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最強はオジサン  作者: 日本武尊
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第3章 未開の大地4

山を下って真っ直ぐに堀に囲まれた塔に向かった。走ること数分で目的地に到着したローガンは、堀に沿って塔を観察しながら歩いている。


「古い造りだな。随分昔に建てられたもののようだ」


塔は整形された石でレンガのように組まれた、3階建ての建物くらいの高さがある。崩れている様子はないが、陽の当たらないであろう場所には、緑色に侵されている。苔がびっしりと生えているのだ。また、堀に水はなく、伸び放題になっている背の低い草が所々にある。手入れをされていないようだが、堀自体に崩れた箇所はない。

塔の入り口が2ヶ所あることを確認したローガンは、そのまま壊滅した街に向かった。そのほとんどが瓦礫と化した建物の中に、僅かではあるが住人だったであろう者達の生活の痕跡がある。かなりの時間が経過していることが確認できたが、それ以上の手掛かりになりそうなものはない。

とりあえず街を一通り見て回ると、塔へと足を向ける。堀には橋のようなものが掛けられていた形跡はあるが、今はなくなっている。長い年月が経過したことにより落ちてしまったのか、意図的に落としたのかはわからない。15メートル程の幅の堀を飛び越える。


《中に何かあると思われますか?》


「複数の気配が僅かにある。堀の外からはわからなかったがな」


ローガンは扉に手をかけると、躊躇うことなく開けた。目の前にある光景に目を見開いていた。


「!?」


その光景は異常なものであった。

外から見た塔は十数メートル程度の奥行きしかなかった。だが、中に入るとかなりの広さがある空間が広がっていたのだ。奥行きと左右に100メートルほどもある広い空間の中央に螺旋階段があり、その前に剣を持った3人の男達がいるのだ。しかも、その内の1人は見覚えのある人物であった。


「ようこそ、ローガン。待ってましたよ」


優雅な動作で恭しく頭を下げた中央の男は、白黒の装束に白金で加工された軽鎧を身に纏っている。


「生きていたのか?」


驚きの表情を隠せないでいるローガンに笑顔で答えるのは、20年前の六国連合軍との戦争で消息を絶っていた、当時の魔導騎士団最強と謳われたエドワードであった。


「私にもよくわかりません。気がついた時には、ここにいたのでね」


目の前にいるのは間違いなく、エドワード本人である。

何よりも不思議に感じているのは、彼が当時のままの姿であることだ。20年の時が経ち、普通ならば歳を重ねているはずであるが、明らかにそれがない。


「不思議に思っているのでしょう?私もそうですよ。長い時間をここで過ごしたはずなのですが、それほど長い時間が経っていないように感じていますから。あの時は私の方が年上でしたが、今は君の方が年上のようだ」


詳しいことはわからないが、当時は20代前半くらいであった。変わっていないと仮定すればローガンの方が一回りは歳が上になっているということになるからだ。

とりあえず今の状況を飲み込むことしかできないローガンは、なんとか冷静になってあとの2人についても観察してみる。

若干エドワードよりも歳上くらいか。2人とも20代の後半くらいで、1人は逞しい体つきで身長も高く、軽装ではあるが通常よりも大きな剣を背負っている。もう1人はスマートな体型をしており、軽鎧を身に付けている。特筆すべきは両方の腰に同じくらいの剣を提げていることだ。おそらく2刀流の使い手だろう。

3人に共通すべきは、3人ともかなりの力量があると推測されることだ。負ける気はしないが、油断は禁物であった。


「質問してもいいか?」


「答えられることであれば、答えますよ」


「その階段の先には、誰かいるのか?」


いくつか疑問はあるが、それを聞き始めれば長くなりそうなので止めておいた。焦るほどでもないが時間をそれほどかけたくはない。実力が高そうな3人がここにいる理由があるとすれば、何かがこの先にあるからだと思った。


「意外でした。そんなことを聞くとはね。急いでいるようですが何か理由が?」


「答えるつもりがないなら別にいい。お前らを潰すだけだ」


ローガンは淡々といい放つと、腰の剣を抜いた。始めから期待をしているわけではない。目的はただ先に進むことだけだからだ。


「お仲間の心配ですか?それなら大丈夫ですよ。あの方の偵察部隊が発見しましたが、何もしておりません。目的は君だけですから」


右の男が背中にある大きな剣を抜いて前に出る。歩く姿に隙はなく、剣を構えた途端に禍々しい殺気を放つ。


「あの方?」


エドワードの言葉に前に出てきた男を無視するように呟いた。強大な殺気に普通ならば臆してしまうところではあるが、ローガンにそんなことは関係ない。急ぐ必要はなくなったようだが、いろいろ知っていることを聞くチャンスのようだ。


「ついつい口を滑らせてしまいました。ではこうしましょう。一人倒す毎に私の知っていることを話しましょう。ただ、そう簡単にはいかないですよ。彼は西大陸の英雄と謳われた、ディランという者です。ほとんど喋ることはありませんが、実力は相当なものですから」


ディランは大剣を軽々と片手で構える。まるでナイフでも扱っているような素振りである。相当な腕力を持っているに違いない。

一方、ローガンはいつものように自然体で右手に持った剣をだらりと構えている。


「一人ずつでいいのか?俺は3人でも構わないが?」


「それでは面白くありませんから。今の君の実力を見せてください」


その言葉を待っていたかのように、ディランは大剣を担ぐようにして走り出した。猛烈な速度から繰り出す一撃は相当な破壊力になるだろう。

だが、ローガンは左に僅かに体を開きその一撃をかわす。重たい一撃ではあるだろうが、その初動から予測できるような攻撃はかわすことが容易であった。振り上げた剣はディランの右腕を斬り飛ばし、さらに返す剣で首をはねていた。

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