2 透明なガラス瓶
「…とりあえずそこに座れ」
私はルアさんに促されソファーに座った。義父はと言うと、泣きながら部屋を出て行った。まだ仕事が沢山残ってるかららしい。
「お前にはコレを使う」
コトリとテーブルに置かれたのは透明な液体が入ったガラス瓶。そこまで大きくは無いが、5歳児の手と比較すると結構わかりやすい。窓からの光でガラス瓶が反射し、キラキラとしていて綺麗だった。
「お前はまだ5歳だろ?普通は10歳程度はある前提で属性を調べるんだ。そのくらいじゃないと魔力は流せないからな。属性も安定しない」
「じゃあ属性は分からないんじゃ…」
最低限の年齢とは3歳程離れている。魔力の流し方なんて知っている訳も無い。
私は悩んでいる最中だと言うのに、ルアさんは私を眼中にないようだ。淡々と準備を進めて行く。不意にこっちを見たと思うと、スっと手を出された。私は意味が分からず頭に?を浮かべていると、ルアさんは盛大に舌打ちをしながら私の腕を掴んだ。突然の事でビクッと体が震えてしまい、ルアさんは目を細めた。え、言葉で言って欲しい…。
「まだ魔力の流し方分からないだろ。慣れれば簡単だが、分からない奴には分からないままだ。…お前はどうなんだろうな?」
「は?」
いきなり話を振られ思いっきり素が出てしまったが、そんな事はどうでもいいと言うふうに、ルアさんは話を続けた。
「俺がまだ魔法学校に通っていた時にいたんだ。魔力は有り余っているのに、魔力の流し方が分からずに実技が学年最下位だった奴が。…馬鹿だよな」
そう言っているルアさんの目は哀愁が漂うものだったが、私は聞くことじゃないと見て見ぬふりをした。人に知られたくない事は誰にだってあるものだから。