第6話
☆DOGEZA☆
「わかりました」
春樹は疑問を抱く様子がないまま、魔物の正面に立った。
そして、そのまま固まった。
「…」
思わず瑞生が呼びかける。
「どうした?」
「いや、なんというかこの魔物、結構かわいくないですか?
こういうのってぶちゃカワって言うんでしたっけ?」
春樹は眉根を寄せて訴える。
その様子に、瑞生も興味が湧いたようで、のそりと立ち上がり魔物の前に向かう。
「どれどれ。
あー確かに。ちょっと憎めない顔つきだな…」
「はい…」
二人とも、気難しい表情をしたまま、沈黙が流れる。
「…」
「…」
「仕事だからな!人ん家の魔物に感情移入とかダメだからな!!」
「わかってますって。魔物なんですから人ん家だからどうという話じゃないでしょう」
春樹は苦笑いを浮かべ、気まずい空気はすぐに散開した。
「んじゃ、改めて頼むぞ」
「りょーかいですっ」
瑞生が元の位置に戻ると、春樹は集中力を高め始めた。
春樹がゆっくりと瞼をおろす。
途端、周りの空気が凍ったかのように張り詰めた。
「ふー」
吐き出した息が白く残る。
勿論、実際に温度が冷えているわけではないため、あくまでも錯覚のはずだが…
「此処に顕れし一つの魂塊よ。
絡まりを解き、歪みを正し、理の統べる下へと直り給え」
魔物の足元から螺旋状に風が吹き荒れる。
開かれた春樹の瞳は冷たい光を放っていた。
『祓い』
魔物がやわらかな光を放ちながら、ゆっくりと小さな粒に変わり始める。
祓魔師にとってはおなじみの、『昇天』である。
春樹と瑞生がひと仕事終えた感を出し、ほっと一息つこうとしたその時のことだ。
薄くなり消えかかっていた魔物が一瞬眩しい光をはなった。
「バイ…ば、イ…………」
「「!!!!!!」」
瑞生と春樹はお手本のように驚愕し、固まってしまう。
そんな二人をよそに、魔物は“ふっ”と姿を消した。
「…………」
「…………」
魔物がいなくなってから秒針が一周するくらいの間、二人はピクリとも動かなかった。
そして、ようやく瑞生が口を開く。
「……しゃべっ…た?」
「……喋り…ましたね…」
二人はギシギシと音を立てるように首を回して向き合う。
「知性……あったって…こと?」
「…ですかね………」
二人の頭はフル回転して、うっすらと湯気をあげている。
そして………
「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!」
「どうしよう………………………………………………」
処理しきれずに発狂した。
すいませんでした。