魔術の強さ
放課後、私はジュリアとの戦いに向かった。
ジュリアたちを恨んでいないと言ったら嘘になる。彼女たちの行いのせいで何度も心を折られた。だが、何も仕返しをしたいわけではない。せめて私に謝ってほしい。今までごめん、と。そしてもういじめなんてしないでほしい。
◇
闘技場に入ると、そこにはたくさんの生徒がいた。どうやらジュリアたちが呼び込んだらしい。彼女たちは私をとことん貶めたいみたいだ。
「あらあら、ちゃんと逃げずに負けに来たのね?えらいじゃな〜〜い!」
「御託はいいから、さっさと始めましょ」
「……あいかわらずイライラさせてくれるわね。いいわ、始めましょう。審判はなしでいいわよね?」
「ええ、いいわ」
「じゃあ早速……死になさいッッ!!ファイアーボールッッ!!」
ジュリアは始まりの合図も言わずに魔法を撃ってきた。対する私は一歩も動かない。ただ迫ってくる炎の弾を見つめるだけだ。
「あははッッ!やっぱり口だけみたいね!さっさとくたばりなッッ!!」
私は静かに魔術を構築する。それはジュリアが放った魔法と同じ炎属性の魔術だ。
「火炎の壁」
私の前に炎で出来た壁が現れる。ジュリアが放った魔法は壁に当たって、そのまま壁に飲み込まれる。
「う、嘘ッッ!!??」
これは以前ウルドさんから聞いた、魔術で魔法を無効化する方法だ。
ーーいいか?魔法は魔術の劣化版と考えていい。ということは相手が撃った魔法と同じ属性の魔術を発動すれば、相手の魔法はこっちの魔術に吸収される。これが出来たらどんな魔法でも無効化することが出来る。
私はその教えを忠実に再現した。これで私は魔法使いには絶対に負けない。
「くっ、このッッ!!」
ジュリアは懲りずにファイアーボールを撃ってくるが、全て私の魔術に吸収される。もはや私の勝ちは揺るがないものとなった。
「さあ、終わりにしましょうか」
「ふ、ふざけんじゃないわよッッ!!ファイアーボール!」
ジュリアは何度も撃ってくる。やっぱり頭は良くないみたいだ。
「火炎の弓矢」
炎でできた弓矢を作り、それを放つ。炎の矢はファイアーボールを貫通してジュリアの頬をかすめる。
「まだやる?」
「い、いえ……もういいです……」
ジュリアは負けを認めた。終わってみれば意外と呆気なかった。
私はその場に座り込むジュリアを横目に闘技場を後にした。