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第19話 より悪い方

 その日の給食でも、冬葉はいつものように有の席へ向かう。見えない壁に牛乳をガンガン押し付けながらもどこかいつもと様子がおかしい冬葉。


「いやー、それにしても不審者って怖いわよねぇ。」


 そうだね。と相槌をうちながら、もぐもぐとパンを食べる有。


「下校中も1人だったら、気が気じゃないわよねぇ。」


 見えない壁に牛乳を押し付ける速度が加速していく冬葉。パンをゆっくりと飲み込む有。


「私は友達がいるからいいけど、友達がいない人はどうすればいいのかしらねぇ。」


 不自然に声を張り上げる冬葉と、どこ吹く風でシチューを飲む有。まだ、熱を持ったシチューに有の舌は少しやけどする。


 2人の間にしばらく流れる沈黙。冬葉は、もじもじとしながら有を見つめる。ガンガンと牛乳を見えない壁に押し付ける音だけが響く。


 有が2口目のパンをかじろうとした時、冬葉は吠えた。


「ちょっとあんた!このあたしが友達のいないあんたを誘ってあげてるのに!無視って何よ!」


 唐突に炸裂する冬葉節に、有は困惑する。


「そんなこと言われてもなぁ...。それに、僕は1人でも大丈夫だよ。」


 有の首が横に揺れる。冬葉はグッと言葉に詰まるが、退くことはできない。


「と、とにかく、放課後はあたしのところに来なさいよね!そうじゃなきゃ下校しちゃダメなんだからね!!」


 学校には泊まれないよぉ。とボヤく有に背を向け冬葉は自分の席に戻る。牛乳でびっしょびしょになった手をティッシュで拭き、来たる放課後に備える。



 そして、順調に学校生活は進む。もちろん放課後にも有への声掛けを忘れない冬葉。


「どうしてもって言うなら、一緒に帰ってあげてもいいわよ。」


 冬葉は腕組みをして、有を待つ。ひゅー、と冷やかす取り巻きの2人に対し、えぇ...。と露骨に困惑する有。そんな有を見て、冬葉は不満げにため息をつく。


「いい事教えてあげるわ、有。」


 冬葉は、一呼吸置いて有を指差す。


「悪魔は、より悪い方に取り憑くわよ!!」


 そう叫んだ後、さらなる追撃を行う冬葉。


「あんたと不審者!より悪いのはどっちかしらねぇ!!」


 決めゼリフをバシッと決め、大きな鼻息をムフーと吐いた冬葉。有は頭の中で、それって本当なの?と明理に確認する。そんな事ないよ。と笑って答える明理。


「そうだそうだ!冬葉をこんなに誘惑して、本当は不審者より有の方が悪いんじゃないのか!」


「そうだよ、有くん!有くんの不審者殺し!」


 取り巻き2人の熱も上がっていく。ちょっとあんた達、どっちの味方なのよ!と喚く冬葉を尻目に忍び足で教室を出る有。


 教室では、冬葉と取り巻きの2人がずっと騒いでいる。そんな喧騒を後ろに感じながら、有は下校する。

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