。でももう夜も遅い。続きは明日だ。もう寝よう。そう思い宿屋へ向かった。
☆ ☆ ☆
睡眠をしっかりとって朝ごはんをいただいた。元気モリモリだ。
今朝起きたら妹が添い寝をしていた。寝てはいなかったけど。まぁ、これはいつもの事なのでそんなに驚かない。妹は事後を装うのが大好きなのだ。
ログイン後、お金に変えに生産ギルドに向かう。宿を出ると目の前に大きな屋敷が建っていた。ミニポータルもあるので領主館なのだろう。ミニポータルを解放して、生産ギルドにワープ。これで最後。この街で迷うことも無くなる。
《特殊スキル【迷宮感覚】を取得可能になりました》
《特殊スキル【迷宮感覚】を取得しました》
生産ギルドにて今回はもっといい素材を買う。素材は“銅”だ。酸化していない綺麗な銅。10個で5000Gした。設備は先程と同じものを使う。
炉に火をつける。
十分に温まってきたら銅を入れる。あとは前と同じ工程を繰り返す。
真っ赤なうちに叩いて整形。冷えたら炉に入れる。それを繰り返す。
……熱い。粗末な銅よりも熱量が凄まじい。肌がやけるような痛さだ。って火傷になってる! 状態異常になってるよ! オートヒール何とかして!
炉から取り出し叩き始める。鋭く、薄く。軽く。叩いて、伸ばして、叩いていく。炉に入れ、取り出し、再開する。
ここに他の誰かがいたらこう思ったであろう。まるで音楽を奏でているようだ、と。
そして10本目が完成する。
できたっ!
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名称:銅の短剣(劣)
製作者:小魚K
耐久力:30/30
要求値:STR15
希少値:PM
品質:F
銅でできた一振。丁寧に心を込めて作られている。商品として売りに出せるまであと一歩。
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《レベルアップしました》
《【生産】がレベルアップしました》
《生産派生スキル【灯火の詩】を取得可能になりました》
《“初心者の短剣”より上位の武器を入手したため“初心者の短剣”は消去されます》
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【灯火の詩】
鍛治におけるクリティカル率の上昇(極微)。品質の向上補正(極微)。
その者は鍛冶場で歌を歌う。鋼で旋律を奏でる。時に激しく、時に優しく。その行為こそが芸術である。
――――――――――
……えっ。鍛治にもクリティカルとかあったの? もしかして普段はガァンガァンていう鈍い音だったのに、たまに混じってた澄んだカァンっていう高い音がクリティカルしてた音なの?
なんか損してた気分だ。もうちょい早く知りたかった。
まぁ、取得するけどね。
あと初心者装備ってそれより上位のものを手に入れたら消えるんだ。これからは耐久値もあるんだし気をつけよう。
ステータスはここをあー振ってこう。
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PN:小魚K
Lv:6
HP:45
MP:45
STR:21
INT:11
VIT:19
MIN:1
AGI:1
DEX:38
LUC:16
SP:5
スキル
【生産LvⅡ(Ⅲ)】
【跳躍LvⅢ】
【変装LvⅡ】
【念力LvⅠ】
【治癒体質LvⅠ】
【短命LvⅠ】
【植物知識】
【鉱石知識】
【魔獣知識】
【短剣LvⅢ】――【スラッシュ】
【カウンターLvⅡ】――【アッパーカウンター】
【迷宮感覚】
【灯火の詩LvⅠ】
称号
【薄命】
装備
武器:銅の短剣(劣)
頭:初心者の仮面
胴:初心者の革鎧(上)
腰:初心者の革鎧(下)
足:初心者の靴
右手:無し
左手:無し
アクセサリー:無し
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ふとおもったのだが、失敗したとも言える“粗末な短剣”は潰したらまた銅に戻るのではないか? だって銅しか使ってないし。と思ってしまった。
受付嬢のアイミーさんに聞いてみた。美人さんだ。近くには男避けの護衛さんが立っている。鋭い眼光だ。まぁ、それにもかかわらずアプローチするプレイヤーは後を絶たないのだけれど。
「んーまだ小魚Kさんの実力じゃまだ出来ないですね。私たちが代わりにやるとお金がかかりますよ?」
なんて言われた。今更だが現実の人と変わらないくらいに自然に話すんだな。凄い。
まぁ、金がかかるそうなのでやめといた。“銅”を買ったからまた懐が寂しいからな。
ただもう昼飯時だ。1度ログアウトして飯を食ったら兎狩りだ。
Tips
【カウンター】肉を切らせて骨を断つ。スキル発動時被ダメ軽減、カウンターによる与ダメ微増。モーションアシストはオンオフ可能。主人公はオフにしてる。
【灯火の詩】鍛冶師目指してるプレイヤーならたいてい習得できる。アーツでは無い。
主人公ステータス
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PN:小魚K
種族:人間
Lv:6
HP:45
MP:45
STR:21
INT:11
VIT:19
MIN:1
AGI:1
DEX:38
LUC:16
SP:5
スキル
【生産LvⅡ】
【変装LvⅡ】
【跳躍LvⅡ】
【念力LvⅠ】
【治癒体質LvⅠ】
【短命LvⅠ】
【植物知識】
【鉱物知識】
【魔獣知識】
【短剣LvⅢ】――【スラッシュ】
【灯火の詩LvⅠ】
【カウンターLvⅡ】――【アッパーカウンター】
称号
【薄命】
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運営「添い寝をしてもらいたい人生だった」
作者「がんば」
運営「いっしょにねよ?」
作者「断固拒否」
次回「Ep.10.5"掲示板"」