おばばとの約束
絵のような世界、のように見える。
天気も良くて、暖かくて・・・
縁側というより、天国みたいで、心地いい。
今日は幼稚園はお休みなんだ。
だから、おばばの家の縁側で暇つぶし。
本当は、おばばの家に来たくなかった。
でも、ユミちゃんも、ユウくんも、マキちゃんも、お出かけ。
だから、お母さんがココに行きなさいって。
ココっていうのは、おばばの家だったんだ。
どうせ家にいても、つまらないし、久しぶりに行こうと思った。
おばばは僕を、優しい、お日様みたいな笑顔で、迎えてくれたんだ。
「大きくなったね」
おばばの言葉は、魔法のように
僕の不安を消したんだ。
「ここに来るの、いやだったかい?」
「そんなことないよ」
はっきり言った。
本当は嫌だったけど、嫌だったことも忘れた。
「さぁ、あがりなさい」
おばばは、神様のようだった。
暖かい、柔らかいしぐさで、僕を縁側まで導いた。
「今も、誰かがどこかで死んでるんだよ」
おばばの声が、僕の心に突き刺さった。
「どうして?」
「人って、たくさんいるだろう?」
「うん・・・」
「みんな、生まれた年や日にちが違うだろう?」
「うん」
「こんな話は、難しいかもしれないねぇ」
「お話して」
「君は、年寄りが早く死ぬと思うかい?」
「うん・・・」
「君はまだ若い、子供だから、病気にかかることは少ないだろうけど」
「病気?」
「そう。でも、事故にあうかもしれないだろう?」
「うん」
「だから、いつ死ぬかわからない」
「こわいね」
「でもね、死ぬことはこわいことじゃないんだよ」
「え?」
「人間は、いつかは死ぬんだよ。死なない人間のほうがこわいだろう?」
「うん、こわいね」
「だから、死ぬことをこわいと思っちゃいけないよ」
「うん」
「一日一日を大切にして、生きていることを誇りに思いなさい」
「はい」
おばばの言葉は、優しかった。
生きていることを誇りに思う。
おばばと初めて約束をした。
大切な。
常に守らないといけない。
だけど、難しいことじゃない。
今日、おばばに教えてもらったことを忘れない。
空気は澄んで、空は青い。
静か。
平和な日々を、つないでいく。
おばばの家に来てよかったと
初めて思えた。
そして、またおばばに会いに来ようとも、思った。
つまらない小説をお読みいただいてありがとうございました。おばばとの約束、どうでしたか?ご感想いただけましたら、たいへん嬉しく思います。