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最強はオジサン  作者: 日本武尊
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第1章 最強の男4

「え?面倒くさいのでお断りします」


第一声であった。

団長専用に造られた自宅に、義理の父である魔導騎士団長オリバーと偵察情報部隊長ハリソンの二人が、揃って14歳になるローガンに説明に来たのだ。

身長は165cm程度、顔にはまだ幼さが残っている少年には、どうでもいい話でしかなかったのだ。


「第一、魔導騎士団に興味もそんなにないし。あ、そうだ!ジョシュアを替わりに戦わせてあげなよ。あいつなら結構いい線いくと思うよ」


ジョシュアとは今年12歳になるハリソンの一人息子で、現在はエンプレスト城に入り、皇帝の第一皇子ヘンリーの世話係として仕えている。ローガンとともに、オリバーやハリソンから剣術と魔法・魔術を学んでいた。

ローガンの剣術はすでにオリバーやハリソンを凌ぐ実力であるが、魔法は基礎的なことができるだけであった。

一方、ジョシュアは剣術、魔術ともに才能を開花させており、剣術は一般の帝国兵士程度であれば軽くあしらうことができる。また魔術に関しても、魔術師を名乗るレベルに達しており、その魔力量は魔導騎士団最強といわれるエドワードを越えているといわれるほどだ。


「もうその話は終わりでいい?そろそろヘンリー皇子のところに行かないと」


ローガンは傍らに立て掛けていた黒い剣を掴むと部屋から飛び出した。


「まったく、取りつくしまがない。魔導騎士団に入るいい機会なんだがな」


「ハリソン、やはり無理にやらせるべきではないのかもしれん」


オリバーは肩を落としながら呟くように言った。


「何を言うんですか、団長。あいつは絶対この国のためになる男です。我々が二人掛かりでなんとか対等、いやもしかしたら、まだ本気になっていないかもしれないんです。この先、再び“人ならざる者”が現れた時、この国を、世界を救えるのはあいつしかいないのですよ」


“人ならざる者”は約1000年以上前に世界を闇に包んだという。300年の歴史があるエンプレスト家に伝わる伝説であった。1000年後に再び現れるであろうという言い伝えは、皇帝と魔導騎士団長にしか伝えられていない。


「伝説か。そんな伝説を信じているのはハリソン、君くらいしかいない」


「そんなはずはありません。何故あなたは私にこの伝説を教えたのですか?信じているからこそでしょう」


ハリソンは強い視線でオリバーを見た。雷の魔導を極めたハリソンだからこそ感じる“何か”は、悪い予感でしかなかった。




エンプレスト城からさほど遠くない魔導騎士団長の屋敷を飛び出したローガンは、ゆっくりと歩いていた。


《ご主人様、よろしいのですか?》


「何が?」


ローガン以外には誰もいないが、丁寧な女性の声と会話している。


《お父上様とハリソン様の話です》


「だって興味ないんだもん。それに魔導騎士団ってなんか面倒くさそうじゃん?俺はもっと自由に生きたいんだ」


《魔導騎士団に入ることは名誉なことなのでは?》


「それこそ興味ないよ。もうこの話は終わり。それからもう黙っててね。みんなに見られると頭がおかしい人だと思われちゃうから」


《承知しております》


あっという間にエンプレスト城の城門にたどり着く。

いつものように門番に挨拶し城門をくぐると、エンプレスト城内にある第一訓練場に足を向ける。とてつもなく広く、複雑な造りになっている城内ではあるが、何度も通っているため迷うことはない。


「遅いですよ、ローガン」


第一訓練場には二人の少年が立っていた。

一人は幼いながらもすでに気品と威厳を兼ね備えた雰囲気を纏う金髪の少年、もう一人は濃い茶色の髪を短く刈り込んだ意志の強そうな眼差しを持つ少年だ。

次期皇帝ヘンリー皇子と、ハリソンの一人息子のジョシュアである。


「ヘンリー皇子、ローガンが遅いのはいつものことですから」


今年で12歳を迎えた二人は、幼いころからずっと一緒にいるため非常に息も合っている。


「二人してバカにしてるよね?っていうか、俺の方が二つ歳上だから。呼び捨てにしないでもらえる?」


「細かいことを気にしすぎですよ、ローガン。さあ、早速稽古に入りましょう」


ローガンを含め、三人の仲はとても良かった。兄弟のような関係である。


「細かいことって、はあ。まあいいや。じゃあいつもの通り剣術の稽古をしてから、魔術の稽古をするってことで。

ジョシュア、訓練用の木剣持ってきて」


ジョシュアは了解と頷くと、訓練場の壁に収められた木剣を取って二人に手渡した。


「今日はどっちからやる?」


ヘンリー皇子が木剣を構えながら一歩前に出る。


「私からお願いします」


「じゃあ、やりますか」


ローガンは剣を下げたまま自然体の構えをとる。その構えはゆったりとしたものだが、隙はまるでない。

ヘンリー皇子の剣術もすでに大人の領域に達してはいるが、まだまだである。


「こっちからいくよ」


ローガンはそういうと、軽く打ち込んだ。上段からの切り下ろしである。ヘンリー皇子はなんとかそれを受け止めるも、そこから変化する剣の軌道についていけない。


「皇子、剣は受け止めちゃダメだって、いつも言ってるよね?可能な限り“流す”か捌かないと」


「わかってはいるんですが、あなたの速さについていけないんですよ」


ヘンリー皇子は首を横に振るように言った。

ローガンは一度間合いをとると、剣を肩に担いだ。


「皇子は身体強化した状態にしてからやりますか。どうせならもう少し実践的したほうが稽古にもなるし」


わかりました、と頷くと、ヘンリー皇子は眼を閉じてゆっくり呟いた。すると、その身体の周りに風を纏う。

ヘンリーは風の魔法を得意としていた。風を身に纏うことでその動きを加速させることができるのだ。


「お待たせしました。それではいきます」


剣を構え直すと、ヘンリー皇子から攻撃を仕掛けていく。先程より数段速い打ち込みであるが、ローガンはそれを淡々と受け流す。

ヘンリー皇子の剣の軌道に合わせるように剣を当てる。身体を崩さないように次々と打ち込んでいくが、横凪ぎの剣を下から合わせられたヘンリー皇子の上体が流れた。

それを見逃すことなくローガンは剣を突きだすが、二人の間に風が巻き起こると、弾かれたようにヘンリー皇子の体が後退する。


「今のはいい動きだね。無理な体勢を維持するより、一度間合いを切ってしまうほうが次の動きに繋ぎやすいからね」


ローガンは剣を構え直すが、ヘンリー皇子は肩で息をしながら剣を下ろした。


「はぁ、はぁ。もう身体がついていきません」


身体強化の魔術は一様にして繊細な魔力コントロールが必要である。全力で動きながらも、それに合わせて魔力をコントロールしないと、身体が違う方向へ向いてしまうからだ。ヘタをすれば、腕や足があらぬ方向に動いてしまい自滅してしまう。12歳でこの操作を行える者はほとんどいないだろう。


「じゃあ次はジョシュアね。ヘンリー皇子は休んでて」


ジョシュアは剣を構えながら前に出てくる。呟くように視線をあげると、バチバチと身体が光る。


「僕は最初から本気でいくからね。油断してると怪我じゃすまないよ」


ローガンはニヤリと笑うと自然体になる。


「いつでもどうぞ」


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