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最強はオジサン  作者: 日本武尊
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第3章 未開の大地2

「俺が“人ならざる者”だということは、俺も神の力を受け継いでいるということなんだな?」


《多分ではありますが、そう考えるのが妥当でしょう。御主人様の身体能力は、明らかに人としてのそれではありませんから》


ローガン自身も、明らかに普通とは異なる身体能力であるとは感じていたが、まさかそれが神の授けた能力だとは思ってもみなかった。


「そうか。じゃあ俺がお前を持つ意味とは何なんだ?」


少しずつ疑問は解消されていくが、全てではない。


《それは私にもわかりません。私が知る限り、御主人様のご両親には特別な力はありませんでしたから》


ローガンの持つ漆黒の剣が意識を持ったのは、約2000年前に遡る。

その時代の人々は強い力を持っており、凄まじいほどの争いが頻発していた。その力を当時は“能力”と呼称されており、それらを扱う者達を“能力者”と呼んでいたが、世界中の気候や地形すら変えてしまうほどのものもあった。そのような争いや戦いの中で、一人の女性が立ち上がった。彼女は一振りの剣を携え、単身その争いの渦中に入っては争いを収めていった。

彼女のやり方は至極単純なものだ。争いや戦いを収める方法として、能力を扱う者達全てを滅ぼしていくことである。彼女には不思議なことに“能力”が通用しなかった。それが彼女の“能力”であったのだ。

“能力者”達は協力し彼女の殺害を試みるも、その“能力”は通用しないため、物理的な方法を選択する他なかった。だが、それまで“能力”に頼りきった戦いばかりをしてきていたために、物理的な戦闘手段が確立されていなかったのである。それでも数にものを云わせた戦いは、彼女を追い詰めていく。それでも彼女はその戦いを止めることはなく、いつしかその剣は人々の血で漆黒に染まっていったのである。“彼女”の意識が目覚めたのは丁度その頃であった。

所詮“人ならざる者”も人間である。数多の“能力者”を滅ぼした彼女も命は尽きる。

長い年月を過ごすなかで、妖刀として封印されていた漆黒の剣は、一人の男が手にすることになる。ローガンの父となる男だ。男は、手にすれば命を落とすと云わていた妖刀を、ただの好奇心で手にいれた。彼とその妻は、一人の赤ん坊を残し命を落とす。


「そういえば、俺の両親のことも聞くのは初めてだな。興味すらなかった」


《御主人様は初めから聞かれることもありませんし、気にするような素振りもありませんでしたから。まぁ、少なくとも御主人様は私を手にし、私の最初の持ち主と同じような運命を背負われておられます。この先どのようなことになるのでしょうね》


随分と歩いていたが、周囲には何もない。小舟を着けた位置から、周囲5キロ圏内には気配すらない。元々、陽射しが少ないのか天候のせいなのかはわからないが、通常よりも薄暗い上に木々に覆われた周囲は、夜の闇に包まれていた。


「とりあえず、ここで野宿でもするか」


腰の剣を取り外し、ローガンは近くの木にもたれ掛かるようにして座りこむと、剣を傍らに置いた。


《無用心過ぎるのでは?》


「大丈夫だろう。なんとかなるさ」


そのまま目を閉じると、ローガンは体を休めた。長い放浪生活で身につけた技術の一つである。熟睡するわけではなく、浅い睡眠状態になることで体を休めて体力を温存させるのである。

周囲は、静けさに包まれている。ローガンは寝息を立てることもなく闇に同化していた。余程の者でない限り、ローガンに気づくこともできないはずである。


辺りの闇が薄くなるころ、ローガンは目を開ける。


「さすがに無用心過ぎたか?」


《昨晩もお伝えしましたが、無用心過ぎます》


周囲に無数の気配。読み取れるだけでも7つの気配を感じ取っていた。おそらくそれ以上にいるはずだ。


《どうされるのですか?》


「やられたらやり返す。何もなければ何もしない。それだけだ」


おもむろに立ち上がると、剣を腰に取り付け何事もないかのように歩き始める。周囲の気配も、ローガンの動きに合わせ動き始めた。その数、11。何も仕掛けてこないところを考えると斥候部隊のようなものだろう。

一応その気配を気にしつつ、周囲を見渡しながら何か他のものはないかと探っていった。


「お前の記憶にこの大陸の情報はないのか?」


《残念ですが存じておりません。ですが、あの魔の海域というのは、過去にあった結界という能力に近いように思います》


「結界?」


《自身の支配する空間と、それ以外の空間を断絶させるといった能力です。しかし、私の力で断ち切ることができなかったことを考えると、魔力で空間を支配しているわけではないようですが、これ以上は何とも言えません》


「それじゃあ、ある程度時間をかけて周囲を探るしかないようだが、セオ達のことを考えるとあまりのんびりしているわけにもいかないからな」


立ち止まると、その場で屈伸運動をし、体を捻り筋を伸ばす。いきなり動いても問題はないとは思ったが、ローガンもそれなりの年齢である。念のためのストレッチだ。

一呼吸置いて駆け出した。周囲の気配もそれを察知したのか、慌てて動き出す。しかし、ローガンの速度に対応できなかったようで、瞬く間に距離を離した。木々に覆われた地形を意に介することもなく、駆け抜ける。道なき道を抜け、時には木から木へと飛び移るように移動し、ものの数分で森を抜けた。周囲にあった気配を完全に撒いたようだ。


「とりあえず森は抜けたが、何もないな」


《そのようですね》


見渡す限り、それらしいものはない。先ほどまでいた気配の様子から、近くに集落らしきものがあるのではと予想したが、見事に外れたらしい。

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