グリーミュの、美容サロン通い
「では、来月の25日で最後になります。朝食は抜いて、お化粧も落として…あと、鏡の前で3回笑顔をつくってから、来店して下さい。」
「はい。」
やっとここまできた…。二年間通った美容サロンも、あと、一回で終わる。もっとも、分割払いはあと28回も続くが…
「おい、ブスッ…! 待ちくたびれたぞっ!!」
美容サロンの、優美なドアの前で、不機嫌そうに腕組みする少年は、若干、6歳の侯爵家の子息、ファルレード・サンタ様。
サロン通いで、私の姿形が劇的に美しく変化するのは、ラスト一回だ。最終日は、一日中2人がかりで、魔術師の先生が、高度な魔法を施してくれる。
これまでの二年間は、言わば、この日のための下準備と言ってよかった。
「サンタお坊っちゃま、いらしてたのですか。」
いくら訂正しても、グリーミュと、名前で呼んでもらえないので、今まで、甘んじてスルーし続けていたが、来月には、見てろよこのクソガ…いえ、坊っちゃま…。
「母上への、誕生日プレゼントを選びに来たら、たまたまお前を見かけたから、待っててやっただけだっ!」
「まぁ、それはお優しいことで…それで何をお選びになったのですか?」
「まだだ、付き合え。」
「え…」
今日は、久しぶりの休日なのに…後ろに控えていた執事が、申し訳なさそうに…しかし、懇願するようにこちらを見つめてくる。
「では、少しだけ…午後からは予定があるのでご勘弁下さい。」
数多いる使用人のなかで、何故か自分だけが、この自己中ワガママお坊っちゃまに気に入られてしまった…仕事をする上で、雇い主の家庭と親しくなりすぎると、色々と面倒なので、できる限り事務的に接してきたつもりだったのに…
「ふんっ! 予定だと? 使用人のくせに、生意気なっ。ついて来い、あっちに、流行の髪飾りの店があるんだっ。」
「はいはい…」
いつものように、強引で、小さな手に引かれながら、都会の雑踏に紛れ込む。奥様へのプレゼントが早く決まったら、来る途中で目にした、移動式の遊園地で、少し遊んで差し上げられたらいいなと思った。
もちろん、労働時間外手当ては、キッチリといただくつもりだが…




