ノースアプリコットにて (2)
短めです
「キレイな人だなぁ~。」
バテ君は、少し目を細めて微笑を浮かべながら、ヴァン王子とレリア様の後ろ姿を眺めていた。
「一体、何がどうなって…」
ヴァン王子は、席を立つ前に何だか恨めしげに、ちょっと縋るような目付きでこちらを見てきたのは、気のせいだったかしら…
「モリナダ国のイセイラ王女…」
バテ君が、改めて紅茶の香りを堪能しつつ呟く。
「え?」
「まさか…」
まだ緊張が解けていなかったはずのナズナの瞳に好奇心の光が差す。
「そう、王宮殿にいらしてるみたいだよ。あくまでもプライベートという事になっているけど…」
「きっと王妃様がお認めになったお妃様候補ですね…!」
ブッ…ゴホッ…
「リースッ! 大丈夫?!」
「ごめん、大丈夫よ、ナズナ。せっかくの高級な紅茶を溢しちゃった」
(…殿下も私にプロポーズしておきながらヌケヌケとお見合いなんかするなんて…そりゃあ…確かに全然好き合っているとかじゃあないけど…)
「バテ君、レリア様を透視したの?」
「まさか。今朝バスティラの庭園で、モリナダ王女をお見かけしただけだよ。まぁ容姿や性格はともかく…それなりの魔力は持っているようだったけど。」
「へ、へぇ~…」
バテ君の笑顔が挑発的に見えるのは、何故だろう…
「リース、気になる?」
「べっ、別に何でわたしが…バテ君も、もう席を外してよ! ライバルがいたんじゃ卒業試験の打ち合わせが出来ないじゃないっ!」
リースの急な大きな声に、驚いたのはむしろナズナだった。
「…いいよ。でも困ったことがあったらいつでも僕を呼んでね。すぐにリースの元に駆けつけるから…」
リースの耳元で囁いてから、左手の甲に唇を落として去ったバテ君に…これまたナズナの方が、ポッと顔を赤らめている。
「さっ、ナズナ! 作戦会議をはじめましょう! フィリやリジェットにも絶対勝つわよ!!」
「え、ええ」
ポンッ
「あら? リース手紙が…」
魔法で天井から降ってきた手紙には、一番苦手な人物から至急会いたいとだけ記されていた。