第7話
魔物は4つのレベルに分けられているが、知性を持つものに限っては全く別の扱いを受けている。
発見した場合、すぐに協会へ連絡して保護(捕縛)に関しての指示を仰がなくてはならない。
魔物について科学で解明できない部分が多いため、直接情報を得る機会は本当に重要視されるのだ。
一応、「知性に気づかず祓ってしまった場合は報告をするだけで良い」といった規則はあるのだが、実際には近くの地区支部にて支部長とお話しをすることになる。
また最悪の場合、本部からお呼び出しまであり得るので、この規則は全面的に無視されていると言えるだろう。
祓魔師の規則違反には厳しい協会だが、協会側の規則違反には甘々なのである。
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「一旦…この話は置いておこうか……」
「はい。後でゆっっっくりと話しましょう……。つい報告を忘れてしまうくらいゆっくりと」
二人の顔は青を通り越して真っ白。
正に顔面蒼白といった感じだ。
「誤魔化せるのか??協会相手に?」
「その話は後でって決めましたよね!?さっさと矢野さんを迎えに行きましょう」
「そ、そうだな」
二人は矢野に「依頼は完遂したので、今からそちらに向かいます」と連絡を入れて、家を出た。
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二人がカフェに着くと、矢野が店の中から手招きしているのが見えた。
「中で話を聞くつもりなのか?」
「そうみたいですね」
そのまま店に入ろうとする春樹を瑞生が呼び止めた。
「ちょっと待って、日替わりのトーストとパンケーキだけ確認させてくれ」
店頭に置かれていた黒板を指差す瑞生は、そのまま店内へ引きずりこまれていった。
「おまたせしました」
拗ねている瑞生をよそに、春樹は話を始めた。
「全然待ってないですよ!1時間って聞いてたのに大体40分くらいで終わっちゃったせいで、フレンチトーストも急いで食べたんですからね!?」
「あはは…それは、申し訳ないです……」
矢島の前にはパンケーキやフレンチトーストなどが乗っていたであろう皿が3、4枚積まれていた。
「すみませーん、注文いいですか?」
席に着いた瑞生がおもむろに手を挙げて言うと、すぐに店員がやってきた。
「紅茶とコーヒーをお願いします」
「どちらもホットでよろしいですか?」
「紅茶はホットで大丈夫です。春樹は?」
「コーヒーはアイスでお願いします」
「かしこまりました」
店員はニコッとスマイルを残して戻っていった。
「トーストとかパンケーキとかじゃなくてよかったんですか?」
「お前のせいで確認できてないんだよ」
ニヤニヤと煽る春樹に悪態をつく。
「二人とも、メニューは見ないんですか?ここのナポリタン美味しいのでおススメですよ?」
「長居するつもりもないので大丈夫です。瑞生さんもそんな怖い顔してないで、報告をしてください」
「わかったよ…。
えぇと、依頼にあった奇怪な現象の原因であろう魔物は祓いました。ですので、おそらくその現象は収まると思われます。
とはいえ、我々がそう判断しただけで、祓った魔物が原因でない可能性も微弱ながらあるので、異変が続くようでしたら、早急に連絡してください」
「わかりました。あの、因みにその場合の依頼料って…」
「ウチはアフターサービスも基本料金に含んでいるので何も気にせずドンドン呼んじゃってください!」
「そうなんですね」
「瑞生さん、原因になった魔物の話はしないんですか?」
「矢野さん次第って感じなんですけど、気になります?」
「そういう聞き方をされると気になってしまいます…」
「じゃあお話ししますよ。まぁ大した話でもないんですけどね。
今回の魔物、矢野さんは姿は見てないと思うんですけど、スケッチがあるので見てください」
春樹がさっとメモを取り出し、スケッチを見せる。
「おそらく憑くタイプの子供の魔物です。前の住人についてきて、そのまま家に取り残され、矢野さんによって環境が変わったストレスで大きくなり、怪現象を引き起こしたのだと考えられます」
「ストレスで大きさが変わるんですか?」
「ほとんどの魔物はそうです。身体自体が周りの影響でできているので、環境の変化で姿形が変わってしまうケースもあるくらいなんですよ」
「そうなんだ…。あと、憑くタイプっていうのはどういうことなんですか?」
「魔物って、人とか物とかに取り憑く奴と、自由にふらふら彷徨ってる奴がいるんです。
で、取り憑くタイプは基本的に自分で動けないんですよ。だから、ストレスのある環境から逃げられなかったんです」
「なるほどです」
「あっ!矢野さん、少しいいですか?」
突然に春樹が口を挟んだ。