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第1話 いじめっ娘

「おい!有!放課後、屋上だからな!」


 そう言って、取り巻きの女子2人とくすくす笑いながら教室を出て行く少女。


 有と呼ばれた少年はため息をついて、机に突っ伏した。彼の昼休みの始まりはいつもこうだった。


 しばらく机に突っ伏した後、思い立ったように席を立ち、図書室に向かう少年。少年は図書室に向かう道すがら、少女との関係について、思いを馳せていた。


 さっき有に屋上に来るよう命令した少女の名は、堂島(どうじま) 冬葉(ふゆは)。そして、この少年の名は、有識(ゆうしき) (ゆう)


 有と冬葉は幼馴染であった。昔から仲が良くいつも一緒に遊んでいたはずが、中学に上がってから、なぜか有は冬葉にいじめられるようになっていた。


 給食では、有が苦手な牛乳を冬葉の分まで飲ませられ。体育では、わざと体操着を濡らされた後、無理矢理冬葉の体操服を着させられ。放課後は、毎日のように呼び出され、謎の説教を食らうなど、有は冬葉の嫌がらせにストレスを感じていた。


 そんな冬葉によるいじめから逃げるように有は図書室に通い詰めている。彼は、図書室に到着すると適当に本を物色する。


 先日、シリーズ物を読み終わった彼は、次はどの本を読もうかと本棚に目を通していると、ふと気になる本を見つけた。


 その本のタイトルは『願いを叶えるための悪魔の呼び出し方大全』であった。彼は、冬葉のいじめで疲れていたのだろう。迷わず、その怪しげな本を手に取り、図書カードにさらさらとタイトルと名前を書く。


 眼鏡をかけた図書委員の女の子に、その本面白いんですよ。と声をかけられるも、曖昧な返事を返すことしかできない有はそそくさと図書室から出ていった。




 午後の授業が終わり、いよいよ有にとって憂鬱な放課後の時間がやってきた。冬葉のいいつけを破って帰ろうかとも思った有であったが、あっという間に冬葉に首根っこをつかまれ、屋上に強制連行された。


 屋上にたどり着き、即ドアの鍵を閉める冬葉。取り巻きの女子2人も有の方を見てニヤニヤと笑っている。


 ドアを施錠し終えた冬葉は、これで良し。と呟くと有の方に向き直る。


「あんたさぁ、今日逃げようとしたでしょ?」


 徐々に有との距離を詰めていく冬葉。


「い、いや、逃げてなんかないよ。」


 冬葉に追い詰められるように、後ろに下がり、ついには手すりに背中があたってしまう有。


「ふーん。ていうか、あんた最近調子に乗ってるよね。」


 冬葉は手すりに手をつけ、有との距離をさらに接近させる。


「そんなことないです...。」


 有は横を向いて、なんとか冬葉の追随をかわそうとする。そんな有を見て、冬葉はふーんと言いながら、少し離れる。一安心した有であったが、次の瞬間、絶望することになる。


 冬葉は、がさごそとスクールバッグを漁る。取り出したのは水色の縄跳びであった。


「これなーんだ?」


 可愛らしい笑顔で、有に縄跳びを見せつける冬葉。有と取り巻きの女子2人はみるみる表情がひきつる。


「お、おい冬葉。それはヤバいって...。」

「そ、そうだよ冬葉ちゃん。流石にやめといた方が...。」


 冬葉を止めようとする2人であったが、冬葉はどこ吹く風であった。


「何?あんた達ビビってんの?」


 堂々たる冬場の様子にタジタジになる取り巻きの女子2人。


「ビビってるわけじゃねーけど、ほら、縄跳びは体育だけで使うものだし...。」


 そんな取り巻きの女子を一笑し、腕をまくる冬葉。そのまま、冬葉は有の体に縄跳びをくくりつけていく。


「冬葉ちゃん!やめてよ!」


 有の体に縄跳びが絡みついていく。徐々に動けなくなっていく有の体を見て、冬葉は満足げな表情を浮かべていた。


 取り巻きの女子はきゃーと叫びながら、手で目を隠し、その様子を指の隙間からじっと見ている。


「それじゃあ、仕上げね。」


 有の体にあらかた縄を巻き終えた冬葉は、仕上げに取り掛かる。余った縄の部分を手すりにくくりつけるのだ。


「冬葉ちゃん!そんなことしたら僕帰れなくなっちゃうよ!」


 じゃあ、ずっと学校にいればいいじゃない。そう言い放った冬葉の目は、縄跳びの絡みついた有の体に釘付けになっていた。


「これは、私との約束を破ろうとした罰だからね。ちゃんと反省しなさい。あと、縄跳びで手が汚れたから、あんたのハンカチもらうから。」


 そう言って有のポケットからハンカチを抜き取ると、冬葉は取り巻きの女子2人と颯爽と帰っていった。

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