瞳の色
いつもの、HR。
何も変わらないいつも通りだったのに。
その日は違った。
腰まで届きそうな長い髪。
髪に負けない背の高さ。
はっきりとした大きな目。瞳は澄んでいて、どこまでも見通せそうな色をしている。
なにより姿勢ってこんなに良くなるんだと感心するほどだった。
すぐに転校生だとわかったけれど、この時期に?
変だなと思っていたら、先生から紹介があった。
なんでも海外からの転勤で親についてきて、日本に戻ってきたらしい。
日本語も流暢で自己紹介を済ませた。
関わることなんてないだろうなと思っていたが、不思議なことに、その日の昼休み、彼女と食事をとることになった。
いつも食事をとるメンツは1人はサボり、1人は最近できた彼女が手作りの弁当があるとかで、購買に向かっている途中、迷っていると彼女を見つけ声をかけた。
同じクラスなのはすぐわかってもらえたようで、購買と食堂はとても近いので、途中まで送っていことになり、道すがらなんでいま日本にきたのか聞いてみた。
なんとなく海外にいた方が良い話じゃないかと思っていたので、気になっていた。
なんでも日本での記憶は殆どないらしいが、親の話や、自分の生まれた場所の景色を見てみたかった。
転勤についていくは自由だったようだが、迷わず日本に来ることにしたそうだ。
そんな話をしていたら食堂に着いたので、入り口で別れた。
なんとなくまたねと告げ、僕は贔屓にしているあんパンと、コロッケパン、豆乳を買って屋上で食べることにした。
秘密の場所だ。僕くらいしか知らないし(誰とも出会ったことがないからという曖昧な理由だが)今時どこも屋上なんて入れないと思うが、
3年の棟だけは屋上の鍵が壊れている。
だからこっそり、1人の時だけ来るようにしている。
友人は大事だが、時には1人になりたい時がある。
疲れるとは言わないし、家に帰れば部屋で1人にもなれる。
けれど、本当は人と会わないといけないところでたった1人になれる瞬間は自分の心を自由にさせてくれる気がして、、この場所とこの時間は唯一の僕の小さい世界から解放されたような気持ちになる。
食事をさっと終えて、イヤホンを付け寝転がる。
お気に入りの音楽を聴いて、雲の流れを見つめる。
ふと、転校生のことを思い出す。
綺麗な女の子だったな、澄んだ青空は彼女の瞳の色を思い出させた。