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祓魔師の(非)日常!  作者: 忠野 習作
子供の魔物
5/11

第3話

翌週土曜日

連日の雨によって桜はほとんど散ってしまっている。


あれから春樹と矢野が連絡をとり合い、当日の予定を決めた。(瑞生は一切関与していない)

集合は14時、矢野宅の最寄り駅改札前となった。




のだが、現在13時・沢野祓魔相談所にて


沢野瑞生…………未だに寝巻きである。

春樹は「15分までに出ないと間に合いませんよ〜」と言って先に家を出てしまった。


果たして瑞生は約束の時間に間に合うのだろうか…………





……………………………………


間に合わなかった……


「すいません矢野さん…30分も遅れてしまって」


「遅れた割にはきちんとした服装ですね……」


矢野の言葉に春樹はため息をつく。


「瑞生さんはこういう人なんです。サッと着替えて来ていたら、歩いてても間に合ったはずですよね?」


「いや、そうなんだけどさぁ、仕事はきちんとした格好でやらないと、社会人としてちょっとダメかなっていう心がけだよ。矢野さんならわかりますよね?そういうの」


悪びれる様子はない。


「共感を求められても困ります…。というか、それで遅れるほうがダメなんじゃ……」


「そうですよ。『社会人として』朝寝坊からの遅刻はダメでしょう」


「はい、すいません…」


瑞生から先程のような威勢は無くなっており、今はまるで塩をかけられたナメクジのように縮んでしまっている。



「よく引き合いに砂糖が出てきますけど、浸透圧の話だから小麦粉とか片栗粉とかでもいいらしいですね」


「なんの話だ?」


「なんでもないです。早速ですけど行きましょうか。矢野さん、案内してもらえますかね?」


「わかりました。付いて来てください」



……………………………………


道すがら、矢野が話し始めた。


「そういえば私、薄くですけど魔物が視えるようになったんです。

聞き方が良くないかもしれないんですけど、私に何かしたんですか?」


矢野は二人に疑いの目を向ける。


「まあ、少しだけね。別に大したことはしてないんですけど、怪現象の原因は視えた方がいいかなと思いまして。

勝手にしちゃって悪いなーと思ったんですけど、矢野さんの体質だといつかは視えるようになってたと思います」


「別に構わないんですけど…できれば先に言っておいて欲しかったです。びっくりしちゃったんで。


……と、着きましたよ、そこのアパートです」


矢野が指差したのは築40年ほどのアパート。

こまめに塗装されているのか、パッと見たところボロい印象は受けないが、窓枠や階段からは多少の年季が感じられる。


「あーなるほど。矢野さんの部屋ってあそこですよね、二階の一番奥の」


「えっ、そうですけど、なんで?やっぱり()()んですか?」


「あのレベルのやつはどこにでもいるんですけど、あそこにいる奴はちょっとトゲトゲしてるというか、敵意をばらまいてる感じがするんですよ。

この目で見ないことにはなんとも言えないんですけどね」


「矢野さん、一旦一緒に覗いてみませんか?もしかしたら見覚えとかあるかもしれませんし。

怖いのであれば僕と瑞生さんだけで行きますけど」


「是非!一緒に行かせてください!!」


矢野は目を輝かせて即答した。




……………………………………


「じゃあ開けますね」


瑞生がドアノブに手を伸ばすのを、矢野は固唾をのんで見守っている。


ガチャッ……キィィーー


「いるな」


「いますね」


扉の先には一匹の魔物がいた。

高さは70cmほどで、ダルマの様な形をしている。

後ろ向きであるため顔の様子はうかがえないが、薄暗いオーラを放っている。


「えっ。嘘、私視えない…」


「あのくらいのレベルだと、やっぱり一般人には厳しいですね」


「ああ、レベル1だな」




魔物は基本的にレベル1〜4で分類される。

簡単に説明すると以下の通りになる。


レベル1 : 多くの魔物はこれにあたる。一般人には視えないことがほとんどで、被害を出すことは極稀。(というよりも被害を出せるほどの力を持っていないことが多い)


レベル2 : 一般人に視えるくらいの魔物で、その中でもあまり害を及ぼさないもの。


レベル3 : 一般人に視えるくらいの魔物で、害を及ぼす可能性があるもの。または、小さな被害を出したもの。


レベル4 : 大きな被害を出したもの。または、小さな被害を出し、さらなる被害を出す恐れがあるもの。




また、知性を持つ魔物はネームドとなり祓魔協会に保護されたり、監視下に置かれたりして管理される。


ちなみに祓魔協会とは、祓魔資格の発行や魔物の管理、祓魔師に対する援助などを行う、世界的な組合である。



「レベル1の魔物が被害を出すなんて珍しいですね」


「ちょっと大きくなってるな」


「あの、さっきから話についていけてないんですけど、ほんとにいるんですか?」


自分の視えない魔物の話をする二人を、矢野は訝しむ様に見つめた。




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