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愛するものを失い ~そして転生~

異世界で役立つ最強の職業は何かと考えた結果、醤油醸造職人が最強という結論に。

発酵技術をマスターした料理人の修行経験もある主人公が勇者のチート能力で無双しつつ

一緒に転生した奥さんとほのぼのライフを送る予定の異世界転生ものです。

 俺は村崎紫峰(むらさき しほう)

 ただの老舗醤油醸造店の醤油職人だ。

 農家の次男坊だった俺は何も考えずに大学の農学部に入学し、そこで俺が人生をかけて追及したいものに出会ってしまった。それが発酵という技術だ。

 家族は長男が家を継ぎ、悠々自適、大学卒業後も博士課程に進みありとあらゆる発酵食品の探求、海外へも留学しヨーグルト、チーズといった世界の発酵食品にも魅せられ学生生活のほとんどを発酵技術に費やした。


 しかし、俺も人間、大学卒業後は食うに困るわけにもいかず、親の紹介で地元の老舗の醤油醸造店に就職した。

 そこで俺は大学では習わなかった、現場での知識、老舗ならではの伝統の技術や歴史、俺は醤油職人という仕事に没頭した。

 俺は、ただ、発酵という技術、醤油という日本の伝統発酵技術を学ぶことが楽しかっただけなのだが、新製品や醤油以外の発酵食品との融合や技術の活用、ありとあらゆるアイデアを実現していくうちに、潰れかかっていたらしい醤油醸造店を立て直し、新しい産業を産み、地元ではちょっとした有名な発酵食品の会社へと発展させた。

 そこで、俺が発酵食品以外に初めて興味を持った存在、それがお世話になっている会社の社長の娘さん、祥子さんだった。


 彼女は、俺の6つ年下で研究馬鹿の俺をやたら世話したがり、食事、洗濯、掃除と、俺の生活に入り込み、俺のことを「シホちゃん」、「シホちゃん」とまるで女友達のように呼び、俺に絡んでくる、そんな女性だった。

 あるとき俺は新規事業ということで、会社の隣に本格的な発酵食品のレストランを立ち上げ、より発酵食品を消費者に知ってもらう活動に責任者として従事することになった。そしてその時に部下として手伝ってくれたのも祥子お嬢様だった。

 俺の大好きな発酵技術を一人でも多くの人に知ってもらう。俺にとっては願ってもない仕事だった。

 俺は仕事をしながら料理専門学校に通い、老舗のレストランや料亭で修行をしながら、会社のレストランも企画、運営する。それはとても大変な仕事だったが、発酵食品を利用した新しいレシピができるごとに、俺の発酵技術に対する愛情が満たされ、そのレシピを喜んでくれる祥子お嬢様の笑顔に心も満たされるのだった。

 そんな生活が続き当然と言えば当然なのかもしれないが、お互いに魅かれ合い、結婚を意識する仲になっていく。


 そして、俺の料理人としての修行も一段落し、本格的に自分の会社のレストランの総責任者として働き始めるとき、俺は一大決心をし、祥子お嬢様にプロポーズをしたのだった。

 俺は、その時の祥子さんの嬉しそうな顔を今でも覚えている。

 そして、俺の会社での業績も評価され、父親である社長からも結婚の許可をいただき、結婚式、晴れて夫婦となったのだった。

 その後は、夫婦経営のレストランも順調に業績を伸ばし、相乗効果で本体の会社の売り上げも伸び、忙しかったがとても幸せな夫婦生活を送ることができた。


 しかし、そんな幸せな生活も長くは続かなかった。悲劇は突然起こるものだった。

 いつものように自分たちのレストランを切り盛りし働く俺と祥子。

 お客様の食器をかたずけようと祥子が窓際のテーブルに近寄ったその時だった。


 突然飛び込む黒い影。巨大なダンプカーが俺達夫婦のレストランに飛び込んできたのだ。

 祥子はダンプカーの下敷きとなり即死、事故の原因はドライバーの飲酒と疲労による居眠り運転だった。


 レストランは保険で治すことができるらしいが俺の祥子を失った心の傷と祥子の体を直すことはできなかった。


 俺は、心労から、仕事を休み、祥子と一緒に暮らした自宅で祥子の写真を見ながらぼーっと暮らす日々を続けた。もちろん食事など喉を通る気もせず、気にして家に訪れてくれる俺の父親や母親、お義父さんやお義母さん、食事を作ってくれたり、冷蔵庫におかずを置いてくれたりしてくれたようだが、俺は食欲がなく、いや、生きていく気力がなくなっていた。


 そんな生活が続いたある日、いつもと同じように部屋に座り込み、祥子との記念写真をただぼーっと眺めていた俺。

 そして俺の頭に懐かしい声が聞こえる。


「シホちゃん」「シホちゃん」


 懐かしいな、祥子の声だ。

 俺は目をつむって懐かしい、愛しの妻、祥子の面影を思い浮かべる。


「シホちゃん」「シホちゃん」


 もう一度呼ばれる俺。

 目を開けるとそこは見慣れぬ光り輝く世界。


 目の前には若いころの祥子が立っていた。


 ああ、ここは天国か・・・。俺はそう理解した。


「半分正解だが半分は間違いだ」

 俺の頭上から声が響く。


 おれが声の元を探すように上を向くと

 巨大な人影、いや、神のような存在が大理石のような石でできた巨大な玉座に鎮座している。


「私はプロメテウス、かつてはお前たちの世界で神と崇められていたもの。」


「お前とお前の妻を生き返らせることを条件にやってもらいたいことがあるのだ。」


 妻? 祥子が生き返るってことか?


「まあ、正確には違うのだが、お前たちの住む世界とは別の世界、私が現在存在している、別次元のお前たちの言う異世界という世界に新たなる生として転生させてやろうという話だ。」

「もちろん夫婦として、同じ場所に、そうだな、若いころの姿で転生させてやろう。」


 それを聞いた俺は、疑うことも、詳しい話を聞くこともなく、二つ返事で了承する。

 祥子が生き返り、二人で暮らせるのなら、俺は悪魔にだって魂を売る。


「まあ、悪魔に魂を売られては困るのだが・・・。」


 で、祥子を生き返らせる条件とは?


「お前には勇者となって、私が今存在している世界、異世界の住人を救って欲しいのだ。」


 具体的には何をすればいい?


「今、その世界は、悪魔の侵攻を受けている。そして私には直接それらに干渉する方法がない。」

「そこでお前たちにその悪魔の軍勢を退け、その軍勢を率いる3体の悪魔を滅ぼして欲しいのだ」


 ちなみに普通の人間の俺が行って、そんな悪魔たちを倒すことができるのか?


「その為に、私がお前たちに勇者としての力を授けよう。」

「常人より優れた体を持ち、我の力の象徴である炎を操り、悪魔を葬る勇者となるのだ。」


 まるで子供のころに流行ったロールプレイングゲームみたいだな。


「まさにその通り。その世界は剣と魔法の世界、異世界の住民と協力して悪魔をその世界から退けるのじゃ」


 すまないが、いくつか条件をつけさせてもらえないか?


「なんじゃ、世界の理を大きく覆すことでなければ聞いてやろう。」


 まず一つ、祥子を戦わせたくはない。俺に祥子の戦う力を移すことはできるか?


「それは可能だ。ただし、あくまでも成長上限を上げるだけであって、いきなり悪魔を滅ぼせるような力は授けられん」


 了解した

 それと、もう一つ、祥子には、何かあった時に絶対に死なないように、死なない為の力は残して欲しい。


「わかった。お前に移すのは戦う力だけで、命を守る力はお前の妻に残そう。」

「そして、お前の妻には家を守り、お前を陰から助ける役割を任せるようにしよう。」


 いいだろう。俺にとって祥子に危険が及ばなければ、それでいい。


 最後に、悪魔を倒した後も、二人で平穏に暮らせる確証が欲しい。


「私の事は信じてもらうしかないが、向こうの世界での生活を保障する為にこれをやろう。」


 神がそういうと俺の指に宝石のついた指輪が現れる。


「これは、神の威光を示す指輪だ。悪魔の軍勢には効かないが、それ以外、住民たちからの無理強いや命の危険を感じた時は使うがよい。住民たちに逃れられない苦しみと恐怖を与える指輪だ。もちろん、悪用はするなよ。私がお前たちを滅ぼさなければならなくなる。」


 ちなみに、不老不死や時間を止めたり、時間を逆行させたりする力はもらえないよな?


「そうだな。あくまでも、向こうの世界の常識を超えない範囲の恩恵しか与えられない。」

「もし望むなら、お前たち夫婦の記憶を残したまま何度でも転生させてやることはできる。」

「人間の世界のルールの中で永遠に夫婦仲良く暮らすこともできよう。」


 それはいいな。これから先俺が祥子に嫌われることがなければ利用させてもらおう。


 では商談成立だ。俺はあなたに言われた通り、3人の悪魔を滅ぼし世界を平和にする。

 あなたは、俺たち夫婦の安息を保障する。


「最後に私からのプレゼントだ。お前達にに必要だと思う才能を一つずつ贈ってやろう。」


俺は、異世界のルールを壊さないもので今一番欲しい能力を思い浮かべる。

祥子も、思い浮かべたようで、俺に向かってにっこり笑う。


「では、二人を新たな世界に転生させよう。お前たち夫婦に神の加護があらんことを。」


 そして俺は、光に包まれる。

 目の前の祥子もにこっと俺に笑顔を見せて光に消えていく。



とりあえず、醤油醸造職人を夫婦で転生させてみました。

ストーリーはだいたい決まっているので暇ができた時に少しづつ更新していきたいと思います。

よかったら読み続けてもらえると嬉しいです。

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